和田慎二「左の眼の悪霊」(1975年10月20日第1刷・1991年5月15日第37刷発行)
収録作品
・「左の眼の悪霊」(1975年「花とゆめ」13・14号)
「人里離れた地に建つ邸宅、つぐみ館。
そこを、名張潤子と樹ノ宮ケイという二人の少女が訪れる。
二人は鑑別所からの親友で、潤子は、館の相続権を持っているケイの付き添いであった。
そして、相続権を持つのは、もう一人、葉月亜矢。
二人は、戦国時代のイギリス人の大名、織永家の血筋をひき、また、青い瞳を持つ。
だが、ケイは左目が青、右目が黒という金銀妖瞳であった。
婆やのシジマ夫人によると、しばらくこの館に滞在して、最後に、地下にある「あかずの部屋」に入ってから、相続人が決まるという。
その「あかずの部屋」に入った者は皆、精神錯乱に陥ったという噂があった。
潤子とケイは館で過ごすが、ここでは奇怪なことばかり。
真紅のケシの花畑の中にある、巨大な青銅の竜。
庭の所々にある、24体の、壺と剣を持った像。
目を狙って、大群で襲いかかる黒ツグミ。
そんなある日、ケイは潤子に恋人(漫画家の岩田慎二/モデルはどう見ても…)がいることを知る。
彼女を心の支えにしているケイは悲嘆に暮れ、一人になるために、「あかずの部屋」に入る。
時が経ち、潤子は気絶した彼女を見つけるが、ケイは右の黒目を抉り取られていた。
ケイが目覚める時、惨劇の幕が切って落とされる…」
・「スケバン刑事 校舎は燃えているか!?」(1975年「花とゆめ」15号)
「麻宮サキは、ある事件の調査のために、仮釈放され、母校へ戻ってくる。
その事件とは、一か月前の旧校舎の爆破炎上で、新校舎も爆破されるという噂があった。
調べていくうちに、旧校舎が爆破される前に、音楽室と実験室でも小さな爆発があったらしい。
爆発物は、塩素酸カリウムで、薬屋でも売っているものであった。
これを糸口に、爆破事件の真相が明らかとなるのだが…」
・「パパにくびったけ」(1975年「花とゆめ」17号)
「ボーイッシュな恵子は、小説家の父と、その弟子の真悟との三人暮らし。(母親は九年前に死亡。)
彼女のクラスには、桜田香織という長髪でコケティッシュなお嬢さまがおり、ある本をきっかけに、彼女が恵子の家にやってくる。
ところが、香織は、ロマンスグレーな年頃の、恵子の父親の一目惚れ。
妻の座を得るべく、猛アタックを始めるが、恵子の父に亡き妻を忘れられないと告げられ、今度は娘扱いされようと大ハッスル。
香織にコンプレックスを抱く恵子は、徐々に疎外感を募らせ、父親の愛を疑い始める…」
・「リョーシャとミオ」(和田慎二先生のかなり初期の作品らしいが、詳細不明)
「木こりのリョーシャは、ミオが帰ってくると信じていた。
二人は赤ん坊の頃からの兄妹のように育ち、強固な関係で結ばれていた。
だが、三年前、ミオは都会に住む叔母のもとで教育を受けることとなり、リョーシャも彼女を引き留めようとはしなかった。
その悔いを胸に抱きながらも、彼は今日も帰ってくるかもしれない彼女を迎えに行く…」
この単行本の「目玉」は、力作「左の眼の悪霊」でしょう。
単純に言うと、館に潜む悪霊の話ではありますが、後半の展開が途方もなくダイナミックで、和田慎二先生の剛腕を窺い知ることができます。
ここまでくると、ホラーというより、スペクタクルですよ、こりゃ。
2021年4月12日 ページ作成・執筆