好美のぼる「5臓妖怪」(1974年2月15日初版発行)
「亜矢子は健気で、心優しい少女。
飲んだくれの父、病身の母を抱えながらも、弟と妹の世話を甲斐甲斐しく見ていた。
しかし、父親の給料日、姉弟達が酒屋に父親を迎えに行っている間に、母親は息を引き取る。
更に、父親は酔っ払って帰宅途中、轢き逃げにあって死亡。
父母を相次いで失った姉弟は、三人で強く生きていこうと決意する。
が、その直後、川で発泡スチロールの船で遊んでいる最中、船が転覆。
亜矢子は一命を取りとめるものの、弟と妹は溺死してしまう。
病院に運び込まれた亜矢子の身体を診察した医師は、奇妙なことに気が付く。
亜矢子の心臓の音が乱れて聞こえるのであった。
原因を確かめるべく、亜矢子には内緒で医師達は彼女の身体をレントゲンに撮ると、彼女の身体には心臓が五つもあった。
亜矢子は、もとは五つ子であったものが、亜矢子の身体に一つに収まっていたのである。
医師達は亜矢子をだまして、もっと検査しようとするものの、弟と妹の死を知った亜矢子は病院から逃走。
天涯孤独の身である亜矢子は、自分の家庭をメチャクチャにした者への復讐を決意する。
金がないからと言って、亜矢子の母親を診ようとしなかった医者。
亜矢子の父親を轢き逃げしたタクシーの運転手。
そして、川で溺れた時、助けようとしなかった大人三人。
彼らは次々と奇妙な妖怪に襲われて、怪死していくのであった…」
「ゲテゲテ」感溢れる「妖怪」マンガの快(怪)作であります。
上右の画像を見て、ホラー映画に詳しい方なら、B級ホラーの大怪作「首だけ女の恐怖」(注1)を連想されるかもしれませんが、残念ながら、そういう要素はありません。
何故「5臓妖怪」と言うのかと申しますと、もと五つ子だったので、両手足にそれぞれ心臓があり、独立して動くことができるから、と説明されております。
まあ、手足がそれぞれ分離して動くのはわかりますが、髪の毛に目玉の生えた妖怪はちょっぴり謎。(「鬼太郎」に出てくる夜叉の影響あり、と見ました)
加えて、巨大な芋虫やカミキリムシもどきも出てきますが、それに対する説明は一切ありません。
(手や足が化けたものなのかと思いましたが、大群で襲ってくるので、違うようです。使い魔みたいな感じかも。)
まあ、好美のぼる先生のマンガを真剣に考察したところで、それこそ時間の無駄ですので、ここは妖怪少女の「なさけ・むよう」な復讐を楽しむべきでありましょう。
髪の毛に襲われて絞殺されたり、布団の中で芋虫の大群に骨までしゃぶられたり、いい塩梅の残虐度です。
最後は、急展開して、妖怪少女と鬼畜少女の対決に突入しますが、鬼畜少女があっさり八つ裂きにされる描写は、好美マンガの中でも白眉だと、個人的に考えております。
・注1
「首だけ女の恐怖」(「Mystics in Bali」/インドネシア/1981年)
バリ島に古くから伝わる黒魔術を研究に訪れた、アメリカの女子大生キャシーが、現地で黒魔術を営む女魔術師に教えを請ううちに、女魔術師に黒魔術をかけられ、首だけ女になる…というストーリー。
この「首だけ女」というのが、日本のろくろ首(小泉八雲ver)のように、首が胴体から離れて飛び回るのですが、その際、首が内臓をぶら下げているのが、最大の特徴。
ビデオ・ジャケットに「首だけ女」のイラストが載っておりますが、B級ホラー映画ビデオ・屈指のインパクトを誇っております。
ちなみに、私、この映画は未見であります。第一、ビデオ自体、目にしたことがありません。(YouTubeで少しだけ観ましたが、あまりの衝撃に腰が抜けそうになりました…。日本版DVD化希望!!)
ですので、この文章は、今は亡き名サイト「国際ホラー研究所」の紹介ページを参考にさせていただきました。
更に、詳しいことを知りたい方は「別冊映画秘宝 80年代悪趣味ビデオ学の逆襲」(洋泉社MOOK/2013年12月18日発行)pp144・145にて、取り上げられておりますので、参考にしてくださいませ。
・備考
本文目立つシミ、多し。
2016年9月11日 ページ作成・執筆