御茶漬海苔「童鬼A」(1998年9月7日発行)
「童鬼」は絶望した少女のもとを訪れる。
彼との取引が少女達にもたらすのは、救いなのか、それとも、破滅なのか…。
・「呪いのトイレ」
「ある学校の地下にある女子トイレ。
一番奥の個室は十年前、一年生女子が毎日そこでいじめられ、首つり自殺をしていた。
以来、トイレの壁には女子生徒の顔が浮き出て、白ペンキでいくら塗りなおしても、浮かび出てくる。
その噂を聞き、絵理花と良子がその女子トイレを訪れる。
絵理花は強気な性格で、個室に入り、自殺した女子生徒に向かって悪態をつくが、ドアが急に閉まり、彼女は首から上を失う。
と言っても、死ぬわけでなく、彼女が嘆いていると、童鬼が現れる。
童鬼は片目と引き換えに、彼女の首をもとに戻すと言うのだが…」
・「おばあちゃん」
「花実は人見知りな少女。
ある日、彼女は母親に連れられ、母方の祖母のもとを訪れる。
祖母は「花の村」という山奥にある村に住んでいた。
祖母は花実と会い、涙を流して喜ぶ。
彼女が孫と会うのは、十年前に花実の姉、桃子と会った時以来で、桃子はその後、事故で亡くなっていた。
祖母と母親が話している間、花実は親戚の子供三人と外に出かける。
三人が連れて行ったのは、たくさんの花が一面に咲き誇る野原であった。
野原の中に小さな古墳のようなものがあり、その地下の奥に扉がある。
扉の奥には「村の守り神」と呼ばれる「大きくて美しい花」があった。
花実が部屋に入ると、扉が閉められ、閉じ込められてしまう。
怯える彼女の前に、童鬼が現れ、彼女が「いけにえ」にされたと話す。
村の人々は十年に一度、花にいけにえを捧げないと、村が滅びると信じていた。
そして、彼女はいけにえにするため、育てられたというのだが…」
・「純愛の薬」
「月下中学校。
宮本という女子生徒は井原先輩に夢中。
しかし、その想いは一方通行で、偏執狂の域に達していた。
当然、井原先輩には相手にされず、嘆いていると、童鬼が彼女の部屋に現れる。
童鬼は片目と引き換えに、「純愛の薬」を使うよう勧める。
これをかけると、彼は一生彼女のものになるというのだが…」
・「バレンタイン」
「静香は、五歳年上の姉の花美を異常なほど、慕っていた。
花美が中学校に進学し、静香は一緒にいられなくなったと嘆く。
バレンタインデー、花美の帰宅が遅いので、静香が様子を見に行くと、花美が男子生徒と一緒にいて、チョコレートを渡していた。
ショックを受けた静香が木の根もとで泣いていると、童鬼が彼女に話しかける。
童鬼は片目と引き換えに「いじめるやつがいたら俺がやっつけてやる」と言い、その男子生徒を惨殺する。
四年後、花美は高校二年生となり、静香は中学校へ入学する。
ある日、花美は清水先輩から映画に誘われるのだが…」
・「氷の微笑」
「雨の降る夜。
険しい山道を走る一台に車に潮崎、百合子、桜子の三人が乗っていた。
助手席の桜子は後部座席の百合子に、大学生の彼氏がいることをしきりに自慢する。
浮かれ話をしていると、向こうから大型トラックが現れる。
潮崎はハンドルを切り損ね、崖から転落。
潮崎、桜子は奇跡的に無事であったが、百合子は下半身不随となる。
潮崎は彼女の見舞いに訪れるが、いつも桜子と一緒であった。
嫉妬に狂う百合子の前に、童鬼が現れる。
彼女は童鬼に右目をあげ、潮崎と桜子の様子を見せてもらうと…」
・「ハロウィンの夜」
「10月31日、ハロウィン。
夕食の後、ある家族(両親と娘)が惨殺される。
童鬼は三人の首を地下室に持っていく。
そこにいる少女が家族を殺した理由とは…?」
・「ストーカー」
「聖女学院の池田絵理花は美しい少女。
山本先輩との仲もうまくいき、幸せであったが、彼女はストーカーに悩まされるようになる。
しかし、実害がないため、警察は取り合ってくれない。
ある日、彼女に宅配便が届く。
その中身は山本先輩の生首であった。
気絶した彼女の前にストーカーが現れるが…」
・「変身液」
「星座中学校。
水口琵琶子はブスな少女。
サッカー部の岸本先輩に憧れるも、とても自分に釣り合うとは思えない。
自分の部屋で嘆いていると、童鬼が現れる。
童鬼は「変身液」を顔に注射すれば美人になると言い、条件として、彼女が美人になったら母親の右目をもらうと付け加える。
琵琶子は条件を飲んで、「変身液」を手に入れるのだが…」
・「クリスマスプレゼント」
「12月24日、クリスマス・イブ。
聖堂学園の森村雪代は、友人の洋子に勧められ、放課後、青山先輩を映画に誘う。
だが、彼は家族とクリスマスパーティをするとあっさり断られてしまう。
晩、雪代は町中で青山先輩と洋子がデートをしているのを目の当たりにする。
帰宅後、自分の部屋で悔し涙を流していると、童鬼が現れる。
童鬼は、片目と引き換えに、青山先輩をここに連れてくると言うのだが…」
「童鬼」は御茶漬海苔先生の代表作の一つではありますが、オチのスッキリしない話が多いように思います。
この単行本ではスラップスティックな感のある「呪いのトイレ」が一番面白いのではないでしょうか?
あと、後書きは、スコラ社のSLC・LCミステリーシリーズ版「童鬼@」からの再録です。
2023年4月4日・6月9日 ページ作成・執筆