高橋一仁「信者(ファン)」(2021年4月15日第1刷発行)

・「Scene 1」
「若者の間でカリスマ的人気を誇る歌手、児玉響(26歳)。
 彼のマンションを盗聴・盗撮したとして山野花純(34歳/無職)という女が逮捕される。
 警視庁ストーカー対策課の堀優子は花純を取り調べ、彼女からストーカー行為に至った経緯を聞く。
 花純はお嬢様の通う学校を卒業したが、結婚した相手はマザコン男であった。
 男児を授かるも、育児が更に彼女を追い詰め、精神が崩壊する寸前。
 そんなある日、彼女は義姉から児島響のライブチケットをもらう。
 それは彼女にとって運命を変える出来事であった…」

・「Scene 2」
「ライブを見た日から花純の中で児島響が全てとなる。
 彼女は夫と離婚し、シングルマザーとなるが、他に頼る当てもなく、途方に暮れる。
 しかし、不動産屋から紹介された事故物件が彼女に奇跡をもたらすこととなる…」

・「Scene 3」
「花純はシングルマザーとして育児や仕事に奔走しながらも、幸せな日々を送っていた。
 ある日、病欠した彼女はテレビのニュースで児玉響のライブを知る。
 彼女は響に会いたくて会場まで出かけるも、チケットは完売。
 そこで彼女が取った行動が転落の始まりであった…」

・「Scene 4」
「花純は全てを失う。
 死を決意した彼女は首を吊ろうと天井点検口を開く。
 その時、彼女は天井裏が彼女にとって「天国」であることに気付いたのであった…」

・「Scene 5」
「児島響は山野花純への被害届を取り下げ、花純は釈放される。
 だが、堀優子は花純への疑いが晴れることがなかった。
 彼女は花純の学生時代の友人、また、元・夫に聞き込みをする。
 供述とは全く違う、花純の本当の姿とは…?」

・「Scene 6」
「堀裕子は花純の関係者への聞き込みを続ける。
 チケットのダフ屋、不動産屋…etc。
 堀裕子が睨んだ通り、花純の「独特の甘さと危険な感じ」の正体がますます明らかとなる…」

・「Scene 7」
「茨城県の山奥で人体の一部が発見される。
 被害者は北沢明日菜(21歳/東京在住)。
 アメリカでツアー中の児島響はそのニュースを見て、顔面蒼白であった。
 その理由とは…?」

・「Last Scene」
「堀裕子は茨城県警を訪れ、遺体遺棄事件の担当者に自分の推理を話す。
 山野花純と遺体遺棄事件の関連とは…?
 そして、一年後…」

 ストーカー女をヒロインに据えた「ダーク・サイコ・サスペンス」(帯より)です。
 と言っても、「怖い」と言うよりは「生臭い」「気持ち悪い」と形容した方がしっくりする内容で、残酷描写もほとんどありません。
 ただ、この粘着質なストーカー女の描写はやはりイヤ過ぎ…。
 このヒロインは非常に狡猾で、女の武器を徹底的に駆使するところなんか、実にリアリティがあります。
 また、前半がストーカー女の証言、後半がその真の姿を暴く…というミステリー仕立ての構成も巧みで、ぐいぐい読ませます。
 ところが、最後の最後で問題がありました。
 女刑事の堀裕子がヒロインの実家を訪ねるのですが、その後が描かれていないのです。
 ヒロインの過去は結局、謎のまま…。
 ここさえきっちりしてくれていたら、佳作になったと思うのですが…惜しい作品です…。

2026年1月28日 ページ作成・執筆

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