鈴原研一郎「ようこそ!夢の世界へ」(1975年10月1日発行)
「ドリーム・ワールド。
小笠原諸島の一つにつくられた、科学技術の粋を尽くした、ファンタジーと夢の世界。
戦場の世界、アメリカ西部の世界、中世ヨーロッパの世界の三つに分かれ、そこではロボットが人間の相手役を務めていた。
そのロボットを操るのが、地下の巨大なコンピューターセンターであり、また、観光客に合わせて、無数のドラマを演出していた。
城山めぐみは、コンピューターセンターの主任をしているおじから、ドリームワールドに招待される。
彼女は、中世ヨーロッパの世界を選び、その夜、刺激的な体験を求めて、ホテルを脱け出す。
夜の街をさまよっていると、城から忍び出る青年と出会い、人質としてさらわれる。
彼はあるセーヌ・ルパンと名乗るが、その実は、花嫁選びのパーティから逃げ出した、フランツ皇太子であった。
皇太子を追う秘密警察と、施設内の保安係の手から逃れるうちに、めぐみとフランツは互いに愛情を深める。
結局、二人とも捕まってしまうが、めぐみの就寝中、フランツは彼女のもとを訪れ、婚約指輪をはめて、立ち去る。
フランツの正体を知った、めぐみは彼と最初に会った城を訪れることを決意。
知り合いの香島純一郎に彼はロボットだと止められるが、彼女は一切聞く耳を持たない。
その頃、地磁気の変動により、ロボットを制御するコンピューターが異常を来たす。
めぐみはフランツとの再会を果たすのだが、狂ったロボット達が次々と人間を殺し始めていた…」
様々な要素が放り込まれておりますが、ぶっちゃけ、サスペンスSFの名作「ウエストワールド」(1973年/マイケル・クライトン監督)(注1)なのであります。
ロボットの青年との恋愛物語かと思いきや、後半、ロボットが人間を虐殺しまくる急展開で、呆気にとられます。
まあ、個人的には、本編よりも、巻末の二ページほどの、作者の後書きの方が面白かったです。
その中で、鈴原研一郎のモットーに感銘を受けました。
「万人が楽しめる、これがまず基本だと思うし、むろん中心読者の的はしぼるにしても、漫画とは家に一冊置いてあれば大体家族が目を通すだろうし、その目を通した人達がそれなりに楽しめれば、これが本物だと思う。」
考えてみると、漫画はその発展の途中、どんどん細分化されていきました。
様々な人に様々な漫画が供給されること自体は素晴らしいことでしょうが、「家族が皆楽しめる漫画」というものは今、存在するのでしょうか?
だからと言って、「家族が皆楽しめる漫画」という、如何にも「文部省推薦」の看板を掲げているようなもの全てがいいとは言いません。
ですが、限られた少数の読者にのみ向けて描かれた漫画が多いように感じるのです。(注2)
・注1
二十年以上も前に、ビデオで観ました。
後半、ユル・ブリンナー演ずるロボット・ガンマンに執拗に追跡されるのが、かなり印象に残ってます。
ただ、ラスト、ロボットの振りをして、ロボット・ガンマンをやり過ごすシーンがいまだ納得いってません。
ロボット・ガンマンは赤外線(?)か何かで温度を察知して、追って来てましたので、ごまかせないように思うのですが…。
・注2
と、エラソ〜なことを書きましたが、実際のところ、見当でものを言ってるだけです。
なんだかんだ言っても、私、基本、怪奇マンガしか読みません。
私の意見は全く当てになりませんので、鵜呑みにされないようお願いいたします。
2017年9月20日 ページ作成・執筆