唐草ミチル
「マシュリの匣@」(2016年3月14日初版発行)
「マシュリの匣A」(2016年8月10日初版発行)
「マシュリの匣B」(2017年6月10日初版発行)


・「第1話 翠の匣」(単行本@)
「典型的な寂れた田舎町、葉霧町。
 ここは昔から行方不明者が以上に多く、しかも、死体は一体も見つからないという「神隠しの町」であった。
 この町の高校に郡司行斗という若い男性が転勤してくる。
 赴任早々、担当の教師が産休に入ったと理由で、彼は華道部の顧問を教頭に頼まれる。
 そこに平方淑彦という老人が訪ねてくる。
 彼はボランティアで毎週、稽古用の花を寄付してくれていた。
 平方は郡司に葉霧の山の決まった場所にしか咲かないという花をプレゼントする。
 この花は毒々しい赤い色をし、恐ろしく濃厚な香りを放っていた。
 花の香りをかぐと、郡司は気が遠くなり、目覚めると、自分の車の中に座っている。
 だが、そこは学校ではなく、山中であった。
 外に出ると、あたり一面、凄まじい匂いが立ち込めている。
 早く立ち去らねばと思うが、彼の前には奇妙な箱が…」

・「第2話 夢の痕」(単行本@)
「気が付くと、郡司は病院のベッドに寝ていた。
 どうやら彼は道端に倒れていて、病院に担ぎ込まれたらしい。
 彼は今までのことは全て夢だと思おうとするが、ベッドの傍にはあの花が活けてあった…」

・「第3話 雨催いの空」(単行本@)
「郡司は退院するも、自分のしたことがばれないか気がかりで仕方がない。
 でも、ここは「神隠しの町」…もしかすると、何もなかったことにできるかもしれない。
 そんな時、平方から手紙が届く…」

・「第4話 朱の誘い」(単行本@)
「手紙には
『おまえのすべてみている
 山にもどれ
 あの子がおきる 真朱莉が歩きだすまえに』
 と書かれていた。
 意味はわからないが、他の誰かが現場を見ていたらしく、手紙に従わなければ終わらないと郡司は悟る。
 まず、郡司はこの町について情報収集を始める。
 理科の教師の犬飼は地元育ちで、この土地は花に呪われていると話す。
 ここには『忌み花を起こすなかれ』という言葉があり、その花に近づくことはタブーであった。
 その花にまつわる言い伝えとは…?」

・「第5話 叫喚の森」(単行本@)
「五人の若い男女(テツヤ、サチ、ミホ、洋介、マイ、ケン)が葉霧町の山にやって来る。
 彼らは山中で酒を喰らって騒ぐが、途中、テツヤはミホを探しに行く。
 ミホは甘い匂いを放つ花の写真をスマホで撮ろうとしているが、どうも様子がおかしい。
 テツヤは彼女を放っておいて、皆のところに戻るのだが…」

・「第6話 血の記憶」(単行本@)
「郡司はことの始まりである山中を再訪する。
 彼は嫌な予感を感じながらも、あの箱を開ける。
 箱の中は空っぽであったが、彼は全てを思い出す。
 彼さえだまっていれば、自分に疑惑が向くようなことはなく、彼は安堵する。
 その時、彼の背後に何者かの気配がする。
 振り向くと、そこに半裸の少女がいた…」

・「第7話 死の花蜜」(単行本A)
「少女の名は『マシュリ』。
 彼女は郡司の名前を知っており、ゆっくりと彼に近寄って来る。
 彼は逃げようと思うが、あの匂いにからめとられて身動きができない。
 マシュリは彼を押し倒し、口から吐いた血を彼に飲ませる。
 これは血ではなく蜜で、これを飲んだ郡司は…」

・「第8話 純白の羂(わな)」(単行本A)
「郡司は実家に顔を見せる。
 実家には土地の有力者でワンマンな父親と優秀な兄がおり、郡司はほとんど寄り付かなかった。
 彼は家族にマシュリを真緒子の名前で紹介する。
 その夜、郡司と真緒子は実家に泊まることとなるが…。
 その頃、葉霧町での連続失踪事件に宇佐美潤というフリージャーナリストが興味を抱く。
 新聞社では相手にされず、彼女はベテラン記者の北爪吾郎に協力を仰ぐ。
 北爪は見かけは不良中年だが、昔、葉霧町での連続失踪事件を調べていた。
 彼は彼女にある写真を見せる。
 それには髪の毛がはみ出た、奇妙な箱が写っていた。
 北爪によると「箱の中の眠り姫」がカギらしい…」

・「第9話 入らずの庭」(単行本A)
「宇佐美と北爪は葉霧町へ取材に訪れる。
 この町で失踪事件が始まったのは葉霧村が町へと名を変えた三十年前からで、北爪は住人は何かを隠していると考えていた。
 ある食堂で二人は、平方という資産家の老人が失踪したことを知る。
 その後、北爪が酔っぱらいのふりをして校門で暴れている間、宇佐美は高校に忍び込むのだが…」

・「第10話 真朱莉@」(単行本A)
「新たな「栽培者」となった郡司に遺された手記。
 これには葉霧村で起きたこととマシュリが生まれ出た経緯が記されていた。
 ことの発端は昭和54年(1979年)。
 平方淑夫は名家の息子であったが、幼い頃から病弱で、出来損ない扱いされていた。
 ある日、彼は喀血し、土蔵に閉じ込められる。
 そこに鈴の音と共に、顔を布で覆った男女が現れる。
 中心となるのは真緒子という美しい娘で、彼の病気を治しに来たのであった。
 「真朱莉さま」の血を引く真緒子の「お治し」の方法とは…?」

・「第11話 真朱莉A」(単行本A)
「真緒子の身体から作られた薬で平方は健康を得る。
 だが、彼の病気は重く、しばらくは真緒子が必要で、屋敷に滞在してもらう。
 五年後、彼は議員の父親の片腕となっていた。
 彼は真緒子に惚れるが、彼女は彼の幼なじみの雄介を慕っていた。
 その冬、村で突然、血を吐いて死ぬ病気が流行し…」

・「souvenir 書き下ろし番外編」(単行本A)
「葉霧村での取材中に失踪した記者。
 北爪はその記者からカメラを託されていた…」

・「第12話 真朱莉B」(単行本B)
「雪の降る日、雄介と真緒子は村を脱出しようとする。
 しかし、平方の父親をはじめとした村人たちが二人を追い、村を連れ戻そうとする。
 村人たちは村が見捨てられることに激高し、二人を殺害。
 それによりこの村は真朱莉の花に呪われる。
 それから五年後、議員となった平方淑夫はある山中を訪れる。
 そこには真緒子の入っていた箱が隠されていた…」

・「第13話 狂惑の朱」(単行本B)
「宇佐美は業者に変装して、高校に潜入する。
 彼女の目的は温室であった。
 彼女は郡司と再会し、温室の中を見せてもらうのだが…」

・「第14話 サラセニア」(単行本B)
「郡司は実家で真緒子と二人で暮らし、彼女を自分の高校に通わせる。
 その頃、意識不明だった宇佐美は実家で目を覚ます。
 北爪は彼女にここに隠れているよう警告し、自分は「箱の中の眠り姫」に会いに出かける…」

・「第15話 瓦解」(単行本B)
「郡司の通う高校では生徒が次々と失踪する。
 何が起こっているのであろうか…?」

・「第16話 鬼遊び」(単行本B)
「高校で北爪は血まみれの郡司と会う。
 北爪はスタンガンで武装し、郡司を警察に連れて行こうとするが、郡司の思わぬ反撃にあう。
 その時、宇佐美が現れる。
 彼女は郡司の家にいた真緒子を人質にするのだが…」

・「第17話 朱華の女」(単行本B)
「顔を布で覆った和服の女性たちが家々にお札を貼りながら、家から出ないよう警告して歩く。
 その最中、彼女たちは放心状態の宇佐美を発見し、当主の家に連れ帰る。
 彼らは『匣守りの一族』で、真朱莉の血をひく女性を見守ることが役目であった。
 当主は今の真緒子は真朱莉のなりそこないと言い、この禍を終わらせるため、宇佐美に力を貸すよう頼む…」

・「最終話 渇いた夢」(単行本B)
「山の中で郡司と宇佐美は対峙する。
 彼のそばには血に根を下ろした真緒子の姿があった。
 そこに「匣守りの一族」が現れ、真緒子に火を放つのだが…。
 宇佐美はこの惨劇に終止符を打つことができるのであろうか…?」

 「WEBコミックガンマ」に連載された、「人喰い花」をテーマにした作品です。
 個人的には、雰囲気は魅力的で、発想も良いと思います。
 ただし、ストーリーは説明不足な点が多く、理解しづらいです。
(例えば、「真朱莉」の説明が簡単すぎること。
 あの箱はどこから出て、また、存在理由は?それと、第12話のラスト、何故あの箱が山中にあるのか?
 第12話で平方淑夫が何故、生き残ったのか?
 「匣守りの一族」が三十年も事態を放置した理由は?
 真朱莉に郡司が選ばれた理由は?
 人の頭が爆発したりしているけど、真朱莉って超能力を持っているのか?
 町で人がどんどん行方不明になっているのに、どうして世間で大騒ぎにならないのか?(田舎町とは言え、一応、電車も通っている所だよ。)
 葉霧村で流行した病気って何だったのか?
 宇佐美潤の特異体質の理由は?…etc)
 また、キャラクターや舞台の設定が練り込み不足な点も、ストーリーに説得力を欠くことになっております。
 せめて、主人公の家庭環境や経歴、職場の同僚や生徒たちの描写はもっと盛り込んだ方が良かったのではないでしょうか?(三枝依子の出番が少なくて悲しかった…。)
 テーマが良かっただけに惜しい作品です。

2024年12月16〜18日 ページ作成・執筆

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