曽根まさこ「墓碑銘 〜エピタフ〜」(1994年8月10日初版第1刷発行)

・「墓碑銘 〜エピタフ〜」(1991年「アップルミステリー」7月号初出掲載)
「ある日、桜井絵里子が家に帰ると、自分が死んでいた。
 日付は5月24日であるが、記憶にあるのは4月10日までで、自分の身に何が起こったのかわからない。
 両親も最愛の恋人、武藤隆也も級友も彼女に気付いてくれない中、クラスメートの白瀬一月(しらせ・はじめ)だけは彼女が視える。
 彼には昔からそういう能力があり、また、彼女にひそかに想いを寄せていた。
 白瀬によると、彼女は十日前の夕方、N市の陸橋から転落して即死したという。
 だが、何故彼女が陸橋に行ったのかが思い出せない。
 そこで、白瀬は絵里子の恋人の武藤隆也から話を聞き出そうとする。
 三年生の彼は絵里子の幼なじみで、十年以上も付き合いがあった。
 そして、彼女は彼にただただ夢中で、彼のことしか考えられない。
 とは言え、白瀬は彼とは全く関係がなく、また、生徒会長を二期務めているだけあって、聞き込みをしようとしても、なかなか手ごわい。
 それでも、彼が生徒会書記の樋口奈津子と関係があるらしいことがわかる。
 樋口奈津子は事故のあった陸橋の近くに住んでいた。
 白瀬は彼女の記憶を取り戻して、成仏させようとするのだが…。
 絵里子はどうして死んだのであろうか…?」

・「冬の蛍」(1993年「アップルミステリー」3月号初出掲載)
「霊視能力のある白瀬一月は、別のクラスの紀田陽一の背中に奇妙な光を目にする。
 紀田陽一は目立つタイプの男で、女子生徒のモテモテであった。
 でも、よく見ると、心から笑うことはなく、誰に対しても同じ冷めた笑顔を向ける。
 彼の背中の小さな光は幾度も目にするが、一瞬のことではっきり確かめることはできないまま、時は過ぎる。
 でも、ある時、白瀬はその光が螢の光に似ていることに気付く。
 背中の光のことを白瀬に教えられ、陽一は彼にその光の正体を話す。
 それは七年前、彼が小学五年生の頃の話であった…」

・「鏡のメデュウサ」(1989年「ホラーパーティ」Vol.13初出掲載)
「母親にとって、愛らしい娘の亜矢子が何よりも自慢であった。
 亜矢子は母親に似ず、ハンサムな父親に似ていたらしいが、父親はダメンズで他の女と逃げていた。
 母親は亜矢子のためなら金を惜しまず、遂に過労で倒れてしまう。
 母親の死後、亜矢子は母方の叔母に引き取られる。
 叔母夫婦には子供がいなかったため、亜矢子は大事にされて育てられる。
 それでも、母親を思い出して寂しい時には、亜矢子は鏡を覗く。
 すると、『亜矢子がいちばんきれいでかわいいよ』という母親の声が聞こえてくるような気がして、安心するのであった。
 そのために、彼女は幼心に自分が可愛いから大切にしてもらえるのだと考える。
 だが、長ずるにつれ、彼女よりもきれいだったり、可愛い少女が現れるようになり…」

 前袖の曽祢まさこ先生の言葉をお借りすると、「ひたむきな少女たちの一生懸命さ…まちがっていても、あるなっかしくても、冷静なんかじゃいられないほどの思い」を描いた短編が三つ収録されております。
 「ひたむき」と言えば、聞こえはいいですが、ぶっちゃけ、ヒロインは恐ろしく性格に難があり、人によってはげんなりするかも。(「冬の蛍」はヒロインはそれほどでもありませんが、登場人物の青年がかなりイヤな奴です。)
 よくできている思ったのは異色のサイコ・ホラー「鏡のメデュウサ」。
 ただし、ラストで評価が分かれるように思います。(個人的には、あのラストは唐突過ぎて、説得力に欠けるように思います。)

2023年7月6・7日 ページ作成・執筆

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