外薗昌也・原作/高港基資・作画「黒異本」(2015年7月21日初版発行)

・「その1 独居死」
「2006年2月。東京近辺のB団地。
 住宅設備会社に勤める男性がこの団地にドアガード取替え工事に訪れる。
 他にもう一つ仕事があり、それは独居死の疑いのある部屋の確認作業であった。
 四階のある部屋は若い太った男性が一人暮らしをしていたが、ドアに郵便物が溜まり、部屋を外から見ると、窓のあたりが黒い。
 管理人にマスターキーをもらい、中に入ると、熱気がこもり、何かが燃えた臭いがして、至る所、煤だらけ。
 ボヤでも起こしたのかと思い、奥に進むと、酒瓶や空き缶が大量に置かれた床に焼死体が転がっていた。
 焼死体は焼けたところと焼けてないところがあり、男性は不自然に感じる。
 その時、焼死体が目を開き…」

・「その2 赤鬼」
「1977年10月。埼玉県。
 少年は中内という少年と親友であった。
 ある夜、少年は奇妙な夢を見る。
 中内の家で遊んでいた時、部屋に包丁を持った赤鬼が入ってくるというものであった。
 翌日、中内と会うと、彼は普段通りで少年は安心する。
 しかし、その日を境に中内は徐々に変わっていく。
 まず、彼の身体が汚れていき、遂に、身体が崩れ始める。
 そして、卒業式を迎えるころには、彼は人間の形をとどめていなかった。
 その日、中内は少年に引っ越すことを告げる。
 中内は母親に連れていかれ、少年が泣きながら彼の名を呼ぶと…」

・「その3 妹」
「1983年。大阪。
 小学3年生のクミは気が弱く、同級生からいつもいじめられていた。
 ある日曜日、クミと姉(小学六年生)は家で「こっくりさん」をする。
 姉は十円玉から指を離さないよう念を押すが、クミはこっくりさんに夢中になり、うっかり指を離してしまう。
 姉がクミに注意すると、一瞬、クミの顔がぶれて見える。
 クミは十円玉に指を戻し、こっくりさんを再開すると、クミはいじめっ子がいつ死ぬか質問する。
 こっくりさんは8歳と答え、クミは嬉しさを抑えきれずに笑い出すが、その顔は別人であった。
 姉はこっくりさんに帰ってもらおうとするのだが…」

・「その4 2F」
「2007年。神奈川県。
 ある六階建てテナントビルは二階だけが何故か封鎖されていた。
 三階の塾が四、五階まで拡張することとなり、四、五階の改装と四階にあったラーメン屋の倉庫を二階に移すこととなる。
 住宅施工会社の男性二人がこの工事を担当するが、現場にはよく子供たちが出没する。
 どうやら塾に通う子供たちらしい。
 親方の男性は中でもある女の子と仲良くなり、階段で会うと他愛のない話などをする。
 施工から二週間後、作業員は猛烈な腹痛に襲われる。
 二階のトイレは絶対に使用禁止と言い渡されていたものの、背に腹は代えられず、彼はそのトイレで用を足す。
 そこで彼が見たものとは…?」

・「その5 ベビーカーの女たち」
「2012年。埼玉県。
 サラリーマンの男性が車で昼食に出かける。
 途中、信号待ちをしていた時、彼はベビーカーを押す二人の女性を見かける。
 彼女たちは頭を前後に振り続け、ひたすら許しを乞うていた。
 しかも、ベビーカーには人形が乗せてあり、どう見ても、尋常ではない。
 それなのに、女たちのすぐそばにいる若いカップルは見向きもしなかった。
 その帰り道、同じ信号で停まると、パトカーや救急車が来る騒ぎになっていた。
 若いカップルの女の方が急に頭を振って暴れ出し、制止しようとした彼氏の鼻を食いちぎり、両目を抉ったのだという。
 帰社した後、社長はあの信号のある通りに昔、脳病院があったと話してくれるのだが…」

・「その6 障り・前編」
「2010年頃。ある青年が付き合っていた美佳という娘から聞いた話。
 七年前、彼女の叔父はある金持の家に婿養子に入り、父娘と同居する。
 その家は豪邸で、犬好きの叔父は広い庭を利用して、犬の繁殖販売を始める。
 ところが、結婚してからすぐにトラブルが発生。
 義父は知的であったが、奇行が目立つようになり、医者から認知症と診断される。
 認知症は悪化し、一年後、全裸で国道を徘徊していたところを車に撥ねられ亡くなる。
 その次には、妻の様子がおかしくなり…」

・「その7 障り・後編」
「ある日、美佳は叔父のいる豪邸を訪ねる。
 門のチャイムを押しても、誰も出てこないので、中に入ると、屋敷は荒れていた。
 犬の鳴き声が聞こえ、裏に回ると、空っぽのゲージが散乱し、まるで廃墟のよう。
 更に、穴が掘ってあり、そこから強烈な悪臭がする。
 突然、叔父の妻の声が背後から聞こえ、美佳は振り向き、叔父の妻の姿を捜す。
 そこで美佳の見たものとは…?
 そして、穴の中には何があるのだろうか…?」

・「その8 黒い団地」
「ある工務店の社長と新人の竹田が東京近郊のB団地を訪れる。
 彼らの仕事は若い夫婦の部屋のサッシを全て新品に取り換えること。
 工期は二日で、二人だけではキツい仕事であったが、二日目、その部屋の奥さんが突如、竹田をここから追い出すよう命令する。
 あまりの剣幕に社長は竹田を別の現場に回し、自分一人で工事を完了させる。
 その夜、社長が竹田から事情を聞くと、彼は奇怪な話を語る。
 彼が作業していた部屋には布で覆われたタンスのようなものがあった。
 その中から「バサッ」という音が断続的に聞こえてくる。
 気になり、彼が覆いの布をめくると、それは仏壇であった。
 そして、仏壇の中には…」
(「月刊キスカ」2014年12月号〜2015年7月号)

 高港基資先生と外薗昌也先生がタッグを組んだ最初の作品です。
 「あとがき」によると、原作の時にもいろいろあったそうですが、漫画化の際には高港先生にトラブルが起こったとのこと。
 祟りなのかどうかは判断できませんが、原作がストロング・スタイルなだけあって、かなり読みごたえがあります。
 個人的には、ハートウォーミングな「赤鬼」と犬神をテーマにした「障り」が優れていると思います。
 「障り」はガチヤバで、確かに祟られてもおかしくないかな。(後編のラスト・ページ、やめて…。)

2024年1月24・26日 ページ作成・執筆

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