御茶漬海苔・他「怪奇幻想館 VOL.1 死の教室」(1996年4月5日初版発行)

 収録作品

・御茶漬海苔「死の教室」
「日高中学校1年B組。
 バカ子は一ノ瀬奈々のグループから執拗ないじめを受けていた。
 先生も助けてはくれず、バカ子は絶望を深める。
 ある日の教室、バカ子は奈々の目前でカッターで首を斬る。
 血を迸らせながら、バカ子が奈々の頬に両手を伸ばすと、怯えた奈々はバカ子の左目に鉛筆を突き刺す。
 バカ子の死は自殺として処理されるが、以来、奈々にバカ子の幻影が付きまとい…」

・千之ナイフ「endless」
「少女は気が付くと、夜の高校にいた。
 それからずっと、時々襲ってくる黒い犬から身を隠しながら、朝の訪れを待つ。
 図書室で一息ついていると、そこには一人の女子生徒が本を読んでいた。
 彼女がとっくに朝は来ていると言うと、どこからか笑い声が聞こえる。
 人を探して、図書室をとびだすが、廊下で化物に襲われ、少女は右手を食いちぎられる。
 教室に逃げ込んだ彼女はどうしてこんなことになったのか考えるのだが…」

・河口直史「物憂げなシルエット」
「インターハイ常連校のバレーボール合宿。
 練習はきついが、一年生の利恵は元気いっぱい。
 彼女は中学の時は名セッターとして活躍し、高校では期待のルーキーとして注目されていた。
 だが、彼女と同室の村田は、夜中、彼女が寝言で「やめたい」と繰り返すのを耳にする。
 そして、村田は廊下と遮るカーテンに何者かの影を見る。
 翌日、練習中に利恵は過労で気絶する。
 彼女を診ながら、医務室の先生は十数年前にあった滄溟学院の事件を口にする。
 その事件とは…?」

・空路「夜の吐息」
「ある学校で、夜中に、白い影が校内をうろつくという噂が広まる。
 三人の生徒(男二人・女一人)がその噂に興味を持ち、夜の学校に確かめに行く。
 校内を探索していると、廊下の奥から足音が聞こえてくる。
 それは警備員のおじさんであった。
 警備員さんと別れ、ほっとした矢先、彼らの前に奇怪な女性が現れる…」

・亜鳥水架「死のない男」
「祐二は病弱な少年。
 姉は彼のことを心配し、絶えず気を配ってくれる。
 祐二はそんな姉を慕うが、姉の恋人の保が目障りで仕方がない。
 ある日の夕方、家をとび出した祐二は、ヴィジュアル系な恰好をした男と出会う。
 男は、祐二の願いを叶える代わりに、その身体を望み、祐二は契約を交わす。
 その直後、男は刃物で自分の首を斬り落とし、祐二は失神。
 祐二は、五日間の昏睡の後、目覚めるが…」

・かとう・えむ「死ぬまでゲーム」
「学校での夏期講習。
 クーラーなどなく、皆、暑さにクラクラヘロヘロ。
 そんな時、学校の屋上から女子生徒が跳び下り自殺をする。
 女子生徒の跳び下り自殺はこれで三件目であった。
 教室は大騒動になるが、レイという女子生徒は小野田という女子生徒が笑っているのに気づく。
 翌日、小野田と仲良く話をしていた女子生徒がまたもや跳び下り自殺。
 小野田はやはりどこか楽しげであった。
 レイが小野田をひそかに観察すると…」

・黒川八詠子「いたづら」
「大地という少年はもうすぐお兄ちゃんになるが、それが嫌で仕方がない。
 彼は臨月の母親を病院に行かせまいと、仮病を使う。
 だが、そんな彼に外から三人の子供がいたずらをする。
 そのせいで、仮病がばれ、更に、母親は産気づき、病院へと運ばれる。
 一人になった彼はいたずらっ子達を追いかけるのだが…」

・田中聖人「おいしい店」
「三人の女子高生があるレストランを訪れる。
 ここはどの料理もおいしく、客は女の子ばかり。
 あまりにおいしく、彼女達は他のものを食べる気がせず、連日、レストランに行く。
 だが、レストランの食事しか食べないせいで、彼女達はやつれていく。
 病気になるのも嫌なので、一人はムリヤリ昼の弁当を食べようとするのだが…」

・石川若菜「好きだけど好きじゃない」
「ある中学校。
 クラスメートの木戸は中学校の人気者で、女子からモテモテ。
 竹内園美は彼のことをどうとも思っていないつもりであったが、ある日、彼から告白される。
 彼は、戸惑う彼女を、明日の夜、校舎の屋上でする花火大会に誘い、明日、教室で待ち合わせようと言って、立ち去る。
 彼女の揺れる心に、過去に後追い自殺をした女子生徒の霊が囁きかけ…」

・赤池好美「害虫駆除」
「有希先輩は、転入して間もないのに、園芸部の部長に選ばれる。
 彼は眉目秀麗、容姿端麗で女生徒の憧れの的となっていたが、当然、男子生徒の中には嫉妬をする奴らが多かった。
 清水をはじめとする連中は有希への嫌がらせとして、園芸部の花壇を荒らすだけでなく、有希の家の植物室の破壊をもくろむ。
 晩、清水が有希の植物室へ仲間の様子を見に行くと…」

 学園ホラーをテーマにしたアンソロジーですが、学校が関係ない作品もあり、おいおい…って感じです。
 有名作家よりもマイナー作家の作品の方に味わい深いものが多く、個人的なベストは黒川八詠子先生の心温まる「いたづら」。すっきりとまとまった好短編です。
 また、赤池好美先生「害虫駆除」は長田ノオト先生の絵をプリミティブにした感じ(個人の感想)で、魅せられます。

2023年2月17日 ページ作成・執筆

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