蕪木彩子「奇形(フリーク)」(1997年10月4日第1刷発行)

 収録作品

・「仮面の下」
「浩太郎と純は山にハイキングに出かける。
 山頂近く、二人は顔がドロドロに溶けた男に追われ、研究所に逃げ込む。
 その研究所では岩崎という夫婦が微生物の研究をしており、二人を助けたのは妻の真理であった。
 真理は仮面をつけていたが、情緒不安定とのことで、仮面をつけると心が落ち着くらしい。
 これをきっかけに、二人は岩崎夫妻の研究所を度々訪れるようになる。
 ある時、純が真理の顔に何か付いていると指摘すると、真理は顔色を変え、夫妻は居間から出ていく。
 夫妻がなかなか戻ってこないので、二人は帰ろうとし、その前に、純はトイレに寄る。
 すると、夫妻が一人の男を両側から抱えて、家の奥に行くのを目にする。
 廊下の先にはドアが開いていて、部屋の中には岩崎夫妻の他に、先日、純達を追った溶解男がいた。
 しかも、真美も、皮膚の下が同じように溶けていた。
 その後、二人は帰宅するも、浩太郎は純の言う事を信じない。
 浩太郎に言われ、純は仕方なくもう一度研究所に行くのだが…」

・「奇形(フリーク)」
「勤は顔面にグロテスクな奇形を持つ少年。
 だが、本人は頭が良くて、気さくで楽しく、幼馴染であるクラスメート達は誰も気にしない。
 ただ一人、帰国子女でクラスに転入したばかりの安永静は彼に対して興味を持つ。
 勤は、彼女が母親の知り合いだった安永綾子の娘だと知る。
 静は綾子に本人と見間違うぐらいに似ていた。
 彼女は、勤からある問題の解決する糸口を掴もうとしているのだが…」

・「邪悪顔」
「静乃は中学校以来、付き合っていた要(かなめ)から一方的に捨てられる。
 その理由は、静乃は一人でも大丈夫だが、たかねは自分が付いていないとダメというものであった。
 静乃はいくら苦しんでも、いくら憎んでも、要をあきらめることができない。
 彼女の想いの行きつく果ては…」

・「溺れ沼」
「夏。
 真琴と幼馴染の慎平は、一昨年、亡くなったいとこの達夫の法事に出席するため、田舎の実家を訪れる。
 達夫は木から転落して、「溺れ沼」で溺死する。
 死体はいまだ上がらず、また、、唯一の目撃者が真琴であった。
 法事の最中、真琴は「帰ってきたんだね」と呼びかける達夫の声が聞こえる。
 その後、真琴と慎平は「溺れ沼」にやって来る。
 慎平は面白半分に写真を撮るが、その夜、達夫の霊が彼の夢に現れ、「渡しはしない!!お前なんかに」と告げる。
 慌てて写真をチェックすると、その写真には達夫の霊が映っていた。
 真琴にその写真を見せると、達夫のことを思い出し、涙を流す。
 翌日には帰ることに決めるも、慎平は、達夫の霊は頭から血を流していることがどうも引っかかる。
 その夜、真琴の姿が寝室から消え、慎平は「溺れ沼」に捜しに向かうのだが…」

・「復讐」
「ある会社のOL、さやかには、好きな人との結婚をあきらめてでも、やらなければならないことがあった。
 それは桐子という女性への復讐。
 ある日、家が桐子だけになった時間を見計らって、さやかは家に忍び込み、彼女を拘束。
 さやかの復讐の理由とは…?」

・「暗夢(くらいむ)」(1990年「月刊パンドラ」3月号)
「1980年。
 裕介(19歳)という予備校生による「女子大生両手足切断殺害事件」。
 彼が凶行に至った理由とは…?」

・「夢のつづき」
「公恵は最近、同じ夢をよく見るようになる。
 夢の中で、彼女は風間七生子(なおこ)という少女であった。
 両親の死後、五歳の七生子は遠縁の木曽家に引き取られる。
 養母は優しかったが病弱で、養父は浪費家でだらしなく、資産家だった木曽家は傾いていく。
 彼女が高校生の時、養母の入院している病院で森恵介という青年と知り合う。
 彼は身体が弱く、入退院を繰り返していたが、七生子は彼に惹かれ、就職した後は彼との結婚を考える。
 しかし、彼女には幼い時に決めた許婚(いいなずけ)がいた。
 恵介は、可能性を求めて、都会の大きな病院で手術をすることになる。
 彼は、彼女に似合う帽子を持って必ず迎えに来ると手紙を寄こし、ここで夢が終わる。
 ある夜、公恵は夢の続きを見て、七生子を捜す決意をするが…」

・「美の殺意」
「名美は凄い美人であったが、男には興味がなく、小谷先輩も眼中になし。
 ある日、小谷先輩にしきりと言い寄っている川村悦子が硫酸シャワーで殺害される。
 その時、名美の親友のいずみは顔に包帯を巻いた怪しい男を見かける。
 更に、二年前にも同様の事件があり、被害者は名美の同級生であった。
 どうやら名美の背中にあるケロイドらしき傷が謎を解く鍵のようなのだが…」

・北川玲子「〈蕪木彩子〉とは? 蕪木さんちはスプラッター屋さん」

 少年による(架空の)殺人事件を描いた「暗夢」はその手のものとしてはかなりの出来だと思います。
 ただし、ラストがもろに「蕪木スマイル」(by GOGO氏/例@)のため、傑作になりそこねたように感じております。

2022年9月7・8・14日 ページ作成・執筆

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