水野英子「薔薇夜話」(1987年1月15日初版発行)

 収録作品

・「第1話 ローヌジュレエの庭」
「ケニアから海を渡って、フランスにやって来たグラルボ博士と孫娘のローヌジュレエ。
 グラルボ博士は古い城を買い取り、二人きりで暮らす。
 城に薄荷酒を届けるよう言われた、酒屋の息子、マグドゥルは城を訪れ、驚く。
 城はどこもかしこも薔薇が咲き溢れていた。
 そこで、マグドゥルはローヌジュレエの秘密を知る。
 彼女は薔薇の精で、薔薇以外のものを口にしないのだった。
 そして、何物にも感情を表さない彼女は火の色をしたバラが咲くことだけを待ち続けていた…」

・「第2話 10月のセラフィーヌ」
「村外れに住むセラフィーヌは16歳の娘。
 祖母の埋葬をきっかけに、セラフィーヌは墓掘人夫のロージーと親しくなる。
 祖母と同じように、セラフィーヌは薬草を採り、日々の生計を立てるが、魔女という噂を立てられる。
 セラフィーヌは無垢な心のままに行動するが、彼女の善意を村人達は悪い方にしか解釈せず、セラフィーヌに対する悪意と憎悪を高めていく。
 遂にはロージーまでもが巻き添えをくった時…」

・「第3話 真珠」
「十年に一度、海底に沈む「炎の真珠」が輝く夜。
 その真珠を手に入れることができるのは、欲望に汚されていない清らかな若者のみ。
 若者は真珠を手に入れるため、海に潜る…」

・「第4話 にれ屋敷」
「にれ屋敷で女中として働くユリア。
 彼女は捨て子ではあったが、本来なら、この屋敷の正当な主人、アランと結ばれる身であった。
 しかし、アランは、屋敷の財産を狙うおじ一家の謀略にはまり、殺人の冤罪を着せられる。
 脱獄したアランはユリアをいつか迎えに来ると約束して、その地を去る。
 アランの帰りをただただ待つユリアのもとに、船長として働いていたアランの船が難破したという知らせが届く…」

 トキワ荘出身の大御所、水野英子の怪奇マンガを集めた単行本です。(何故、かように小さな出版社から発行されたのか謎です。)
 怪奇マンガと一部のギャグマンガを除いて、全くと言っていい程、少女マンガに興味がないので、水野英子先生の作品を読むのはこれが初めてでした。
 発表年日も掲載紙もわかりませんが、「にれ屋敷」は明らかに絵柄が古いので、恐らく、様々な年代の幻想的な作品を寄せ集めたものなのでしょう。
 それでも、ベテランだけあって、駄作はありません。
 その中でも、特に「ローヌジュレエの庭」と「10月のセラフィーヌ」は素晴らしい出来です。
 ただ、「10月のセラフィーヌ」はラストのやさぐれているセラフィーヌの姿がちょっぴり悲しかったので、個人的なベストは「ローヌジュレエの庭」です。
 この作品、しみじみと心にしみ入りまして、いいです…本当にいいです。荒唐無稽な話ではありますが、「漫画」以外では絶対に表現できない内容ではないでしょうか?

2015年6月28・29日 ページ作成・執筆

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