松沢夏樹「マレフィキウム」(2012年8月5日初版発行)

・「第一夜 魔女」
「水上椎奈、笠原夕馬、藤代青葉は家が近所で、小中高とずっと一緒の幼なじみ。
 ある日、三人がデパートのゲームセンターにいると、教会の神父を目にする。
 彼は温厚な人柄なのに、何故か殺気立っていた。
 三人が神父の後を追い、屋上に行くと、彼は「魔女」と対峙していた。
 だが、十字架も聖水も効果がなく、神父は魔女によって全身火だるまになり、屋上から転落死する。
 そして、その魔女の姿を視ることができたのは、三人のうち、椎奈だけであった。
 翌日、三人のクラスにイギリスからの留学生が転入してくるのだが…」

・「第二夜 侵食」
「椎奈は幼い頃から霊感体質で、いろいろと怖い目にあってきた。
 そのことを知る夕馬はとりあえず椎奈を転校生から守ろうと青葉に提案する。
 彼らが教室に戻ると、クラスメート達は転校生の支配下に置かれていた…」

・「第三夜 変化」
「時坂芹香は夕馬に想いを寄せていた。
 だが、その想いが叶わぬ時、彼女は魔女につけこまれる。
 今まで内気で目立たなかった彼女は美しくなり、クラスの人気者となる。
 そして、あの転校生をクラスメート達は覚えていなかった…」

・「第四夜 迷宮」
「椎奈は芹香の家に泊まりに行く。
 夕馬は何か引っかかるものを感じ、青葉と共に様子を見に行く。
 床に切断された人間の足があるのを見つけ、二人は家に侵入。
 その部屋の隅にある布団の山の下には幾つものバラバラになった人体があった。
 二人は椎奈を捜すのだが…」

・「第五夜 怨霊」
「椎奈が目覚めると、魔法陣の中の椅子に拘束されていた。
 彼女の周囲には幽霊たちがいて、彼女に助けを求める。
 一方、夕馬と青葉は斧を持った芹香から逃げ続けていた。
 玄関は塞がれ、二人は二階へと上がるのだが…」

・「最終夜 悪夢」
「遂に魔女がその姿を現す。
 魔女は殺した人の魂を次々と体内に吸収する「地獄」でもあった。
 魔女は椎奈を自分の中に取り込もうとするが…。
 魔女の正体とは…?」

 タイトルの「マレフィキウム」とは千種研二氏によると「魔女の悪意による行為で、 魔術を用いて人間、 動物、 あるいは穀物に 害あるいは死をもたらすもの」とのことです。(注1)
 これでわかる通り、魔女を扱った力作です。
 ストーリー展開はツボを押さえ、グロ描写もしっかりしています。
 ただし、魔女が何故日本にいるの?とか、魔女と神父の関係は?とか説明不足な点が多いことは否めません。
 そのためによく理解できないままストーリーが進み、その結果、印象に残りにくい作品になったように感じます。
 もっと設定に力を入れたら、佳作になってのではないでしょうか?
 惜しいです。

・注1
 敬和学園大学のサイトでの「中世末期ヨーロッパ社会と魔女」という卒業論文より引用させていただきました。

2023年6月17日 ページ作成・執筆

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