成毛厚子「邪香 ―殺しの匂い―」(1992年7月16日第1刷発行)

 収録作品

・「邪香 ―殺しの匂い―」
「駆け出し女優の美樹は、東海堂の片瀬社長に見初められ、20歳の年の差に関わらず、結婚する。
 一見、従順そうな社長夫人を装うも、陰では、社長の第一の部下、日向陽二と浮気をしていた。
 だが、二人の仲を片瀬が勘付いていることを知り、二人は彼の殺害を決意する。
 片瀬社長には糖尿病の持病があることから、二人は病死を目論み、インシュリンを生理食塩水にすり替える。
 計画はうまく運ぶが、自宅で片瀬が卒倒した際、ガラス戸に顔から突っ込み、失明する。
 しかし、彼には生命力はあり、病院で糖尿病の治療を受けることとなる。
 日向は、美樹に、片瀬を介護するふりをしながら、彼に多量のインシュリンを注射するよう仕向けるのだが…」

・「夜色のタブー」
「雨の降る夜の町で、緒方は冴子と再会する。
 冴子は彼の大学生時代の恋人であった。
 だが、ライバルの桐生に、彼女を賭けて、テニスの試合を挑まれ、完敗し、彼女は彼のものとなる。
 卒業後、桐生は一流商社マンとなり、一方の彼はしがないセールスマンで、二人の間の差は開くばかり。
 しかし、桐生の妻になった冴子が決して幸せではないことを緒方は知る。
 粘着質で執拗な桐生は、彼女を彼好みの女にしようとするが、どんどんエスカレートし、暴力も辞さなくなる。
 その夜、彼女を抱いた緒方は、二人の幸せにために、桐生の殺害を決意する。
 彼は、桐生を夜中、桜の咲く公園に呼び出し、睡眠薬入りの酒を飲ませ、車ごと崖から転落させる。
 しかし、桐生は意識不明の重体で、いつ意識が戻るかわからない状態となる。
 緒方は、病院で桐生の殺害をもくろむも、監視があるため、なかなか果たせない。
 更に、桐生が実は意識を取り戻しているのではないか、という疑いに憑りつかれる…」

・「夜の虫」
「一人暮らしのOL、岡部のマンションで、独身OLが缶ジュースで毒殺される。
 このマンションの近くでは、去年も女子大生が変死しており、住人は不安に包まれる。
 岡部は、向かいのアパートに住む青年がこそこそと彼女の部屋を盗み見しており、挙動不審に感じる。
 このことがあり、彼女は、隣部屋の桑原という主婦と知り合いになり、何かあった時、互いに気を付けることにする。
 桑原は、年下でエリートの夫を持ち、子供もないため、彼に捨てられないよう戦々恐々としていた。
 一方、岡部は会社で課長と不倫をしており、課長の妻が青年で彼女の様子を窺って、彼女を殺そうとしているのでは、と考える…」

・「蛍の葬列」
「祖父の葬式のための帰郷で、啓は、かがりと六年ぶりに会う。
 かがりは年上の美しい従兄で、子供の頃、兄の昇一と三人で、仲良く遊んだものであった。
 彼女は兄の昇一と恋仲になるが、啓が大学の頃、兄は彼女を捨て、世界放浪の旅に出る。
 以来、彼女は、彼が戻って来るのを待ち続けていた。
 夏祭りの夜、彼は彼女に、兄がもう戻ってこないと断言する。
 実は、彼女に宛てた、兄の手紙は、彼が彼女を悲しませたくないために、偽筆したものであった。
 しかし、彼の姿を見たと言い張る彼女に、彼はある事実を打ち明けるのだが…」

2020年6月22日 ページ作成・執筆

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