小池ノクト
「6000@」(2011年3月24日第1刷・9月24日第2刷発行)
「6000A」(2011年9月24日第1刷発行)
「6000B」(2012年3月24日第1刷発行)
「6000C」(2012年8月24日第1刷発行)



 フィリピン海に建造された居住型深海施設「コフディース」。
 それは水深6000メートルの海底に位置する、7つの居住型耐圧殻と2つの柱型耐圧殻で構成された巨大な施設であった。
 201X年、コフディースで館内の全員が死亡する事故が起きる。
 大規模な火災があったという話であるが、領海問題が絡み、死体の返還さえ行われず、事件の真相は闇に包まれていた。
 三年後、中国の上海巨星造船公司により施設を再稼働させるための調査が始まる…。

・「第1話 6000メートル」(単行本@/「月刊コミックバーズ」2010年11月号)
 門倉健吾は江古田工機の技術畑出身の男性。
 会社が上海巨星に買収され、再就職する当てもなく、会社に留まるが、初仕事はコフディースでの準備状況を調査報告することであった。
 上司の温強国は非常にシビアかつドライで、また、仕事場が6000メートルの深海と聞き、健吾は途方に暮れる。
 彼の頼みの綱は同じ会社の先輩でトップ営業マンの檀崎であった。
 だが、入構を直前に、檀崎が大けがをして運ばれるのを目にする…」

・「第2話 みなぞこの狂気」(単行本@/「月刊コミックバーズ」2010年12月号)
「不安を抱えたまま、健吾はエレベーターで6000メートル下のコフディースへと降下する。
 施設内は点検や修理の真っ最中であった。
 施設エンジニアの日下部美羽は温に、機械的には正常なのに数多くのシステムの異常があることを報告する。
 更に、上海巨星は施設のデータの多くを秘密にしているらしく…」

・「第3話 再会」(単行本@/「月刊コミックバーズ」2011年1月号)
「様々なトラブルに加え、美羽は奇怪な体験をする。
 彼女は、同僚の上村、プラグラマーでハーフの夏望(シア・ノゾミ)、上司でコフディースの建造責任者の鮫島保と共に上海巨星が隠しがっている秘密を探っていた。
 中でも鍵を握るのは三年前の事故のようで…」

・「第4話 出現」(単行本@/「月刊コミックバーズ」2011年2月号)
「健吾は会議室に向かう途中、女性の悲鳴を聞く。
 慌てて駆けつけると、会議室の窓の前にメイリンという女性が立ちつくし、涙を流していた。
 彼女は卒倒し、健吾は彼女を介抱するが、彼女が窓の外で目にしたものとは…?
 そして、施設内ではシステムの総チェックが行われることとなる。
 各層ごと二分、トータルで十分で終わる作業であったが、突如、全館、電源が落ち…」

・「第5話 出現ー2」(単行本@/「月刊コミックバーズ」2011年3月号)
「真っ暗闇の施設内、自室から出た健吾は白い人影のようなものを目にする。
 更に、救助隊が何故か現れるが、救助隊は何者かに襲われる。
 健吾は危険を察し、その場から逃げようとするが…」

・「第6話 生存者」(単行本A/「月刊コミックバーズ」2011年4月号)
「食料貯蔵庫で三年前の事故の生存者が発見される。
 彼は左近寺清彦という海洋生物学者であった。
 白根という医者が診たところでは、身体はかなり衰えているが、精神は思ったよりも安定していた。
 温強国は彼の存在を秘密にすることを提案するが、その思惑とは…?」

・「第7話 神」(単行本A/「月刊コミックバーズ」2011年5月号)
「健吾は左近寺清彦から詳しい話を聞こうと医務室に忍び込む。
 美羽と夏望も同じ考えで、健吾は彼らとばったり出くわす。
 とりあえず、三人は左近寺から三年前の事故について話を聞く。
 火事があったのは本当だが、問題は施設全体がロックされたことであった。
 復旧はされず、彼はCCR(センター・コントロール・ルーム)に閉じ込められる。
 一週間かけてそこから脱出し、生存者を捜すが、誰にも出会わない。
 救助も来ないまま、一か月以上経ったある日、彼はCCRのモニターを一部、復旧することに成功する。
 そのモニターで目にしたものとは…?
 会議室で何が起こったのであろうか…?」

・「第8話 さまようもの」(単行本A/「月刊コミックバーズ」2011年6月号)
「左近寺の話は健吾には頷けるものがあった。
 しかし、美羽や夏望は左近寺の話を信じず、健吾も嘘つき呼ばわりされる。
 美羽は左近寺を問いただそうとするも、左近寺は「逃げろ」と警告するだけであった。
 だが、人身事故があったため、エレベーターシステムは閉鎖されており、健吾は焦燥と絶望を深めていく。
 一方、夜、館内では何ものかが徘徊し始めていた…」

・「第9話 憑依」(単行本A/「月刊コミックバーズ」2011年7月号)
「エレベーターシステムの閉鎖により、資材や医薬品の補充ができず、いろいろと支障をきたすようになる。
 また、作業員たちは次々と強い不安感からの身体の不調を訴え、それによる事故も発生。
 温強国はもはや限界だと考え、復旧作業や研究準備は全て中止し、五日で施設の総点検を行った後、地上へ戻ることを決定する。
 彼は自分が全ての責任を取り、総点検作業がスムーズに行くよう美羽に総指揮権を譲る…」

・「第10話 憑依ー2」(単行本A/「月刊コミックバーズ」2011年8月号)
「帰還する前日、館内は点検作業で大わらわであった。
 健吾は温強国を捜しているうちに、ある作業員に声をかけられる。
 第二サブスフィア(メインスフィアの横についている研究設備系のスフィア)のスパコンを見るよう頼まれる。
 とりあえず、作業員についてサブスフィアに向かうが…。
 その頃、温強国は医務室にいた。
 その目的は…?」

・「第11話 死者たち」(単行本A/「月刊コミックバーズ」2011年9月号)
「潜航艇ドックで健吾と作業員は襲われ、作業員は重傷を負う。
 更に、その場にメイリンが現れるが、彼女はあらぬことを口走り、どうも普段の彼女と違う。
 混乱の中、ドックの隔壁が閉鎖され、海水が注水され始める。
 健吾はメイリンをつれ、ハシゴで上に逃げるのだが…」

・「第12話 圧壊」(単行本B/「月刊コミックバーズ」2011年11月号)
「メインスフィアを守るため、健吾たちが閉じ込められた第二サブスフィアは切り離される。
 温強国が不在のため、実行の指示を出したのは美羽であった。
 切り離しは成功するものの、館内はでは動揺が広がりパニックが起こる。
 温強国は詰め寄る人々を押しのけ、海上と連絡を取ろうとするのだが…」

・「第13話 信号」(単行本B/「月刊コミックバーズ」2011年12月号)
「海上とのホットラインが切断され、エンジニアたちは途方に暮れる。
 その時、施設外からSOS信号をキャッチする。
 それは第二サブスフィアにあった潜航艇からのものであった。
 生存者は誰なのであろうか…?」

・「第14話 太陽の生け贄」(単行本B/「月刊コミックバーズ」2012年1月号)
「ただでさえ混乱しているのに、温強国が一人で帰還用エレベーターに乗ったことで混乱に更に拍車がかかる。
 その頃、健吾はヘンリー・ハーシュバックの部屋を目指していた。
 ヘンリー・ハーシュバックは天才海洋学者であったが、非常に傲慢で、最後の方は錯乱状態にあった。
 施設カウンセラーの甘粕さくらが止めるのも聞かず、健吾はハーシュバックの部屋に入る。
 そこで目にしたものとは…?
 ここに三年前の事件の謎を解く鍵があるるようなのだが…」

・「第15話 煙を吐く黒い鏡」(単行本B/「月刊コミックバーズ」2012年2月号)
「ハーシュバックの部屋で健吾とさくらは想像を絶する体験をする。
 さくらは幻覚かトリックだと思い込もうとするが、その時、部屋の真ん中にできた水たまりから黒い鏡が現れる。
 その鏡の中に潜むものは…?
 一方、施設内では大きな衝撃の後、CCR以外は停電となる。
 美羽たちが衝撃の原因を調べると、施設外に大きな影がソナーに映っていた。
 それは施設の真上にあるが、その正体を知った時…」

・「第16話 地獄」(単行本B/「月刊コミックバーズ」2012年3月号)
「健吾とさくらは気づくと、見知らぬ通路に倒れていた。
 二人はとりあえず、通路を進むが、奇妙なことにどこまでも伸びている。
 歩くうちに、健吾は三年前の真相をおぼろげながら掴み始める。
 その頃、CCRではサブスフィアに取り残された作業員たちを救出するため、鮫島の指揮の下、動き始める。
 ところが、CCRを出たところで、彼らは異様な光景を目にすることとなる…」

・「第17話 再び…」(単行本C/「月刊コミックバーズ」2012年4月号)
「健吾は死霊の群れに追われ、間一髪、CCRへと逃げ込む。
 隔壁の外には死霊がうようよしており、彼は施設を放棄して海上へと逃げることを主張する。
 だが、それに対する返答はあまりに絶望的なものであった。
 一方、健吾と共にCCRに逃げたはずの甘粕さくらはいつの間にかもとの通路に戻っていた。
 彼女はここが元のコフディースではないことを悟る。
 そして、彼女のもとに…」

・「第18話 侵入」(単行本C/「月刊コミックバーズ」2012年5月号)
「彼らの状況は夏望の言う所の「詰み」であった。
 美羽は放心状態となり、来る当てのない救援をCCRで待つ他ない。
 だが、無事と思われたCCRにも黒い鏡に映っていた魔神が現れ、電気系統を破壊し、暗闇に包まれたCCRに死霊が入り込む。
 健吾たちはライトを付けて応戦するが、絶体絶命と思われたその時…」

・「第19話 二つのサバイバル」(単行本C/「月刊コミックバーズ」2012年6月号)
「魔神は去ったものの、物的人的損害は多大なものであった。
 それでも、生き残るためにはCCRを中心として、体制を立て直す必要がある。
 まずは、食料、バッテリー、毛布等の必要な物資を確保するため、健吾たちは施設内を回る。
 その時、会議室で目にしたものとは…?」

・「第20話 光明」(単行本C/「月刊コミックバーズ」2012年7月号)
「死霊だけでなく、発狂した人々もいるらしいことがわかり、生存者たちはCCRで迫りくる死を待つしかない。
 しかし、美羽はある突破口を見出す。
 そのためには連絡層にまで降りて行かねばならず、非常に危険な賭けであった。
 でも、やるしかない…」

・「第21話 HADAL-1」(単行本C/「月刊コミックバーズ」2012年8月号)
「賭けはうまく行くように思えたが、あとちょっとのところでトラブルが起こる。
 しかも、これは施設外で起こっており、中からではどうにもできない。
 潜航艇は使えず、美羽は超深海用潜水服「HADAL-1」を使おうとする。
 これはテスト段階で実用に耐えうるかどうかは疑問があった。
 行こうとする美羽を止め、替わりに志願したのは…?」

・「最終話 太陽」(単行本C/「月刊コミックバーズ」2012年9月号)
「一人の尊い犠牲のお陰で、賭けは成功する。
 だが、海上に帰還できると喜んだのも束の間、死霊の群れが次々と現れる。
 健吾たちは再び太陽を見ることができるのであろうか…?」

 1980年代末に「リバイアサン」「ザ・デプス」といった深海モンスター・ホラーがありました。
 「6000」も深海を舞台にしておりますが、モンスターものではなく、ラヴクラフトを意識した作品のようです。(注1)
 ということで、深海の施設で古代の邪神が復活するまでは良しとしましょう。
 でも、何故に「※※※※文明(ネタバレ防止のため伏字)」の神なの?(太陽神にこだわったためですか?)
 あまりにも一般読者には馴染みがなさすぎて、ストーリーをかなり理解しづらくしております。
 ただ、それ以外は非常に緊迫感のあるサバイバル・ホラーで、小池ノクト先生の実力を十分に堪能できます。
 ちょっと首を捻る部分もありますが、佳作と評価して差し支えないと私は思います。

・注1
 サブタイトルに「THE DEEP SEA OF MADNESS」とありますが、これはラヴクラフト「狂気の山脈にて(At the mountains of madness)」(注2)から拝借したのでしょうか?

・注2
 恥ずかしながら、この歳になるまで未読だったので、只今、頑張って読んでます。
 つまらなくはないけど、文章がキツくて、なかなか先に進みません…。
 特に、標本について無線で報告する下りはワケがわからなくて閉口しました。
 こういう時に役に立ったのが「暗黒の邪神世界 クトゥルー神話大全」(学研ムック/1990年8月1日発行)に掲載された)掲載の矢野健太郎先生のイラスト。
 モンスターの煩雑な説明もイラストで見たら一発なので、大助かりです。

2025年2月24〜28日 ページ作成・執筆

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