好美のぼる「眼裂け女」(発行年月日不明)
「財界の大物、大塚喜兵の一人娘、大塚華子。
彼女は父親に甘やかされ、わがままし放題、傲慢極まりない娘であった。
父親は彼女のために松葉学園という学校を設立し、そこでも勝手気ままに振る舞うが、彼女には密かな野望があった。
それは父親の力でなく、自分の力で、皆を服従させること。
その一歩として、ミス松葉学園と言われている秋野愛子を、演技でだまして、自分の仲間に引き入れる。
さあ、これから…という時、華子は片目を眼病に犯され、失明する危機に陥る。
眼球バンクからの提供を待って、華子は入院生活を送るが、それと時を同じくして、町に「眼裂け女」が現れるようになる。
眼裂け女とはロングコートに片目に眼帯をはめ、出会った少女達に「わたしの眼、きれい?」と尋ねては、襲いかかり、少女達の片目をえぐり取ってしまうのであった。
眼裂け女の正体は不明なまま、被害は拡大。
少女達が外を出歩かなくなると、眼裂け女はわざわざ家に忍び込んでは、人を襲いだす。
遂には、秋野愛子にも眼裂け女の魔の手が伸びるのであった。
眼裂け女の正体は…?
また、その目的は一体何なのであろうか…?」
「口裂け女」のブームに便乗して、描かれたと思しき「眼裂け女」…そのスジでは有名な作品です。
とある本(知らない間に廃品回収に出されました…)にて紹介された際、「キャグー(悲鳴)」「(プロローグでの)世の中で一番こわいのは…ヤミとバカだと言う…」「なんじゃと このおとぼけもんが(眼裂け女のセリフ)」等々、「おじいちゃんセンス」を散々突っ込まれておりましたので、ご記憶の方もあると思います。
ちなみに、その本で眼が「裂け」ているのではなく、「えぐれて」いるのではないかという指摘もバッチリなされておりました。
と、いった感じで、突っ込みどころ満載なのは確かですが、狙われるのは「眼」ですので、非常に生理的な恐怖度は高いです。
道具なんか使わず、爪をとがらした指を相手の目に捩じ込み、眼球をえぐり出す描写は、好美のぼる先生の絵柄であっても(失礼!!)、凄まじく猟奇的。
後半には、粘液まみれの内臓のようなところに、眼球がゴロゴロ転がっている悪夢の描写もあり、不快度は満点。
「眼」関連にトラウマのある人には絶対にお勧めできません。(注1)
あと、個人的には、ラストの墓参りのシーン(pp210〜212)。
ヒロインの墓参りをする家族が墓石を見て、
「あらっ お父さん お墓の色が(…)なんだか急に明るくなったみたいよ」
「みんなが来たので 愛子がよろこんでいるんだ」
「ああっ お墓から涙が出ているよ」
顔色が明るくなるというのは、普段からよくありますが、「墓の色」が明るくなるというのは新発想ではないでしょうか?
「テキト〜」を極めたB級マンガと毀誉褒貶の激しい好美のぼる先生のマンガには、まだまだ「我々の想像を超えた」アイデアが眠っているのかもしれません。(注2)
久々に読み返しましたら、いろいろな発見のある、楽しいマンガでありました。
・注1
ルチオ・フルチ「サンゲリア」での有名な「眼球串刺し」、「地獄の謝肉祭」での「両目の目頭に人差し指と中指を捩じ込む描写」、「ゾンゲリア」での「眼球注射刺し」(いろんなホラー映画でやってるみたいですが…)、「死霊のはらわた」での「両目に親指を突き刺す描写」等。(他にもたくさんありますが、キリがありません。)
「眼球」に関する特殊メイクはリアルさを出すのが難しいのか、大々的にフィーチャーしている映画は少ないような気がします。
あと、個人的なことですが、私は木の枝で瞳孔を突いて、虹彩炎になった過去があり、以来、乾燥がひどかったり、目にゴミが入ったりすると、目の表面に「水ぶくれ」ができることがあります。
そうなると、瞬きするだけで、水ぶくれが擦れて、痛むのです。かないません…。
・注2
「寝る子を起こすな」
・備考
カバーがボロボロ。前後の袖なし。pp1・2、セロテープのシミあり。
2016年9月7日 ページ作成・執筆