千之ナイフ「人間モドキ」(1999年8月15日第1刷発行)

 収録作品

・「人間モドキ」
「さやかは、自然公園の隅にある、小さな水族館がお気に入り。
 ある日、彼女は水槽の中に奇妙なプランクトンのような生物を三匹、目にする。
 水族館の職員にその生物をもらい、彼女は大きい順から「エル」「エム」「エス」と名付け、水槽で飼う。
 しかし、家には水槽置いておけず、学校のロッカーでひそかに飼っていたところ、その生物はクラスの熱帯魚を全部、食い殺してしまう。
 怒ったクラスメート達はその生物を下水に流してしまうが、自我に目覚めた生物は「人間」になるため、人間を襲っては食い殺していく…」

・「黒姫・紅姫」
「雪乃は、数合わせのために、英莉と晶子に誘われ、白狐谷のペンションに向かう。
 だが、肝心のペンションは潰れ、廃屋となっていた。
 そこへ仮面を付けた男が車で通りがかり、自分のホテルに泊まるよう提案。
 他に選択肢はなく、三人は男の車でホテルへと向かう。
 ホテルは年季の入ったもので、黒姫と紅姫の双子の姉妹が経営していた。
 紅姫が彼女達を出迎えるが、夜にはできるだけ部屋から出ないよう警告する。
 というのも、黒姫に見つかると、何をされるかわからないという理由であった。
 だが、英莉と晶子はその警告を無視して、露店風呂に入りに行く。
 二時間経っても戻って来ない二人を捜して、雪乃は洞窟の露天風呂を奥へと進んでいくのだが、そこには…」

・「学園祭の地獄」
「2年E組に転入してきた山田黄泉子。
 彼女は非常に内気で、いつも伏し目がち、そして、涙もろい。
 でも、その心は、クラスメート達を喜ばせたいという気持ちでいっぱいであった。
 学園祭の催し物でお化け屋敷をすることとなり、彼女は皆の喜ぶ顔を見るために、その力を使う…」

・「旧校舎」
「今は使われていない旧校舎。
 夕暮れ時、その廊下に小さな穴が時々開き、近付く者を死者の国に引きずり込むという噂があった。
 新聞部の八木薫は、三組の沙川に取材を申し込み、二人で旧校舎に向かう。
 沙川は、旧校舎で幽霊を見たことがあったが、その幽霊は、旧校舎で行方不明になった自分の親友、木島路子であった。
 そして、彼女は、路子と共に旧校舎を探索した話を始める…」

・「X'マス・デビル」
「資産家の男性とその愛人の一人娘である麻里。
 母親の死後、父親の屋敷に引き取られるが、そこでは母と娘の麗花から女中扱いされ、度々、お仕置きを受けていた。
 麻里が、潰れた教会で、自分の醜い心を懺悔していると、腹話術の人形を持った、奇怪な男が現れる。
 男は伝道師デビエル、人形は「キューピッドのQ乃介」と名乗る。
 デビエルは、誰の心にも悪魔が宿っており、心の陰りは彼女を救う力になると話し、姿を消す。
 そして、迎えたクリスマス、麻里は教会でのパーティに招待される。
 しかし、それは麗花の罠であった。
 麻酔薬で眠らされた麻里が目を覚ますと、全裸に近い状態で十字架にくくりつけられ、会場には麗花とその取り巻きが揃っていた。
 そこへ伝道師デビエルとQ乃介が現れる。
 デビエルとQ乃介が彼らにもたらす「スペシャルプレゼント」とは…?」

 個人的なお気に入りは「人間モドキ」と「学園祭の地獄」です。
 「人間モドキ」は千之ナイフ版「妖怪人間ベム」でして、「人間になりたい」がために人間を食べるという発想がストレートでステキだと思います。
 また、「学園祭の地獄」はヒロインの山田黄泉子がなかなか魅力的。
 彼女を主人公にした話をもっともっと読みたいなあ〜。

2019年4月1日 ページ作成・執筆

その他の出版社・リストに戻る

メインページに戻る