すがやみつる「タケルが行く!」(1976年4月10日初版発行)

 収録作品

・「タケルが行く!」(秋田書店「冒険王」所載)
「山戸中学校に社タケルという少年が転校してくる。
 彼は祖父の遺言で髪を古代人のように結っていた。(表紙画像を参照のこと)
 見た目はチビな男の子だが、髪がほどけると、彼は驚異的な力を発揮する。
 夜、タケルが神社で寝ていると、少年がお百度詣りにやって来る。
 彼は高原キヨシといい、姉の姫子が一週間前から原因不明の病気で寝込んでいるので、回復を祈願していた。
 キヨシの話から、タケルは引っかかるものを感じ、高原家に向かう。
 同じく一週間前に地底のネの国の女王、暗闇姫が復活していた。
 そして、姉弟の父親こそがその古墳を暴き、封印を解いた張本人であったのである。
 案の定、姫子は暗闇姫に憑依されており、両親を襲う。
 タケル、キヨシ、番長、姫子の父親は古墳のあった宅地造成地に急行するのだが…」

・「オレはタカの子」(旺文社「中一時代」所載)
「飛名タカオの父親の源三は腕のいい鳶職人。
 しかし、後輩が墜落死するのを目の当たりにして以来、彼は高所に登れなくなる。
 父子は現場を流れ歩いて、三か月後、ある村のダム建設場にやって来る。
 そのダム建設により村が沈んでしまうため、村の子供達はダム建設員たちを敵視していた。
 タカオはそんな彼らを持ち前の身のこなしで軽くいなすが、今は土方の父親をバカにされ、激昂。
 嵐の夜、ダムの工事現場の上で、タカオは村の子供のリーダーの健太と決闘をするのだが…」

・「いつか夜空で」(旺文社「中一時代」所載)
「伊豆沖にぽつんと浮かぶ孤島、神之島。
 島の少年、昭太は大のアマチュア無線のファンであった。
 夏、T大の地震学の教授が調査のため、島を訪れる。
 この教授も無線に造詣が深く、二人はすっかり意気投合。
 更に、昭太は教授の娘、由加にハムの家庭教師をすることとなる。
 二人は楽しい夏休みを過ごし、一日一日がとても充実していた。
 二週間経ったある日、教授と診療所の医師が所用で東京に向かう。
 船が出て少し後、島は地震に襲われ、由加が大けがをする。
 昭太は彼女を救うことができるのであろうか…?」

・「夕やけ色のトランペット」(旺文社「中一時代」所載)
「柴田サトルはショーウィンドーのトランペットを目にするたびに血のたぎりを抑えることができない。
 だが、十年前に父親が死んでから、母親は料亭の女中をして、彼を中学校にやっており、トランペットを買う余裕はない。
 彼がダメもとで母親にその話をするが、母親は顔色を変えて反対する。
 それでもあきらめきれず、押し入れの中に隠してある進学用の貯金を探していると、トランペットのケースが出てくる。
 トランペットの先には「E.S」とイニシャルが刻まれていた。
 次の日の夕方、彼はそのトランペットを手に町外れに行き、トランペットを吹いてみる。
 自分でも驚くほど、スムーズに音が出るが、そこに見知らぬ中年男性が現れ、トランペットは口でなく、心で吹くものだと諭す。
 その男性がトランペットを吹くと、遠吠えのような音であった。
 でも、優しさに満ちており、サトルは「JAZZ」に開眼する。
 以来、その場所でサトルは中年男性からトランペットの特訓を受ける。
 男性の紹介で、サトルはジャズ喫茶で演奏するようになり、どんどんジャズにのめり込んでいくのだが…」

・「ハチの子ジプシー」(旺文社「中一時代」所載)
「夏の北海道。
 蜂屋の川上一家(母親、中学生のミツオと妹/父親は去年、ヒグマに殺される)が今年も谷村牧場を訪れる。
 一家は毎年、この牧場にミツバチの巣箱を置かせてもらっていた。
 谷村家は牧場主とその娘の妙子で、妙子はシャナオーという馬を愛する、元気な娘であった。
 しかし、病死した母親の治療のために早間社長から借りた借金が膨らみ、谷村氏は牧場を失う瀬戸際にいた。
 ヒグマの襲撃、早間社長の陰謀等、様々な苦難が二つの家族を襲う。
 皆が絶望に沈む中、ミツオだけは決して蜂屋の夢をあきらめはしない…」

 怪奇マンガは「タケルが行く!」だけですが、他の作品も読みごたえあります。
 個人的には、アマチュア無線を扱った「いつか夜空で」が最も面白く思いました。(注1)
 すがやみつる先生はハム無線の漫画を描いていたようですので、力の入り方が違うように思います。
 あと、「夕やけ色のトランペット」にはディジー・ガレスピー、マイルス・デイヴィス、ルイ・アームストロングのイラストが出てきますが、ジャズ・ファンだったのでしょうか?

・注1
 こんなこと書いたら一部の人に顰蹙を買うでしょうが、アマチュア無線をやってる連中に私は偏狭な奴らという偏見を抱いてます。(あくまで私の「偏見」ですので、気になされぬよう。)
 というのも、高校の文化祭の時、無線部の奴が無線をしていて、ちょっと話をさしてくれと言ったら、血相を変えて、ダメと断られたから。
 そりゃ無線には免許が必要で、そんなことを頼む私の方が非常識なのは確かですが、あいつの拒否に満ちた顔や口調を思い出すと、「お前ら、バカじゃないの?」という思いがいまだに拭えません。
 以上、愚痴でした。(もう一度書きますが、私の単なる「愚痴」ですので、気になされぬよう。)

2023年7月1・3日 ページ作成・執筆

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