高港基資「恐之本・充」(2017年2月6日初版発行)
・「ファイナル・カウント・ダウン」(描き下ろし)
「電車の中でサラリーマンの男性が奇妙なことに気付く。
乗客の額に漢字で数字が書かれているのだ。
駅で乗客が乗り降りし、数字が一から十まで揃う。
そこへ包丁を持った男が乗り込んできて、一から順番に人を刺殺していくのだが…」
・「蛹女」
「ある美容整形外科。
男性医師は太った女性に脂肪を除去する手術をするよう執拗に頼まれる。
彼女は二か月後の同窓会で痩せた姿を皆に見せたいと願うが、一度に百キロも痩せる手術などできるわけがなく、医者は拒否する。
数週間後、女性は彼の目の前で跳び下り自殺をして死亡。
その日から彼の妻は際限なく食べるようになり…」
・「展望台」
「志麻イサ子は会社の友人と共に箱根へ一泊旅行に出かける。
彼女は霊感があり、箱根の汽船に乗る時、ある山の方向から視線を感じる。
富士山の見える展望台に登った際、彼女は観光用双眼鏡をその山に向ける。
すると、首を吊った女性の死体が見えるのだが…」
・「人柱」
「ある若い女性は早くに母親を亡くし、父親と二人暮らしであった。
彼女の父親は無趣味で、何の主張も意見もなく、全く存在感がなかった。
彼女は父親とは正反対の存在である太田道灌のファンで、年に一、二度、太田道灌ゆかりの地を旅行する。
ある年、彼女と父親は太田道灌の居城の一つを訪ねるが、写真に奇怪な女が写っていた。
それからしばらく経った夜、彼女は奇妙な夢を見る。
夢では、彼女の前には四角い穴があり、白装束の女が何度も彼女に「入れ」と言う。
彼女がそれを拒むと、女は穴に跳び下り、その直後、巨大で長い木材がその穴に落とされる。
それと同時に彼女の左の爪先に激痛が走り、骨折はしなかったもののひどく圧迫されていた。
以来、同じような圧迫による青あざが身体のあちこちにできる。
また、穴の夢を毎晩見るが、ある夜、穴の中から潰れた女が出てくるのを目にする。
彼女は命の危険を感じ、お祓いをしてもらうのだが…」
・「写真係」
「A県の海水浴場にある会社の一行が社員旅行に来る。
三郷という青年は一番の下っ端だったため、皆が遊んでいる中、写真係を主任に命じられる。
柿崎という娘が彼を気の毒に思い、写真係を引き受け、彼の体を砂に埋めて隠す。
疲れていた彼はそのまま寝入り、奇妙な夢を見る。
それは、男女が海で心中しようとするも、男は逃げ出し、女一人が沈んでいくというものであった。
目覚めると、彼の頭の横に着物姿の女が背を向けて座っている。
女は彼の体が埋まっている砂に頭を突っ込んでくるが、それも夢であった。
その夜、宴会の後で彼が町で飲もうと、一人、砂浜を歩いていると…」
・「首巻き地蔵」
「新社会人になった娘さん。
彼女は照美という同期の娘と親しくなり、休みの日、隣町に遊びに行く。
きれいな公園なのに人気がなく訝っていると、首にスカーフを巻いたお地蔵さんが目に入る。
照美はそのスカーフを真知子巻き(古い…)にして、娘は慌ててスカーフを元に戻す。
翌日から照美は会社を欠勤し、家を訪ねても会わせてもらえない。
また、娘は鏡を見る度にお地蔵さんのスカーフが上から降りてくることに気付くのだが…」
・「首」
「ある夜、三人の青年が山中の原っぱを訪れる。
ここは首を手首を切断された身元不明の女の死体が見つかった場所で、首と手首はいまだに見つかっていなかった。
肝試しが終わり、帰ろうとした時、首と手首のない女の幽霊が近づいてくる。
彼らは急いで逃げようとして、車が崖から転落し、二人は死亡。
一人は片足を折り、入院するが、彼の病室に女の霊が現れる。
女の霊は失った頭部を捜していて、青年の頭部を手に入れようとするのだが…」
・「恐怖の黒猫アンジー」
高港先生の飼っている黒猫についてのエッセイ・コミック四編。
・「曾々祖父」
「杏花のひいひいおじいちゃんは百歳を過ぎ、寝たきりであった。
杏花が曾々祖父の田舎に行った時、彼は彼女にだけある話をする。
百歳を過ぎた頃から、老人は眠るだけであの世に行けるようになったと言う。
三途の川の向こう側にはまだ行く気がなく、彼は河原で退屈しのぎに石を積む。
ふと目が覚めると、手には河原の石が握られていた。
その石はピクピク動くと、虫になって飛んでいく。
老人は、これが事実かどうか確かめるため、次はわざと少し大きめの石を持ち帰ると…」
名作「恐之本」の最終巻です。
ベストは家族愛を描いた「人柱」でしょう。
また、奇想とブラック・ユーモアが冴える「ファイナル・カウント・ダウン」「首」「曾々祖父」も良作です。
個人的には心霊ものよりも奇想に重点をおいた作品の方がより作者の資質に合っていると思ってますので、この手の作品集を出したら、かなりウケるのではないでしょうか?
2026年3月18日 ページ作成・執筆