三部けい
「鬼燈の島@」(2008年6月22日初版発行/@〜F話)
「鬼燈の島A」(2008年11月22日初版発行/G〜L話)
「鬼燈の島B」(2009年6月22日初版発行/M〜S話)
「鬼燈の島C」(2009年9月25日初版発行/21〜27話)



 収録作品

「鬼燈の島」
・「第一話 ウツクシイ島」(「ヤングガンガン」2008年1号)
 夏。
 鈴原心(小学四年)と夢(五歳/盲目)の兄妹は鬼燈学園のある島にやって来る。
 兄妹は母親に捨てられ、餓死寸前のところを保護された。
 鬼燈学園は、家庭の問題から心に傷を持った子供達が集団生活を送る。
 この島の住人は、鈴原兄妹を除くと、たったの八人。
 大人が四人の教師で、老人の豊田園長、眼鏡をかけた桑舘、無口で体格のいい臼井、新任の甲斐雪乃。
 生徒達も四人で、
 須藤力也(小学六年生)〜ガキ大将タイプ。両親が服役中で、虚言癖・妄想癖あり。
 宮崎初音(小学五年生)〜母親と内縁の夫の暴力により、失語症となる。その後、両親に捨てられる。
 藤井秀一郎(小学四年生)〜天才タイプ。母子家庭に育ち、無理心中に巻き込まれたことから、大人を敵視する。
 八海太(小学四年生)〜過食症。両親が亡くなり、祖父母に育てられるが、現実逃避のため、食べ物が手放せなくなる。
 以上のように、子供達は皆、複雑な問題を抱えていた。
 教室で他の子供達と一緒になった時、心は力也から警告を受ける。
 それは、死にたくなかったら、大人の言うことを信じるな、というものであった。
 先生達は何かを隠しているようなのだが…。
・「第二話 イナクナッタ子ドモ」(「ヤングガンガン」2008年2号)
 心と夢は自然豊かな島で楽しく暮らす。
 ある時、彼は力也と太に呼び出され、ボイラー室へと入る。
 そこで、力也は心に二つの誓いを立てろと命じ、この島の秘密を教える。
 まず、島から急に消えたヒサノブという少年のこと。
 桑舘によると、彼は急病で町の病院に行ったとのことだが、本当は、この島の秘密を知り、それを大人に話したため、消されてしまったらしい。
 そして、もう一つは、島に出る「白いワンピース」の姿の、小学生らしい女の子の幽霊のこと。
 彼女も久信と一緒で、秘密を知ったために、消されてしまったと話す。
 心は力也に「大人の言う事を信じるな」と「本当の事は大人に話すな」という二つの誓いを立てされ、彼らの仲間となる…。
・「第三話 登ッテハイケナイカイダン」(「ヤングガンガン」2008年3号)
 心は学園が金網で囲まれていることに気づく。
 だが、力也は金網の外にこっそり出かけていた。
 ある夜、心は、足音を聞き、ドアの窓から外を覗く。  すると、廊下を初音が通るところで、その後ろを桑舘が廊下を怖い顔をして通るのを目撃。
 桑舘は入浴中の初音を襲おうとするも、それを察した秀一郎と心の二人がそれを阻止する。
 翌日、教室で、秀一郎が皆に声をかけ、この学園がどういう所か「証拠」を見せると話す。
 彼は渡り廊下への隠された入り口を発見し、上がってはいけないと言われた階段を上がる。
 その階段の下にあった部屋で、彼らが見たものとは…。
・「第四話 知ッテハイケナイコト」(「ヤングガンガン」2008年5号)
 島の恐ろしい秘密を知った子供達。
 彼らは、大人の前では、何も知らないふりをするが、決して警戒を緩めない。
 ある時、力也が心に打ち明け話をする。
 彼によると、この島から昔、石炭が採れたというのは嘘で、本当は金山なのであった。
 園長は学園を隠れ蓑にして、ひそかに金を掘り出し、それに気づいたヒサノブは消されると話す。
 力也は、この学園では生きられないと、金を手に入れようと決意していた。
 その晩、心と夢は脱衣所で太と出会う。
 彼は心にある秘密を話すのだが…。
・「第五話 狙ワレタノハダレ?」(「ヤングガンガン」2008年6号)
 ある日の放課後、力也は、金を探すため、金網を越え、山に向かう。
 一方、初音は浅瀬で貝殻を採っていた。
 その時、全裸の桑舘が彼女の方に向かってくる。
 逃げ場を探す彼女の前に、白いワンピースの少女の霊が現れ…。
・「第六話 ミズケムリノ向コウガワ」(「ヤングガンガン」2008年7号)
 雷雨の夜。
 子供達は、土砂降りの中、先生達が力也を担架で運ぶのを目撃する。
 翌日、雪乃は彼が裏山の崖から落ちたために、怪我をして、船で町の病院に運ばれたと話す。
 心と秀一郎は裏山を調査するが、雨で足跡も何も残っておらず、詳しいことはわからない。
 だが、秀一郎は、力也が先生に殺されたと断言する…。
・「第七話 ドウシテ嘘ツクノ?」(「ヤングガンガン」2008年9号)
 臼井先生が屋根を修理した後、梯子から足を踏み外して、首の骨を折って亡くなる。
 心と秀一郎は発見するも、あえて黙っていた。
 その後、雪乃が発見し、臼井の死体は船で運ばれ、島の大人は雪乃だけになる。
 彼女は事故現場の梯子を調べ、あることに気づく。
 昼食の後、彼女は生徒達に話をするが…。
・「第八話 開ケテチョウダイ」(「ヤングガンガン」2008年10号)
 夜、心は、雪乃が竹刀を持って、秀一郎の後をつけているのを見る。
 更に、覗き見しているところを雪乃に気づかれてしまった。
 雪乃に部屋に入れるよう頼まれるが、心は拒否。
 雪乃は彼に「知っているんでしょう?」と言って、その場を去る。
 翌日、授業は自習となる。
 心は皆に島から脱出しようと提言し、秀一郎が脱出に最適な日を決める。
 決行は五日後、先生達が初七日で島を留守にする時…。
・「第九話 逃ガサナイ」(「ヤングガンガン」2008年11号)
 法要から先生達が帰ってきた後、子供達は先生の食事に睡眠薬を混ぜる。
 先生達が眠っている間に、子供達は裏山を越えて、古い船着き場を目指す。
 だが、雪乃は夕食をとらず、子供達の逃亡に気づく…。
・「第十話 ダイジナダイジナコ供タチ」(「ヤングガンガン」2008年14号)
 先生達は外部との連絡手段を絶たれていることを知る。
 これから五日間、島は外界から隔絶される。
 先生達は子供たちが「行方不明」になってはいけないので、三人だけで彼らを追うことにする。
 子供達が一本道を言っているとすれば、行きつく先は一つ…。
・「第十一話 カミサマハ居ナイ」(「ヤングガンガン」2008年15号)
 子供達が休憩をとっている時、夢は大人の男らしい声を聞く。
 先生達が追ってきたと思い、初音は、先の様子を見に行った秀一郎に知らせに行く。
 心や太達が先に進むと、そこに墓場があった。
 墓場には慰霊碑があり、「殺された子供の墓場」だと心は思う。
 ようやく彼らは秀一郎に追いつくが、先に行った初音の姿がない。
 戻って調べると、彼女は、墓場のそばの穴に落ちたようであった。
 秀一郎が見つけた階段を降りると、そこは「炭鉱跡」で…。
・「第十二話 ゼンブ見エテルヨ」(「ヤングガンガン」2008年17号)
 太と夢にその場から動かないよう言いつけ、秀一郎と心は初音を探しに出かける。
 進むと、ここは坑道ではなく、何かの貯蔵庫のような場所であった。
 二人は初音を発見するが、彼女は気絶していて、桑舘が彼女にいたずらをしようとしていた。
 彼女を助けるために、まず心が桑舘をおびき出す…。
・「第十三話 ジコデ死ニタイカ?」(「ヤングガンガン」2008年18号)
 心は桑舘を振り切り、太と夢を連れ、待ち合わせ場所のポンプへと移動する。
 しかし、桑舘に付けられており、心と夢は太とはぐれてしまう。
 心と夢は桑舘に追われ、ピンチとなった時、二人の前に、白い服の少女の幽霊が現れる。
 一方、初音をおぶって逃げる秀一郎は、地下で園長の姿を見る。
 彼は園長を足止めしようとするのだが…。
・「第十四話 アンゼン地タイ」(「ヤングガンガン」2008年19号)
 園長を足止めして、秀一郎は逃げる。
 途中、女の声を聞き、彼は、ヒサノブが話していた少女の幽霊のことを思い出す。
 初音と合流し、坑道から出ようとした時、階段の上から雪乃が降りてきて…。
・「第十五話 タイ切ナノハドッチ?」(「ヤングガンガン」2008年21号)
 秀一郎の的確な推理により、彼らは心と夢と合流する。
 食事の後、道を進むと、道は下り始め、別の坑道の入り口を発見する。
 秀一郎は、先生達を中におびき寄せるため、夢と太を残して、中に入る。
 夢と太が二人きりの時、その近くに園長がやって来て…。
・「第十六話 コロスカ殺サレルカ」(「ヤングガンガン」2008年22号)
 秀一郎、心、初音が坑道の中を探索していると、先生らしい人物がやって来る。
 秀一郎はその人物をある部屋へと誘い込もうと、心と初音に計画を話す。
 その部屋は出入り口が二か所しかなく、扉の間には板を渡した通路があり、その下には貯水タンクがあった。
 秀一郎は自らがおとりとなり…。
・「第十七話 幽レイハイナイ」(「ヤングガンガン」2008年23号)
 危機を脱した秀一郎達は夢と太のもとに行き、先を急ぐ。
 だが、食料の入ったリュックを失い、太はパニック寸前になる。  その時、彼の前に、少女の幽霊が現れる。
 一方、雪乃は園長の命で、坑道の外で待機していた。
 30分待っても、戻らなければ、桑舘と合流するよう言われていたが、あれからもう一時間。
 彼女が中の様子を見に行くと…。
・「第十八話 シュウハ眠ラナイ」(「ヤングガンガン」2009年3号)
 秀一郎は「少女の幽霊」について自分の考えを話す。
 彼の疑問の発端は、「少女の幽霊」について、皆の話すことがまちまちなことであった。
 しかし、誰のものとも知れない「女の声」を聞いたことだけがわからない。
 もしかしたら、島の地下には、彼らが会ったことのない少女がいるのかもしれない…。
・「第十九話 アナタガ殺シタノ?」(「ヤングガンガン」2009年4号)
 子供達はようやく島の裏側に着く。
 長い階段を下った先には船着き場があったが、そこで彼らの望みは絶たれる。
 こうなったら、最後の手段、定期船の奪取しかない。
 彼らは学園に戻ろうとするが、船着き場への道を、雪乃が降りてくる。
 秀一郎はまたもや、おとりとなるが…。
・「第二十話 オトナハミンナソウ言ウ」(「ヤングガンガン」2009年5号)
 秀一郎に代わり、心が雪乃を引き付ける。
 彼は坑道の中に入り、気が付くと、貯水タンクのある部屋に来ていた。
 雪乃はあれは「事故」だったと言うも、心は信じない。
 二人が追っかけっこをしていると、木の床が崩壊し…。
・「第二十一話 嘘ツキハドッチ?」(「ヤングガンガン」2009年7号)
 タンクに落ちた心と雪乃。
 タンクには水が流れ込み、更に、蓋が閉まってしまう。
 このままでは二人とも溺死する運命。
 雪乃は心に彼女の肩の上に乗って、蓋を開けるよう言うが、心は動こうとしない。
 心は雪乃が本当は何を考えているのか知ろうとする。
 だが、彼女の言葉を聞いても、信じることができず…。
・「第二十二話 オマエダケハ助ケテヤル」(「ヤングガンガン」2009年8号)
 雪乃の肩に乗り、心は蓋を持ち上げ、つっかえ棒をする。
 しかし、彼はつっかえ棒に足をかけ、雪乃に、助かりたければ、彼の質問に「ウソをつかない」よう言う。
 彼は、大人達が子供達を殺そうとする理由を問いただすのだが…。
 一方、初音、太、夢の三人は学園へ向かっていた。
 太が食料を探しに行った時、桑舘が現れ、太は人質となる…。
・「第二十三話 オレハ殺ッテナイ」(「ヤングガンガン」2009年10号)
 心は雪乃に保険金のこと、そして、島にいるはずの少女のことを問う。
 だが、いくら答えても、雪乃への不信感は高まるばかり。
 彼の決断とは…?
・「第二十四話 テン罰デシンジャウノ?」(「ヤングガンガン」2009年11号)
 心は皆の所に向かう。
 途中、彼は太を発見するが、彼は足を折っていた…。
 一方、夢と初音は、桑舘の気配を察知し、逃げようとするが…。
・「第二十五話 嘘ツキニハナリタクナイ」(「ヤングガンガン」2009年12号)
 心は桑舘と対峙する。
 桑舘の言葉の端々から、心は真実を見抜く…。
・「第二十六話 オモイ違イ」(「ヤングガンガン」2009年13号)
 無事に合流した子供達。
 彼らはトロッコで麓に降りる。
 海の彼方の水平線には、定期船が見える。
 心と初音は学園に行き、定期船を奪うべく、機会を窺うが…。
・「第二十七話 ホオズキノ島」(「ヤングガンガン」2009年14号)
 七年ぶりに島を訪れた少年少女達。
 廃校となったホオズキ学園を歩きながら、彼らは真相を語る…。

・「トガビト」(「ヤングガンガン」2007年2号/単行本A収録 )
「カスカは「トガビト」の少女。
 「トガビト」とは「自分の罪を償うために他人を裁く」犯罪者で、人々から忌み嫌われていた。
 ある日、彼女はビギットという青年に声をかけられ、昼食をご馳走になる。
 彼は弟のセレットは病弱で、夜はいつも熱を出し、昼間は家で本ばかり読んでいた。
 その夜、カスカはビギットに別れを告げた後、、連続女性殺人版「シザーファング」を捜して、倉庫街へと向かう。
 若い女性の悲鳴を聞き、彼女は犯人と対面するが、それはビギットであった…」

・「クワダテ 中学生」(「増刊ヤングガンガン」2008年Vol.4/単行本B収録 「鬼燈の島」番外編)
「桑舘は町会長の息子で、学校では生徒会長。
 非常に人望があったが、実は、女性の下着を集める変態であった。
 今日もいつものように、町内放送所に行く。
 一応の理由は放送委員だからであったが、その実は、そこで着替えをする、同級生の藤鼓の下着が目的であった。
 欲望に勝てず、彼女のパンツを履いた時、彼女が泳ぎから戻って来る。
 彼は彼女の下着をもとの位置に戻そうとして、様々なトラブルに見舞われることに…」

・「鬼燈の島外伝 ユキノ中学生」(「増刊ヤングガンガン」2009年Vol.6/単行本C収録)
「思春期真っ只中の甲斐雪乃。
 彼女は両親のことが嫌いであったが、本心は「わかって欲しい」。
 雪乃の隣には、幼馴染のマイという少女がいた。
 彼女は父親から暴力を受けており、学校をしばしばサボっていた。
 彼女の夢は美容師になることだが、高校に行くよう父親からうるさく言われる。
 そのことを相談された雪乃は何気なく「高校に行けば」と言うのだが…」

 子供を主人公に据えた「サバイバル・ホラー」としては、なかなかの面白さです。
 読み始めたら、一気に全巻読んでしまいました。
 興味のある方は、まずは何の先入観もなしに、まずはお読みになることをお勧めいたします。
 巻末のエッセー漫画「非日常的な日常」も、この作品の取材旅行が扱われていて、興味深いです。



 んで、以降の文章は、ネタバレを多く含みますので、お読みになった方限定です。
 三部けい先生はこの作品を「ミステリー」と捉えており、一応、全ての謎は明かされております。
 ただ、それでも「ミステリー」としては多少、厳しい点があるのではないでしょうか。
 特に、「文字の部屋」や「机の引出しの中の血」の説明はかなり無理があると思います。
 また、島にある「日本軍の毒ガス製造工場」が大して活かされないのは、ちょっと残念。
 結局は、大人・子供双方の「オモイ違イ」が全ての原因なのでありますが、虚言癖と大人不信のガキンチョ二人のせいでことがややこしくなって、結果、大人二人が死んでいるので、何かもやもやします…。
 無理に「ミステリー」としてまとめた印象が拭えない…というのが正直な感想です。
 と厳しい意見を書きましたが、溢れんばかりの緊迫感と閉塞感、それに、個性豊かなキャラは素晴らしいと思います。

2022年6月14・15・21・28・30日 ページ作成・執筆

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