好美のぼる「妖怪もどき」(1972年10月16日発行)



「舞台は、山奥の僻村。
 十年も無人だった神社に、奈良から、新しい神主の一家がやって来る。
 神主の息子、後藤秋男は村立大輪中学校に転入するが、恐ろしく無口な少年であった。
 クラスの委員長、三田正子は、秋男の無口にもめげず、秋男が皆と打ち解けることができるよう努める。
 だが、秋男の転入初日から、秋男に暴力を振るった男子生徒三人が行方不明になる。
 行方が皆目わからず、皆が大騒ぎをする中、秋男は何らかの秘密を抱えながらも、沈黙している様子。
 それもそのはず、男子生徒をさらったのは、秋男の両親であった。
 秋男の両親は妖怪であり、秋男は捨てられていたのを妖怪に拾われ、今まで育てられてきたのである。
 年を取って、歯の悪くなった、秋男の両親は、十五・六歳の人肉の味を覚え、秋男にエサ集めに協力させようとする。
 秋男はそういうことに手を染めたくはないが、今までの育ての恩があるために、悩み苦しむ。
 一方、学校では、再び行方不明者が出たため、神主に教室のお祓いを依頼する。
 この絶好の機会に、秋男の父は学校全体に呪いをかける。
 秋男は皆を学校に立ち入らせないよう奮闘するが、犠牲者は増えるばかり。
 遂に、秋男は学校に火をつけようとするのだが…」

 冒頭で、好美のぼる先生のテキト〜さが炸裂しております。
 まず、上中央と右上画像に載っている青年は作品に出ておりません。(主人公はデューク東郷似のしぶい中学生です。)
 そして、右上画像に名前付きで出てくる妖怪も出番はほんのちょっぴりだけ。(んにしても、「鉛筆洗い」ってのは何なんだよ!!)
 推測ですが、最初に描こうと思ったものと、描いているうちに出来上がったものが全く違っていたというパターンなのでしょうか?
 貸本時代から、好美のぼる先生のマンガは巻頭ダイジェストと本編の内容がビミョ〜に違う…どころか全然違うということがありましたので、その流れを引き継いでいるのかもしれません。(「何も考えずに、描きとばす」…それが多作の秘訣!!)
 冒頭の画像から判断する限り、半妖怪、もしくは妖怪に育てられた青年(それが「妖怪もどき」らしい)と人間の娘との恋愛を描くつもりだった可能性があります。
 でも、実際のストーリーは、人肉食の妖怪を両親に持つ少年の葛藤を描いたもので、どこをどうしたら、ここまで軌道変更できるのか、謎です。
 まあ、そこそこ「青春」ものが入っていると言えなくもないので、それはそれで味わい深いのですが…。
 ちなみに、個人的に感銘を受けたシーンは「校長に化けた妖怪が生徒達を学校に閉じ込めるために裸になっているという幻覚を見させる」シーン。
 う〜ん、ほんわかエロス。(パンティー止まりなところがいいんです。)
 一昔前のド田舎の中学生(一学年一クラス/エロ本はそれこそ貴重品)の妄想を活写し尽くした、好美のぼる先生の類まれなる才能に(淡麗αのロング缶で)乾杯!!(注1)

・注1
 「エロマンガ・マニアックス」(太田出版/1998年12月19日第一刷発行)によると、好美のぼる先生はエロ劇画に早くから進出していたようですが、「エロスという点においては、この本に紹介した数多いマンガ家の中でも、最低ランクに位置する」(p265/増子真二氏・文)とのことです。
 やっぱりね…。

・備考
 カバー・本体上部、焼け焦げの痕あり。カバーと本体、シミや汚れ、ひどし。

2016年9月12日 ページ作成・執筆

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