伊藤潤二「ミミの怪談」(木原浩勝・中山市朗:原作/2003年3月31日初版第1刷発行)

 収録作品

・「電柱の上にいるもの」(表紙から見開きにかけて)
「雨模様の日。
 ミミが直人の運転する車に乗っていると、奇妙なものに気付く。
 老婆が電柱のてっぺんに立っており…」

・「隣の女」
「ミミが住んでいるのは築四十年の文化住宅の一階の一番端。
 当然のことながら、壁が薄く、階上の住人の音楽がやかましくてしようがない。
 ある日、耐えかねて、二階のその部屋に文句を言いに行く。
 住人は若い男だが、隣の部屋からは苦情がないと涼しい顔。
 隣から苦情があれば考えると言われ、ミミは隣の部屋のドアをノックをしても反応がない。
 しばらくして出てくるが、それは全身黒づくめでサングラスをかけた女性で、無言で立ち去る。
 どうやらこの部屋には姉妹らしき女性が二三人住んでいるようだが、服装はいつも同じ黒づくめで、挨拶も全くしないので、謎に包まれていた。
 しばらくして、ミミの部屋の上の騒音がぴたりと止む。
 階上の男は隣人に怯えていて、ある日、急に引っ越してしまう。
 ミミは二階の方が静かだと考え、二階のその部屋に引っ越すのだが…。
 隣人の女の正体とは…?」

・「草音」
「ミミは直人と早朝の散歩をする。
 周囲は林に囲まれ、とっても清々しい。
 すると、草むらに何かが落ちたような音がする。
 音の方に行くと、若い女性の首吊り死体があった。
 死体は時間が経っており、降ろそうにも、踏み台はあたりに見当たらない。
 そのうちに、再び何かが落ちる音がする。
 何が落ちたのか訝っていると…」

・「墓相」
「ミミが今度引っ越したアパートは条件はいいのだが、ただ一つだけ、ベランダの向こうが墓地であった。
 引っ越した最初の夜、「ゴゴッ ゴゴッ」という奇妙な音が墓場から聞こえてくる。
 目を凝らしても、暗闇で何も見えず、翌朝、隣に住むボディービルダー男に尋ねても、気が付かなかったとの答え。
 気になって墓場の中を歩くと、上部の石が斜めにずれている墓があった。
 以来、夜になると、墓場から奇怪な音が聞こえてきて、ある夜には人魂をミミは目撃する。
 更に、大勢の視線を感じるようになり、気が付くと、向かいの墓石が全てこちらを向いていた。
 ある夜、直人はミミの部屋に泊まり込み、ことの真相を突き止めようとするのだが…」

・「海岸」
「夏、ミミは直人、古澤、田中と海に行く。
 海には夜中に着き、車の中で休んでいると、ミミは車の横を腐乱した溺死体が歩いていくのを目撃する。
 翌日、ミミは昨夜のこともあり調子が悪く、また、気温も低いので、海に入る気分には全くなれない。
 浜茶屋で時間を潰していると、バイトの娘がこのあたりでは水死事故が多く、幽霊がよく出ると話しかけてくる。
 古澤が彼女をナンパをすると、何故かOKをもらい、彼女は彼らと浜辺で写真を撮る。
 直人が彼女は仕事中だと古澤をたしなめると、娘は今年の夏は暇だから構わないと答える。
 そして、暇だといろいろなものが見えると話すが、それは過去、この海岸で命を落とした死者の姿であった。
 そして、古澤に注意するよう警告して、その場を立ち去る。
 日暮れ、古澤の様子がおかしい。
 彼は一足先に車で休んでいたのだが、突然、車から出て来て、海に向かう。
 彼に何が起こったのだろうか…?」

・「ふたりぼっち」
「正月。
 ミミが実家に帰ると、見知らぬ女の子がいた。
 少女は(多分)恵子という名で、母親が急死したため、初七日の間だけ預かっているのだという。
 恵子はミミにべったりまとわりつき、決して離れようとはしない。
 あと、恵子には時々、顔に黒いススが付いている。
 黒いススは家の廊下にも付いていたが、どこからススが出てきたのかがわからない。
 その夜、ミミは恵子に何故一人でいられないか尋ねる。
 恵子は一人になると横に「くろいひと」がいて、その人とふたりぼっちになりたくないと答える。
 恵子が寝た後、ミミは「くろいひと」について両親に話すのだが…。
 「くろいひと」の正体は…?」

・「朱の円」
「幽霊の存在の是非で、ミミは直人と大喧嘩し、絶交する。
 直人と別れた後、ミミが親友の美砂に幽霊を信じるかどうかを聞くと、彼女は信じると答える。
 それどころか、最近、彼女の身の回りで奇妙なことが起きたと言い、ミミを祖父母の家に連れて行く。
 家は取り壊しの途中で放置されていた。
 台所の床には深い穴があり、美砂とミミがその穴へ降りていくと、穴の底に部屋がある。
 四方は壁で床は畳だが、相当古いもので、誰が何のために作ったのかわからない。
 そして、壁の一つには朱色の円が描いていった。
 美砂によると、この部屋は彼女の祖父母と伯父の失踪と関係しているらしい。
 ここで起こったこととは…?」

・「畑のあぜ道」(後の見開きから裏表紙)
「ある晩、バスに乗り遅れ、ミミは駅まで歩く破目となる。
 近道のため、畑のあぜ道を歩いていると、水路工事中の看板があるのだが…」

 木原浩勝氏・中山市朗氏による「新耳袋」を伊藤潤二先生がアレンジして描いた作品集です。
 あとがき漫画で「いささか自由にやりすぎた」と反省しておりますが、いや、やり過ぎ、大いに結構!!
 普通に「怪談」している作品も出来は良いのですが、「隣の女」「ふたりぼっち」「朱の円」といったやり過ぎた作品の方がやはり魅力的に思います。(とは言え、原作に当たってないので、やり過ぎているのかどうか本当のところは謎です。)
 にしても、「電柱の上にいるもの」と「畑のあぜ道」は普通に収録できなかったものなのでしょうか。
 最後に、表紙画像、暗くてさっぱりでしょうが、私のスキャナーではこれが限界ですので、堪忍してください。

2023年7月10日 ページ作成・執筆

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