高港基資「恐之本・八つ目」(2016年2月5日初版発行)

・「二階建人間」(描き下ろし)
「ある少年が学校の裏の雑木林で『変な女の人』を目撃する。
 その女性は腰から下が異様に長く、木の枝にある巣箱に手を入れ、鳥の雛を生きたまま、食べていた。
 女性は少年に気付くと、スカートの中を見せてやろうと言うのだが…」

・「緋の衣」
「F県にある山間の小さな村。
 そこの旧家には親戚の集まる正月や法事といった際にある習わしがあった。
 人が集まっている間、緋色の着物を蔵から出し、衣桁に掛けておくのである。
 しかし、着物には祖母以外は決して触れてはならなかった。
 ある年の冬の日、その家の少女が5、6歳の頃、親戚の女の子に突き飛ばされ、その着物に尻もちをついてしまう。
 その時、少女は座敷牢に監禁された女性のイメージが脳内に流れ込んでくる。
 それから数年経ち、少女は小学三年生になる。
 彼女は週に一度ぐらい、夜中に祖母が蔵の中に入ることを知っていた。
 冬のある夜、彼女は好奇心に負け、祖母の後、蔵に忍び込むのだが…」

・「美少女」
「山奥にある全寮制男子中学校。
 当然、楽しみなどなかったが、寮棟三階の端っこの部屋だけは違った。
 この部屋からは林の向こうの西洋屋敷が見え、そこには若い娘が住んでいたのである。
 と言っても、遠くなので顔ははっきりと見えず、四人の少年は彼女を「美少女」と呼び、いろいろと想像を膨らませる。
 奇妙なことに、この美少女は生傷が絶えないのか、いつも体のどこかに絆創膏か包帯をしていた。
 ある日、一人の少年が熱を出し、部屋で休むことになる。
 熱に浮かされつつ、彼が窓の外を見ると、美少女が家の中から人の形をした袋を幾つも引きずり出すと、黙々と庭に穴を掘る。
 翌朝、熱が下がった少年が西洋屋敷の庭を見ると、そこには大きな土がお椀型に盛られ、美少女はそこを指さしていた。
 その夜、一人の少年がカメラを持ってきて、熱を出した少年が美少女の写真を撮ってくることとなるのだが…」

・「呪詛の道」
「平凡な夫婦の間に生まれた男児…その体にはタイヤ痕のアザがついていた。
 夫は結婚する前、初老のホームレスを轢き逃げで死なしており、その呪いだと知りつつも、誰にも明かさない。
 しかし、五年後、彼の身の回りで陰湿な嫌がらせが次々と起こる。
 彼は息子にホームレスの霊がとり憑いていることを知るのだが…」

・「或る日の母」
「その男性は母子家庭で育った。
 父親は母親の妊娠を知ると失踪し、母親は懸命に働いて、彼を女手一つで育て上げる。
 だが、男性にとって母親の最も印象的な記憶は、ある日、本を読んでいた彼の背後に立つ包丁を持った母の姿であった。
 その姿から感じたものは『殺意』で、これがずっと彼の心のしこりとなる。
 時は流れ、彼は良き妻、明るい娘に恵まれ、楽しい家庭を持つ。
 しかし、ある時から母親の幽霊が彼の目の前に現れるようになる。
 母は何かを伝えようとしているようだが、彼は特別、何の行動も取らず、無視し続ける。
 だが、ある夜から母親は怖い顔で現れるようになり…。
 母親の伝えたいこととは…?」

・「かげあそび」
「柔道の特待で大学に入った男性。
 彼が公園でトレーニングしていると、楽しそうにかくれんぼをしている家族(両親、兄弟、飼い犬)を目にする。
 だが、そこに子供を捜している老婆が現れると、両親・兄・飼い犬は姿を消し、幼い少年だけが残される。
 少年は老婆の孫で、先週、交通事故で両親と兄、飼い犬を一気に亡くしたばかりであった。
 男性は先ほどの温かい幽霊たちの姿を瞼に浮かべ、家族の霊はこれから先も少年を見守るだろうと思う。
 十五年後、男性は実家のあるF県で警察官になっていた。
 あの大震災による原子力発電所の事故の後、無人となった周囲の地域で空き巣が横行したため、警察では24時間体制で見回りをする。
 ある夜、男性は空き巣を取り押さえるが、空き巣はあの時の少年であった…」

・「アットホーム」
「ある夜、サラリーマンの男性は女性を轢いてしまう。
 彼は女性をバス停のベンチに寝かせて通報し、その場から逃走するが、翌日、女性が亡くなったことを知る。
 その直後から、彼の周囲に女性の幽霊が現れるようになる。
 彼には守るべき家族がおり、自首を拒否すると、幽霊の標的は家族へと向けられ…」

・「試着室」
「あるカジュアル衣料品店。
 そこには試着室が三室あったが、真ん中には常に「使用中止」の札が下げられていた。
 たまにその試着室でカーテンの下に子供の足が見えることがあるが、カーテンの向こうは絶対に見てはいけない。
 だが、ある日、店長は母親が試着室に入ってる間に子供が真ん中の試着室に入る込むのを目にして…」

・「消失」
「ある少年の周囲のものが日を追うごとに消えていく。
 生徒、教師、近所の人たち…彼の記憶にはあるのに気が付くと存在ごとなかったことになっていた。
 彼は消失を止めようと、近所の人たちを写真に撮り、詳細な日記をつけるが、徒労に終わる。
 いつしか、ここに残るのは彼と小学校からの親友だけとなる。
 彼の身に起こっていることとは…?」

・「タカオの部屋」
「青年が引き受けた日給三万円のバイト。
 それは初老の男性が仕事に出かけている間、息子のタカオに話を聞かせるというものであった。
 タカオは事故で体が不自由になったという話だが、実際はボロ布の固まりで、父親は息子を亡くしたショックでどうもイカレているらしい。
 とは言え、バイトとしてはかなり楽で、青年は毎日、タカオにいろいろな話をする。
 ある日、彼は理科室で見た、野生の日本猿の映画を話をする。
 その映画の中にはある母親猿が出ていたのだが…」

・「昔見た幽霊」
「加奈は四歳の頃、トイレの前に男性の幽霊が立っているのを見た記憶がある。
 男友達の修二にこのことを話すと、心理学教室で助手を勤める推(しい)を紹介してくれる。
 推は子供の頃は皆、幽霊を視えており、成長するとともに霊視能力を失うと主張する。
 その説を修二は鼻で笑い、自分に逆行催眠をかけるよう推を挑発する。
 推は自説を証明するため、修二が幽霊を視た時まで記憶を遡らせるのだが…」

 もの悲しくも心温まる「或る日の母」「かげあそび」がずば抜けて素晴らしい!!
 特に、「或る日の母」は何度読んでも、涙がちょちょ切れます。

2026年1月20・21日 ページ作成・執筆

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