高階良子「死神の歌がきこえる」(1978年3月20日第4版発行)
収録作品
・「死神の歌がきこえる」(1973年「なかよし」9・10月号)
「千葉県屏風ヶ浦を臨む別荘地。
ボーイフレンドの正人の別荘に、さとみは友人達と滞在していた。
外出先で急な雷雨に襲われた、さとみと正人は、雷で倒れた木の下敷きになった青年を発見する。
正人が助けを求めに行っている間、さとみは彼に付き添うが、彼が奏でる草笛にいつの間にか眠り込んでしまう。
その日の夕方、さとみのバースディ・パーティーの最中、その青年が正人の別荘を訪ねてくる。
彼は、彼はウィーンで天才音楽家として騒がれた後、失踪した小島英幸であった。
彼の目当ては、さとみ、ただ一人で、彼女にしつこくつきまとう。
彼の振る舞いは皆の頻出を買うが、彼は、さとみの友人達を自分の家でのコンサートに招待すると、さとみに言付けをして去る。
その直後、さとみの前に、エバ=ブラウンという娘が現れ、彼に近づくと、恐ろしいことが起こると忠告する。
翌日、さとみと正人以外は英幸のコンサートに出かける。
その夜、友人達は皆、原因不明の自殺を図る。
騒ぎの最中、英幸から死神から助けてという電話を受け、さとみは彼の家に駆けつけるのだが…。
英幸の周囲にうごめく「死神」の正体とは…?」
・「あの人を消せ!」
「加奈の表の顔は、一流のファッション・デザイナー。
だが、裏の顔は、国連特務機関の凄腕諜報員であった。
彼女の新しい使命は、日本に潜入するベン=カーターをこの世から抹殺すること。
その理由は知らされず、加奈はカーターに近づくが、相手の方が一枚上手のご様子。
そのうちに、カーターが様々な国から水爆を盗み出したことが明らかになる。
しかし、ベトナムの戦災孤児を養子にしていたり、その態度や物腰から悪人とも思えない。
加奈は知らず知らずのうちにカーターに惹かれていくのだが…」
・「その愛はだれに」
「九歳の時、両親を亡くし、北海道に住む遠い親戚の高津牧場に身を寄せた信雄。
彼は、大牧場主の娘、娘の美紀に優しく接してもらった瞬間から、彼女への思慕を深めていく。
美紀は美人であるものの、わがままで、気が強く、活発でな少女。
彼女と正反対の性格の信雄は五年もの間、美紀を遠くから見守り続ける。
美紀が17歳になった時、彼女が心から慕う相手が現れる。
相手は、アイヌを研究する東大学生、小池明彦。
だが、信雄は彼がロクデナシであることを知り、美紀に別れるよう説得しようとする。
しかし、強情な美紀は聞く耳を持たず、信雄は最終手段として、明彦をナイフで脅して、美紀のもとを去らせる。
悲嘆に暮れた美紀は、信雄にアイヌの占い師の老婆のもとに案内してくれるよう頼む…」
怪奇マンガ、コメディータッチのスパイ・アクション、シリアスな悲恋ものが一編ずつ収録された単行本です。
目玉はやはり、「死神の歌がきこえる」でしょう。
人を死に駆り立てる音楽に憑りつかれた(美貌の)音楽家のストーリーで、「天才/狂人」をテーマにした作品の佳作と私は思います。
ただ、ラストがあまりにも性急かつ唐突で、尻すぼまりになってしまったところが残念ですが…。
ちなみに、草(カヤ?)で首を切って、人が死ぬマンガはこれしか知りません。(あんなもんで頸動脈、切れるのか?)
・備考
カバー痛み。
2017年8月2・3日 ページ作成・執筆
2021年2月16日 加筆訂正