いなずまたかし
「クビカリ@」(2023年7月28日初版第一刷発行)
「クビカリA」(2023年8月31日初版第一刷発行)
「クビカリB」(2023年9月28日初版第一刷発行)
「クビカリC」(2024年3月29日初版第一刷発行)


単行本@
・「第1話 首狩峠」
 鳥飼高校のソーシャル・メディア研究部。
 部員は五名で、詳細は以下の通り。
 カスガ〜女部長。動画作成のことしか頭にない。
 ミナミ〜グラマーな美少女。動画ではお色気担当。
 アイカワ〜眼鏡の才媛。地味。
 キリシマ〜撮影担当の少年。気が弱く、カスガに顎で使われる。黒いマスクをつけている。
 マジマ〜ガタイのいい兄ちゃん。
 彼らは動画配信を行っており、冬休み、心霊スポットで撮影することとなる。
 撮影場所は雨備狩峠、通称、「首狩峠」であった。
 雪の降る日、彼らはマジマの運転する車で峠の奥にある洋風のホテルを訪れる。
 ここは今年いっぱいで閉館となるため、従業員は支配人の飯田という老人しかいなかった。
 また、宿泊客は彼らとライターの八代だけであった。
 カスガたちは首狩峠には首なし幽霊がでると思っていたが、八代はそれを否定する。
 ここは連続失踪事件の現場であった。
 何故かこのあたりの集落が危機を迎える度に、六人、失踪者が出て、その後、首なし死体で発見される。
 しかも、このあたりには「龍源安六将」という首を祭る風習があったらしい。
 皆、彼の話を本気にしないが、カスガは興味を持ち、八代の部屋に出かけ、もっと話を聞こうとする。
 そこで目にしたものとは…?
・「第2話 犠牲者」
 八代の首なし死体。
 電話は通じず、いつの間にか彼らのスマホは盗まれていた。
 車はタイヤに鉈を叩きこまれ、どのみち、この吹雪の中では運転もできない。
 殺人犯はまだ館の中にいる…。
・「第3話 籠城」
 とりあえず、彼らはホテルのロビーで朝が来るのを待つ。
 カスガは後々証拠になるかもしれないという理由でカメラを回し続けるが、ミナミはそういう態度が一々気に障り、遂に爆発してしまう。
 ミナミはロビーをとび出し、マジマは彼女を追うが…。
・「第4話 罠」
 ミナミとマジマは窓の外に人影を見る。
 マジマは武器を振りかざして外に出るが、突如、姿を消す。
 ミナミはカスガたちのもとに戻り、彼を捜しに行くのだが…。
・「第5話 疑惑」
 新たな犠牲者の発生。
 カスガはキリシマがずっとビデオを回し続けていたことに気付き、映像をチェックする。
 その映像をチェックした後、彼女は彼に質問をするのだが…。

単行本A
・「第6話 探索」
 今のところ、最も怪しいのは支配人の飯田であった。
 カスガは見晴しのよい二階で見張ることを提案する。
 二階は長い間、閉鎖されており、人が立ち入った形跡がない。
 まず、四人は特別室のような部屋に入る。
 部屋の中は真っ赤に塗られていた…。
・「第7話 赤い部屋」
 特別室に続く部屋にも入る。
 そこも同じように赤く塗られていた。
 部屋に入ると、「ヴヴヴヴヴ」と奇妙な音がする。
 そして、キャビネットには首なしの西洋人形が飾られていた…。
・「第8話 トラップ」
 赤い部屋に仕掛けられていたトラップにより、カスガは重傷を負う。
 他の皆は慌てるが、トラップはそれだけにとどまらなかった。
 これにより、この館はどう考えても普通ではないと皆、思い知らされる。
 そういう非常事態なのに、仲間割れが発生し…。
・「第9話 因縁」
 ミナミとアイカワが反目を強めていく中、キリシマは行方不明の飯田に助けを求めようと提案する。
 彼は小学二年生までこのあたりに住んでいて、飯田には優しいイメージを持っていた。
 しかし、支配人の飯田はどこに…?
・「第10話 支配人」
 彼らがまだ捜していない場所…それは地下。
 地下に空間があるようだが、降りる場所は見当たらない。
 キリシマは飯田以外にも誰かいるように思うのだが…。

単行本B
・「第11話 遭難者」
 決定的なことが起こり、皆、疑心暗鬼の虜となる。
 ミナミは刃物を手に自室に閉じこもり、更に、カスガは高熱を出してダウン。
 アイカワは誰も信じることができず、一人きりになる。
 そんな時、館に二人の男が助けを求めて訪れる。
 彼らは車がエンストし、館の灯りを頼りにここまで来たのであった。
 アイカワは彼らにここで起こっていることを説明し、彼らはロビーより奥には行かないことを約束するのだが…。
・「第12話 始末」
 アイカワは医務室に行き、カスガに付き添っているキリシマに遭難者のことを報告する。
 キリシマは二人の男に対して疑惑を抱き、皆で固まった方がいいとミナミを呼びに行く。
 その頃、二人の男はこの洋館について話をしていた。
 そのスジではこのホテルは有名なようだが、ここにまつわる噂とは…?
・「第13話 暗闇」
 突如、起こった停電。
 アイカワは暗闇恐怖症で固まっていると、キリシマが声をかけてくる。
 彼の声は切羽詰まっており、顔を上げると、ロビーが火に包まれていた。
 キリシマは火を消しにロビーにとび込むのだが…。
・「第14話 籠の鳥」
 カスガはやはり、皆、一緒にいようとミナミに声をかけに行く。
 だが、アイカワは絶対にミナミと顔を会わせたくなかった。
 彼女が一人ロビーに残ると、どこからかスマホの着信音が聞こえてくる。
 音は木製のロッカーの中から鳴っているのだが…。
・「第15話 襲撃」
 ミナミは自室で一人、息を潜めて、様子を窺っていた。
 彼女の考えでは犯人はキリシマかアイカワのどちらか。
 どちらだろうと、部屋の中に入ってきたら、躊躇なく刺す。
 すると、廊下で何者かの足音が聞こえ、彼女の部屋をノックする…。

単行本C
・「第16話 狂乱」
 キリシマはチェーンソーを手に襲いかかってくる。
 カスガとミナミは何とかまこうとするも、外に逃げ場はなく、館に隠れるしかない。
 その間にもキリシマが刻一刻と迫ってくる…。
・「第17話 呪詛」
 キリシマがミナミを殺そうとする理由。
 それは彼のトラウマと深い関わりがあった。
 時が彼の心の傷を癒してくれたのだが、彼の心の傷が再び開いた時…。
・「第18話 幕切れ」
 キリシマはカスガとミナミを地下室に追いつめる。
 彼の復讐は果たされるのであろうか…?
 だが、最後に意外な事実が明らかとなる。
 生き残るのは誰…?
・「第19話 考察」
 ある居酒屋で甲栄大の映像研究部が飲み会をする。
 彼らはそこで「首狩峠の洋館」の映像を見て、それぞれが感想や批評を述べる。
 しかし、これはフィクションではないかもしれないと言われ、場に緊張が走る。
 彼らは問題点を明らかにして、真犯人を暴こうとするのだが…。
・「第20話 終幕」
 実際の現場を確認するため、甲栄大の映像研究部の面々は首狩峠の洋館を目指す。
 そこで目にしたのは…。

 タイトル通りに、猟奇的な描写の多いホラー・ミステリーです。
 興味深いのは、終盤が「メタフィクション」構造になっていて、第三者が真犯人を推理するという展開になっている点です。
 そこで本当の真犯人について明かされますが(注1)、よくよく考えると、いろいろとムリがある気がします。
 また、「龍源安六将」についての説明がほとんどないのも片手落ちだと思います。
 ただ、後半、チェーンソーでの残酷描写があるので、そういうのが好きな人の琴線に触れるかもしれません。
 ですが、私はチェーンソーをよく使う仕事をしておりますので、幾つかの描写が引っかかりました。(注2)
 と、まあ、惜しい点が幾つもありますが、力作だと思います。
 展開は非常にスピーディなので、一気読みして楽しむぶんにはいいのではないでしょうか。

・注1
 ミステリーでよくある「事件が解決したかと思ったら、実は本当の真犯人がいました」というパターンは何か名称があるのでしょうか?
 個人的には、この手の作品は「シーラ号の謎」がまず頭に浮かびます。
 マイナーですかね…。

・注2
 まず、チェーンソーは素人が簡単に扱える道具ではありません。
 起動も簡単にはいかないし、かなりの重量があるので、ぶんぶん振り回すにはしんどいものがあります。(また、振り回すと、キックバックが危険です。)
 次に、チェーンソーって実は簡単に止まります。
 ソーチェーンのはまっている回転部分に繊維状、もしくは紐状のものが絡まると、すぐに動かなくなります。
 この作品では人を服の上から切ってましたが、この場合、チェーンソーは使えなくなるのではないでしょうか?
 三つ目に、チェーンソーの刃は一つ一つが小さな鉋(かんな)になってます。
 鉋を高速回転させて、木を削って切るわけです。
 そういう仕組みですので、人体を一瞬でスパッと切ることはできないと私は考えてます。(実際に試したわけでないので、断言はできませんが…。)(注3)
 あと、タンスのシーン、チェーンソーの刃、向きが逆じゃないかな?
 この向きだとチェーンソーを上下逆さまに持たないといけない気がします。
 それと、チェーンソーって騒音が凄いので、使うとすぐに気づかれると思います。

・注3
 そう言えば、チェーンソー・スラッシャーの最高峰「ブラッド・ピーセス 悪魔のチェンソー」では片腕を一発で切断してました。
 あの映画は(残酷シーンのみ)見せ方が上手いので、なかなかの迫力です。

2025年2月15・17・18日 ページ作成・執筆

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