高港基資「恐之本・お七」(2015年8月7日初版発行)

・「白い人」
「巧は幼い頃から「白い人」を視ることができた。
 「白い人」は空から垂れ下がるロープを伝って降りてきて、屋根から人の家に入り込む。
 それを視ているのは巧だけで、父親は子供の空想では済まされない何かを感じる。
 日曜日、父親は巧を連れて、町に出て、「白い人」が降りている家を探しだす。
 数日後、父親がその家の前に行くと…」

・「体質」
「真也は幼い頃から「魂が抜けやすい」体質であった。
 ふとしたことで魂が身体から離れ、元気のない子供と思われながら、大学生に成長する。
 ある日、彼はバスに乗っている間、幽体離脱してしまう。
 慌てて身体に戻ろうとするも、先に何者かが身体に入ってしまう。
 そいつは彼の身体を使い、バスの運転手に暴力を振るった後、包丁を購入し、子供を何人も殺害する。
 逮捕された後、そいつは彼の身体から離れ、彼は強制的に自分の身体へと戻る。
 死刑を宣告された彼は拘置所である意外な事実を知り…」

・「轢いた女」
「夜、青年は若い女性を車ではねる。
 車はブロック塀に突っ込み、彼は両足を骨折、女性は下半身を切断されて死亡する。
 彼は入院するが、彼のそばには女性の幽霊が現れるようになる。
 女性は死んだことを理解していないようで、次第に婚約者の名を呼ぶようになる。
 あまりに女性が不憫で、彼は病院を抜け出して、その婚約者のアパートを訪れるのだが…」

・「社に住まう者」
「ある男が新車の試運転に出かけて、狭い住宅地の道に迷い込む。
 Uターンしようとしたところ、板塀に後ろ側をぶつけ、穴を開けてしまう。
 すると、板塀の向こうから老人が現れ、母屋に大工道具を取りに行っている間、板を押さえておくよう言って走り去る。
 彼が壊れた板塀の間から向こうを覗くと、目の前に神社があった。
 違和感を覚えつつ、見つめていると、神社の扉が開き、そこから何かが現れる…」

・「ナビゲーション」
「毎日あちこちの会社を訪れる営業マンの男性。
 方向音痴の彼にとって、携帯電話のナビは実に力強い味方であった。
 ある町で、彼はナビに奇妙な表示が出ていることに気づく。
 それは真っ黒な矢印で、それはどうもこの世のものでない存在を表していた。
 それを避けつつ、どうにか目的の会社に着く。
 商用を済まし、帰社しようとするのだが…」

・「バリ島奇譚」
「旅行会社の代表の津田は部下から連絡を受け、ベルテム・ナギ寺院にやって来る。
 そこの広場では、今回ツアーに参加した水口梓という若い女性が敷石の上をジグザグに歩いていた。
 ガイドによると、彼女はこの寺院に来て、すぐ様子がおかしくなったという。
 津田が彼女に声をかけても、彼の声は聞こえないらしく、また、彼が彼女の肩に手をかけると、ものすごい不快感に襲われ、とても手が出せない。
 しかし、携帯電話でなら、彼女とコミュニケーションが取れることがわかる。
 彼女に電話をすると、彼女は今、「再会の門」を目指して、通路を降り続けているというのだが…。
 彼女が再会を望む相手とは…?」

・「若返り」
「前田和義(55歳)。妻と、他県の大学に通う息子が一人。
 最近、彼の妻が妙に若々しくなっている。
 エステに行き出してからだが、気が付けば、二十代に見える程になっていた。
 彼は妻の通うエステを訪れるが、そこでも原因不明。
 そして、妻は若い男に手を出すようになるのだが…」

・「しかえし」
「池溝徹は自動車事故で重体であったが、どうにか一命をとりとめる。
 意識を取り戻した彼が真っ先に知ろうとしたのは、会社で課長がどうしているかであった。
 彼は子供の頃、いじめられ、自殺を図ったことがあった。
 数日間、生死を彷徨っていた間、いじめっ子達が皆、惨殺される。
 それは彼の生霊の仕業であった。
 そして、彼は今、課長に壮絶なパワハラを受けており…」

 相変わらず、奇想の冴えたスマートな短編が多く、読みごたえがあります。
 個人的には、恐ろしくブラックな「体質」、不思議な味わいの「バリ島奇譚」が特に優れていると思います。

2022年11月4日 ページ作成・執筆

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