松本零士・他「妄想鬼 サキ短編傑作集」(1979年6月15日発行)

・松本零士「妄想鬼」(「週刊少年マガジン」1970年6月28日号)
→「スレドニ・ヴァシュタール」(Sredni Vashtar)

・真崎守「運命」(「週刊少年マガジン」1970年6月28日号)
→「運命」(aka「運命の猟犬」/The Hounds of Fate)

・辰巳ヨシヒロ「人猫」(「週刊少年マガジン」1970年7月5日号)
→「ドバーモリー」(aka「トバモリー」/Tobermory)

・上村一夫「狼少年」(「週刊少年マガジン」1970年7月5日号)
→「狼少年」(aka「ガブリエル−アーネスト」/Gabriel-Ernest)

・川本コウ「古井戸に落ちた悪魔ちゃん」(「週刊少年マガジン」1970年7月12日号)
→「物置小屋」(aka「納戸部屋」/The Lumber-Room)

・いけうち誠一「おせっかい」(「週刊少年マガジン」1970年7月19日号)
→「おせっかい」(aka「邪魔立てする者」/The Interlopers)

・石原はるひこ「ひとでなし」(「週刊少年マガジン」1970年7月26日号)
→「贖罪」(aka「罪のあがない」/The Penance)

・中西秀男・解説「短編の名手サキ」

 1970年6月〜7月に「週間少年マガジン」で掲載された、サキ(英/1870〜1916)のコミカライズをまとめた一冊です。
 サキの作品は「開いた窓」等、貸本マンガでちらほら見かけましたが、少年誌で広く紹介されていたことは知りませんでした。
 後の怪奇マンガに与えた影響は大きいかもしれません。
 また、担当した漫画家は、なかなか渋い面子です。
 オリジナルに忠実であることよりも、各人の作家性が色濃く出ており、興味深くあります。
 個人的なベストは、上村一夫先生「狼少年」、川本コウ「古井戸に落ちた悪魔ちゃん」、石原はるひこ「ひとでなし」の三作。
 「狼少年」はかなり原作に忠実で、かなりホラー寄りのコミカライズです。
 狼少年の艶っぽさや、余韻のあるラストは原作よりいいかも。
 「古井戸に落ちた悪魔ちゃん」は、少年の夢見がちな心情が、朴訥とした絵からにじみ出ていて、ノスタルジックな雰囲気が素晴らしい。
 冒頭の、カエルの尻にストローを差し込み、膨らませる描写は非常に味わい深いです。(当然ながら、原作にはそんな描写はありません。)
 「ひとでなし」は、子供の残酷さを描いた原作を、社会派な作品に大幅に改変しております。
 舞台は、ゴミためのようなドヤ街になり、少年の復讐も壮絶です。
 サキの原作と言われなかったら、まず気付かないかも…。
 あと、蛇足ですが、表題作の「妄想鬼」は、サキの原作の魅力を全く伝えていない失敗作だと思います。
 「おせっかい」は、主人公達がマタギとキコリに変えられているので、矢口高雄先生に描いて欲しかったものです。

2022年3月15日 ページ作成・執筆

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