日野日出志「幻色の孤島」(1972年10月1日初版発行)
収録作品
・「ぼくらの先生」
「ぼくらのクラスの先生は学校中の人気者。
子供が大好きで、気の優しい彼は、大きな体と額にあるホクロから大仏先生の愛称で呼ばれる。
また、無類の動物好きで、家で様々な動物がケージに飼ってある。
子供達から慕われる大仏先生であったが、彼の恐ろしい秘密とは…?」
・「おーいナマズくん」
「病弱で、気の小さい少年、鯰(ナマズ)太郎。
彼の実家のある村は、代々ナマズを神社にて祀っていた。
町の学校へ転校した彼は、名前を理由に、いじめられる。
夏休み、彼は、神社の裏手にある、なまず沼の畔で、神様に、皆を見返したい、もういじめられたくない、と願う。
すると、沼の主である、大ナマズが現れ、彼の身体に乗り移る。
大ナマズの助力を得て、太郎は身体を鍛え、自信をつけていく…」
・「かわいい少女」(「少年キング」1972年2号)
「古い民家や村の写真を撮るために、旅をしている青年。
道に迷った彼は、夕暮れ時に、ある村に辿り着く。
道を聞くために、彼がある家を訪ねると、少女が一人留守番をしていた。
両親が葬式から戻るまで、彼は囲炉裏のそばで待たせてもらうが、その間、少女は彼に村に伝わる伝説を語る。
昔、この村の人は足を怪我した老僧を手厚くもてなし、老僧はこの村の寺に住むようになる。
この老僧の不思議な力とは…?」
・「人魚」
「殿の命を受け、人魚を探す旅に出た侍、陣内。
彼は様々な艱難辛苦を乗り越え、蝦夷にある湖で、七年に一度現れるという人魚を目にする。
そして、彼は、人魚を詰めた樽を城に持ち帰るのだが…」
・「幻色の孤島」(1971年)
「気が付くと、男は奇妙な孤島にいた。
彼は記憶をなくしており、原色に彩られた風景の中をさ迷い歩く。
そのうちに、巨大な門を目にする。
門の周りには大きな石を積み上げた塀が続いており、その中には仮面を付けた人々が住んでいた。
男は門の内側に入ろうとするが、門の内側の人々は彼を攻撃する。
彼は、門近くに隠れ住み、ひそかに門の周辺を観察する。
だが、入り口は全く見つからず、彼は向こう側の世界への憧れと懐かしさを募らせていく。
門の向こう側にはどのような世界があるのだろうか…?」
・「ばか雪」
「車の運転手ばかりが狙われる、謎の連続殺人事件。
タイヤをパンクさせ、被害者が車から降りたところを犬か何かの獣で襲わせ、その後、死体から目玉をくり抜いていた。
刑事は聞き込みの結果、現場に犬を連れた少女がいたとの情報を得る。
吹雪の中、刑事達は少女を交通事故身障児福祉施設内に追い詰めるのだが…」
・「水の中の楽園」
「勉強地獄、公害、交通戦争、遊ぶ公園すら、ろくろくない世の中。
内気な少年、ケン一にとって、熱帯魚の水槽を前に空想に耽ることが唯一の楽しみであった。
しかし、現実は彼にそのささやかな楽しみさえ許してはくれず、彼は…」
・「つめたい汗」
「夏、暑さに苛立つ浪人。
一休みするために、茶屋に立ち寄るものの、彼の神経を逆撫ですることばかり。
遂に、我慢の限界に達した浪人は、彼を小バカにした雑夫を斬り捨てるのだが…」
恐らく、「地獄の子守唄」(ひばり書房黒枠)に次ぐ、日野日出志先生にとって二番目の単行本なのではないでしょうか?(もしかしたら、順番が逆かもしれません。間違っていたら、ごめんなさい。)
この単行本ではヒバリ書房の単行本では読めない「ばか雪」と、名作「水の中」の前身「水の中の楽園」を読むことができます。
ヒバリ・ヒット・コミックス版では、上述の二作が削られ、その代わりに「猟人」が加えられております。
あと、特筆すべきことは、カバー裏のヤクザ映画のポスターを模した、日野日出志先生の自画像(?)でありましょう。(当時の空気を感じます。)
ジャケットは味わい深いし、袖の若かりし頃の日野日出志先生もカッコいいし、装丁までバッチリきめているのは、やはり、虫プロだからでしょうか。
・備考
背表紙、若干色褪せ。
2018年1月29日 ページ作成・執筆
2023年1月27日 加筆訂正
2023年11月30日 加筆訂正