わたなべまさこ
「あやかしの伝説」(1982年7月10日初版発行)
「妖狐伝説」(1986年12月30日初版発行)

 西暦紀元前一千年の昔。
 白面金光、九尾の尾を持つと言われる妖狐が天竺(インド)に現れ、民衆を苦しめる。
 天竺、中国、日本と様々な時代と国で暗躍した妖狐が残した伝説とは…。

・「第1話〈天竺編〉悪魔の化身華陽夫人」
 石工、タヤクの孫娘、カヨウと、タヤクに拾われた孤児のヒンドーラは相思相愛の仲。
 だが、優しかったカヨウは、妖狐に憑りつかれ、すっかり変わってしまう。
 時に、王子、班足(ハンソク)太子の婚礼があり、カヨウは、急死したタヤクに代わり、石飾りを王宮に届ける。
 その際、屯天沙朗(じゅんてんしゃら)大王はカヨウに心を奪われ、彼女のことが頭から離れない。
 カヨウは大王に簡単にはなびかず、大王に第一夫人を殺害させ、その座を得る。
 更に、カヨウは、班足太子の婚約者、ラーダを破滅させ、班足太子をも籠絡する。
 一方、ヒンドーラは、カヨウが大王の第一夫人となっても、彼女のことが忘れられない…

・「第2話〈中国編〉妖気ただよう美女妲己(だっき)」
 殷の国、紂王の御代。
 天竺から中国に渡った妖狐は、妲己という美しい娘に姿を変え、王宮に潜り込む。
 紂王は妲己を一目見るなり魅了されるが、彼女は王に決して従おうとはしない。
 また、彼女は決して笑顔を見せなかった。
 紂王は彼女を笑顔にさせようとあらゆる方法を試みるが、ある時、蛇が小鳥を飲み込むのを目にし、妲己が遂に笑う。
 そして、妲己は紂王に身体を許す代わりとして、紂王の以前の愛人を「たい盆の刑」(注1)で処刑させる。
 妲己に溺れた紂王は政治を顧みず、殷の国は荒廃していき…

・「第3話〈日本編〉金毛九尾の白狐玉藻の前」
 天平七年(735年)、妖狐は遣唐使の船に乗り、日本に渡る。
 妖狐は、京都洛外、山代の里、坂部蔵人の養女、藻(みずも)となり、住居から出ることなく、歌ばかりつくっていた。
 その美しさは評判となり、時の崇徳天皇から宮中に差し出すようお召がかかる。
 だが、藻は応じず、彼女に執心する崇徳天皇は強制的に連れて来させようとする。
 傷ついた藻は逃亡中、安倍泰清という青年に助けられ、二人は恋に落ちる。
 泰清は、陰陽師、安倍泰親の弟子であり、修行中の身の故、藻のことは秘密にしていた。
 しかし、藻の存在を知られ、崇徳天皇により宮廷へと連れ去られてしまう。
 宮廷で、藻は、崇徳天皇と確執のある鳥羽法皇の寵愛を得て、崇徳天皇を退位に追い込む。
 藻は十日に一度、泰清のもとを訪ねるが、藻の正体を安倍泰親に勘付かれてしまう…

 高校生の頃、全集で愛読していた、思い入れのある作品です。
 天竺・中国・日本を舞台に九尾の狐の伝説を描いた野心作ではありますが、通して読むと、妖狐の性格が一貫していないのが気になります。
 天竺編、中国編では悪女に化けて、悪行三昧なのに、日本編では随分大人しくなっており、ちょっと落差が激し過ぎます。(殷の滅亡から約1700年経っておりますので、心境の変化でもあったのかもしれませんね。)
 でも、そこは、わたなべまさこ先生お得意の悪女ものから純愛ものまで味わうことができるとポジティブに捉えておきましょう。
 あと、天竺編・中国編では「おっぱい」露出度が高いところもいいと思います。
 俺、好きだなあ〜、あの描きとばしたような「おっぱい」。

・注1
 漫画では、穴の中に毒蝦蟇、羽のぬかれた蜂、むかで、さそり、毒蛇を各数百匹入れて、その中に突き落とすという刑。(史実通りかどうかは謎。)

2018年11月22日 ページ作成・執筆

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