井出智香恵「闇のレジェンドA」(1991年7月15日初版発行)

 アルケウス(精霊石)とは処刑された魔女の子宮から取り出された生命の種
 その種を飲んだ少女、麻百合はいま魔女となり、今日も闇の伝説の中をさまよっている…(本文より引用)

・@「アゲイン」
「山本久美子には、前世の記憶があり、自分は能勢香織だと主張する。
 また、彼女は夢で、ある光景を視る。
 それは、ある家の居間の暖炉の裏に秘密の地下室があり、そこに腐乱死体が四体(大人の男女が二体、子供の男女が二体)横たわっているというものであった。
 ある夜、彼女を、小川勇という青年が迎えに来る。
 彼も、久美子と同じく、前世の広野卓巳としての記憶があり、夢の地下室を知っていた。
 二人はテレパシーで連絡を取り合い、夢に出てくる家を調べようとする。
 すると、二人の前に、麻百合という少女が現れる。
 麻百合は「アゲイン(再生)」した人物に興味があると言い、過去を知ることは同じ運命をもう一度繰り返すことになると警告する。
 しかし、久美子を狙っている何者かがいて、二人はそのまま家に戻るわけにはいかない。
 その者はかなりの力を持つ超能力者で、麻百合は異次元に飛ばされてしまう。
 一方、久美子と勇はその家を発見し、地下室に足を踏み入れる。
 彼らの前世とは…?
 そして、前世の彼らを殺した者の正体は…?」

・A「メトセラ」
「樋野沙世子(22歳)は保育園の先生。
 彼女は子供が好きであったが、保育園の先生になったのには別の理由があった。
 彼女はエンゼル一族の娘で、メトセラ(聖書に出てくる969歳生きた人)の生まれ変わりを殺す宿命だと両親から教えられる。
 メトセラは、堕天使ルシフェルが人間に化けたもので、エンゼル一族に処刑されたが、近い将来生まれかわると予言されていた。
 ある日、かすみという少女がメトセラについて聞きに来る。
 沙世子が訝っていると、かすみの背後を「悪魔の影」が見える。
 意を決し、その夜、沙世子はかすみの家に忍び込み、就寝中の彼女に短剣を突き刺すのだが…」

・B「オカルト・パーティ」
「インド人を曾祖父に持つ佐木真羽也(さき・まはや/29歳)。
 彼は咲世という女性と結婚を考えているが、ある夜、奇妙な夢を見る。
 夢の中で、ナラヤンラブという者が、彼の先祖に殺された憎しみで今も祟っており、もう一度バジラブ二世と同じことをして自分を供養するよう警告する。
 気になり、図書館に行って、自分の先祖について調べようとすると、麻百合という少女が、バジラブ二世について書かれた本を持って来る。
 本によると、バジラブ二世は約300年前の、インドのある地方の王様であった。
 彼は即位後、奇怪な夢に悩まされるが、それは、父親が処刑したナラヤンラブという罪人が、呪いを受けたくなければ、10万の亡霊を呼んで大宴会を開いて、供養しろと迫る内容であった。
 そして、王はナラヤンラブの要求に応え、その呪いを解き、一族の繁栄を約束させてと言う。
 しかし、何故、今頃になってナラヤンラブが、よりによって真羽也に再供養を望むのかがわからない。
 そこで、麻百合と真羽也はバジラブ二世の時代に飛ぶ。
 過去を覗くと、パーティは成功だったが、ナラヤンラブが本当に望むものは用意できなかったらしい。
 大宴会の目的とは…?
 そして、ナラヤンラブの正体は…?」

・C「エルドラド」
「麻百合は、入水自殺を図った知比呂という娘を助ける。
 彼女から事情を聞くと、両親が彼女を顧みなくなったためと話す。
 ことの発端は、彼女の両親は、南米にエルドラドの遺跡を捜しに行ったことであった。
 二人はジャングルの奥地でそれらしき遺跡を見つけ、何かの小さな生き物を持って帰る。
 以来、家の地下室でとても大切に育てているが、地下室の鍵は父親が厳重に保管し、知比呂はそのペットが何なのかは知らない。
 麻百合は知比呂を助けると約束し、彼女の家に連れて行ってもらう。
 そこで、麻百合は、知比呂の母が、植物人間だった自分を捨てた、実の母親だと気付くのだが…。
 この家の地下室にいる「あの子」の正体とは…?」

・D「アポーツ」
「水泳部員の晃一は、プールでの練習中に意識を失い、何度も溺れる。
 彼が泳いでいると、女性の声に誘われ、不思議な世界に行ってしまうのであった。
 大きな瓦礫の向こうから「アポーツをくりかえして 私の中へ」という声が聞こえるが、一体どういう意味かわからない。
 晃一を愛する有馬清子が悲しんでいると、魔女を名乗る麻百合という少女が現れる。
 麻百合によると、プールができる前にあった洋館に住んでいた女性が何らかの鍵を握っているらしい。
 その女性は逆崎不美という名で、莫大な資産を持ち、数多くの男と浮名を流していた。
 実は、不美は魔界から魔法書を盗んでおり、一人の魔女が彼女を追うが、その洋館で忽然と消え、以来、消息不明となる。
 しかし、麻百合は不美の気配を晃一から感じていた。
 不美はどこに潜んでいるのか…?
 そして、不美の目的は…?」

・E「サバト」
「橋口雄介(19歳/K大生)の妹、留衣は癌で早世する。
 彼女の遺言は、遺灰を、どこか高いところから町の上に撒いて欲しいというものであった。
 雄介が彼女の遺言を実行に移すと、彼の前に、魔女を名乗る麻百合という少女が現れる。
 勇介が下に降りると、待っていたはずの恋人の沙川真世子の姿がない。
 麻百合によると、妖魔の灰の直撃を受けて、心を支配されたと言う。
 彼女に案内され、町に行くと、町の人々が夢遊状態でどこかに向かっていた。
 麻百合は留衣の部屋で黒魔術の本を調べるが、その本は、多くの魔女を処刑した裁判官、ドランクルの著作であった。
 しかも、ドランクルは、沙川真世子の遠い先祖で、本には資料として「アルケウス(精霊石)」が添付されていたらしい。
 麻百合は、留衣がアルケウスを飲み、魔女としての力を手に入れたのではないか?と考える。
 そこで、麻百合と雄介は急いで、町の人々が集まる、町はずれの城の廃墟に向かうと、そこではサバトが開かれていた。
 儀式を司っていたのは…?」

 バラエティの豊かさで意外と読ませます。
 正直、荒唐無稽な内容ではありますが、「理屈じゃないんです!!」(by「俺がハマーだ」)
 読者を楽しませるためにはなりふりかまわない姿勢…そこが面白さの秘密ではないかと私は考えております。
 あと、表紙で、麻百合のそばにいる魔女らしき女性は誰なんですか?

2021年11月26日 ページ作成・執筆
2022年1月28・30日 加筆訂正

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