はざまもり「二つの顔の悪魔」(1992年8月15日第1刷発行)
収録作品
・「二つの顔の悪魔」(1992年「セリエミステリー」4月号掲載)
「大学四年生の寺岡礼奈は、名取のおじに葬式に出るため、イタリアから日本に帰国する。
名取のおじは、亡くなった父親と親しかったが、強盗に刺殺されたという。
また、礼奈は、小さい頃、一緒に遊んだ潤一と会うことも楽しみにしていた。
潤一は、彼女と同い年で、ひょうきんでお人好しな男の子であった。
名取家を訪れると、潤一が彼女を迎える。
葬式は昨日終わり、今日は社葬で、家には彼以外誰もいないと言う。
八年ぶりに会う潤一は、昔とは全く違い、冷酷かつ下劣な青年で、礼奈は彼に暴行を受ける。
彼女がホテルで嘆いていると、その潤一から電話がかかってくる。
電話の彼は、今日は家にはおらず、社葬に出ていたと訴え、ホテルの彼女の部屋まで訪ねて来るが、礼奈に追い出される。
翌日、礼奈が空港に向かおうとすると、潤一が現れ、彼女に心から詫びる。
彼は自分は「二重人格」で、今まではうまくコントロールして来たのに、父親の死等のショックで、発症したらしいと説明する。
そう言われても、彼女は彼を許す気にはなれず、飛行機に乗る前に、名取のおじの墓にお参りをする。
そこで、潤一のクラスメートだった仁科初美と出会う。
彼女に潤一のことを聞くが、、おかしな様子はなかったらしい。
潤一と仲違いしたまま、別れるのはいやで、礼奈は、潤一の「二重人格」について調べ始める。
調べて行くと、潤一には、双子の弟がいて、十五年ぐらい前の火事の際に、母親と共に焼け死んだというのだが…」
・「13年めの天使」(1992年「セリエミステリー」1月号掲載)
「医大病院で小児科医として働く尾上良一(33歳)。
彼は、13年前に別れた恋人、星川真砂子のことがいまだに忘れられずにいた。
当時、彼は落ちこぼれの医大学生で、彼女は十歳年上の研究者。
彼女は、彼よりも癌の研究の道を選択するが、その癌により急逝する。
ある日、彼の前に、桜田なるかという少女が現れる。
彼女は、星川真砂子の生まれ変わりを名乗り、彼女に関するあらゆることを知っていた。
そして、前世で研究していた癌の特効薬の研究を続けることを望んでいた。
そのために、大学の付属研究所にある金庫の中の研究ノートが必要で、良一に盗み出すことに協力してほしいと頼む。
半信半疑だったものの、孤独な少女の姿に過去の恋人の面影を重ね合わせて、彼は協力を決意する。
夜、良一となるかは付属研究所に、別の医師のカードを使って、侵入するのだが…」
・「鬼の棲む家」(1992年「セリエミステリー」6月号掲載)
「人形作家の島田和久は、鎌倉の祖父が亡くなったため、幼馴染の原田みゆきと共に鎌倉を訪れる。
彼の母親は、父親と駆け落ちしたために、祖父から縁を切られていた。(彼の両親は既に他界。)
母親の実家、矢立家は旧家で、その遺産は莫大なものであった。
そして、祖父の遺言によると、矢立家の家督を継ぐには、長女の娘、若菜と結婚しなければならなかった。
若菜は日本風の大人しいお嬢さまで、どうも和久に気があるらしい。
候補者は、島田和久を加えて三人。
残りの二人は、祖父の妹の孫、桜井澄夫(遊び人風)と野崎明夫(ガサツな野郎)で、二人は後継ぎの座を狙っていた。
和久は財産に興味がなかったが、旧家での夜、ふと幼い日の記憶を思い出す。
それは、夜、裏庭にある土蔵の二階に灯りがついているので、不思議に思い、木の上から覗いたら、赤い振袖を着た五歳ぐらいの女の子が背を向けて座っていた…というもので、更に、その少女には角があったように思えて仕方がない。
そして、矢立家で起きる殺人事件…。
この家に潜む「鬼」の正体は…?」
個人的には、「13年めの天使」の出来が突出しているように思います。
「転生もの」かと思いきや、鮮やかにこちらの予想を裏切る展開の上手さに舌を巻きました。
・備考
カバーに痛み(袖がクシャクシャ)。シミ多し。
2021年9月14日 ページ作成・執筆