御茶漬海苔「怪奇オカルト倶楽部@」(1994年9月30日初版発行)

 小高い丘に建つ館。
 ここでは「オカルト倶楽部」が開催される。
 主催者は老人二人と老婆が一人。
 さて、今回のゲストは…。

・「アレキサンダ大王の壺」
「今日のゲストは政治家の火虎。
 そして、出し物は「アレキサンダ大王の壺」。
 この壺の中に願いを唱えると、どんな願いでも叶うと言われているが、真偽の程はわからない。
 火虎は勧められ、首相になって、国と人々を支配したいと願うのだが…」

・「西太后の子猫」
「今日のゲストは女優の姫王。
 そして、出し物は「西太后の子猫」。
 昔、中国の西太后は不老不死を得るため、最高の漢方師を集め、不老不死の薬を作らせたが、その時、実験台になったのがこの子猫であった。
 言い伝えでは、この猫を鍋で煮込み、そのスープを濾すと、いっぱいのエキスが得られ、それを飲むと、不老不死になると言う。
 倶楽部が終わった後、姫王はマネージャーの山本に命じ、子猫を盗ませる。
 その夜、ホテルで彼女は子猫からエキスを抽出するのだが…」

・「アルプスの砂時計」
「夜、曲がりくねった険しい坂道。
 ある男の運転する車はカーブを曲がり切れず、通りがかりの自転車の女子学生を巻き添えにして崖下に転落する。
 かろうじて無事だった男は助けを求め、ある屋敷にたどり着く。
 そこにはオカルト倶楽部の面々が集まっていた。
 今日の出し物は「アルプスの砂時計」というものなのだが…」

・「ショートホラー小説劇場@ 水死体」
「嵐で船が沈没し、一組のカップルが海を漂流する。
 彼氏の方は彼女を励ますが、彼は頭に大けがをしており、次第に力尽き、海に沈む。
 夜の海に残された彼女も数時間後には体力の限界に達し、気を失いそうになったその時…」

・「ヒットラーの秘薬」
「雲田雨子は明を心から愛していたが、彼は他に女ができて、彼女を捨てる。
 傷心の彼女は浴槽で手首を切るも、発見され、病院で手当てを受ける。
 夜、彼女は病院を抜け出し、辿り着いたのが、丘の上の館であった。
 そこでは「オカルト倶楽部」が開催されており、出し物は「ヒットラーの秘薬」。
 これを飲めば「人間のあらゆる記憶を消すことができる」というのだが…」

・「ハイドの箱」
「今日のゲストは、四歳の純子が行方不明になった夫婦。
 そして、出し物は「魔術師ハイドの箱」。
 ハイドは世紀の大魔術師で、この箱からは出せないものはないと言われていた。
 老人達に勧められ、妻がこの箱を開けると、中から純子が現れる。
 妻は大喜びだが、夫の顔色は冴えず…」

・「ショートホラー小説劇場A 列」
「渋谷を歩いていると、行列を見つけた。
 興味を持ち、会社も終わっていたので、並んでみる。
 列は地下に続き、何時間待っても、目的地に着かない。
 行列は地下の奥深くに続いていて…」

・「モーツアルトの手鏡」
「今日のゲストは作曲家の佐木。
 彼は玉置とのコンビでヒット曲を連発していたが、自分の力を試すため、独立する。
 だが、実力は玉置の方が遥かに上で、彼への仕事は減りつつあった。
 そんな彼の前に、「モーツアルトの手鏡」が出される。
 これを覗けば、名曲が書けると言うのだが…」

・「ショートホラー小説劇場B 毒針人間」
「17歳の高校生。
 ある日、彼は右の掌に針が生えていることに気づく。
 この針は毒針で…」

・「妖術師ダイラのカメラ」
「今日のゲストは犬山財閥当主の孫、三郎。
 そして、出し物は「妖術師ダイラのカメラ」。
 これは百年前に妖術師ダイラが作ったと言われるカメラで、一人一回のみ、撮った人物を呪い殺すことができた。
 閉会後、三郎はカメラを盗み出す。
 年に一度の家族会議の際、彼はそのカメラで自分の家族を写すのだが…」

・「霊能者ノーマンダの電話」
「今日のゲストは山城涼。
 彼は、金持ちの女性、麗花と財産目的で結婚するが、財産の隠し場所を見つける前に、麗花は転落死してしまう。
 財産を見つけ出そうと目論む彼の前に、「霊能者ノーマンダの電話」が出される。
 これは霊界と通じる電話というのだが…」

・「妖精魔人族の首」
「今日のゲストは、帝王大学始まって以来の天才を言われる大金寺。
 彼は北森雪子に惚れていたが、彼女は彼になびかず、プライドを傷つけられていた。
 出し物は「長野県妖精村につたわる妖精魔人族の小屋とその場所を記した地図」で、この小屋に住む妖精の首を食べると、願いが何でも叶うと言われる。
 彼は地図の妖精語を解読し、長野県妖精村に向かう。
 そして、祠の奥に目的の小屋を見つけるが…」

・「催眠術師ミントの振子(前編)」
「森村ゆかりは女優の卵。
 彼女は演劇研究所に所属し、友人の青木沙夜とマンションの一室をルームシェアしていた。
 ある夜、彼女は、自分が想いを寄せている先輩の緒方純と沙夜が付き合っていることを知る。
 ゆかりは沙夜から婚約したことを知らされ、飲もうと表に彼女を連れ出したところ、車が突っ込んでくる。
 沙夜がかばってくれたお陰で、ゆかりは無事であったが、沙夜は死亡。
 緒方の悲しみは計り知れず…」

・「催眠術師ミントの振子(後編)」
「オカルト倶楽部で紹介された「水晶の振子」。
 これは今世紀最高の催眠術師ミントが使っていたもので、どんな人でもこの振子を使えば催眠術がかけられるという。
 そして、その術を解くには、もう一度振子を振るだけで良かった。
 ゆかりはこの振子を使い、自分が緒方には沙夜に見えるよう術をかけるのだが…」

・「ソラリスの絵」
「今日のゲストは外田政男総理。
 彼はマザコンで、勉強以外は何もできず、のっぴきならない状況にあった。
 彼の前に出されたのは「ソラリスの描いた絵」。
 この絵には見ていると、心が安らぎ、この世の嫌なことを全て忘れるという不思議な効果があった。
 外田がこの絵をじっと見ていると…」

 御茶漬海苔先生の本領は何と言っても「切れ味鋭い短編」にあると考えておりますが、それを堪能できるのが「オカルト倶楽部」シリーズです。
 奇抜な設定をラストでさらりとまとめる手腕は非常に巧みで、スプラッター描写が控えめな分、純粋にストーリーを楽しめます。
 個人的に出来がいいと思うのは、「アルプスの砂時計」「妖術師ダイラのカメラ」「妖精魔人族の首」。
 特に、「妖精魔人族の首」は「奇想・グロ・インパクト」と三拍子揃った傑作です。
 ちなみに、二巻は出なかった模様です。

2023年3月7・8日/4月9日 ページ作成・執筆

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