高階良子「妖かしの庭園」(1997年1月10日初版発行)

 収録作品

・「妖かしの庭園」
「杉原直也の婚約者、タザワ・サラはブラジルの日系三世。
 彼女は、母親が病気と聞き、ブラジルに戻って以来、消息を絶つ。
 直也はリオに行くが、サラは母親の死後、突然、現れた父親に連れて行かれたとしかわからない。
 二年経ち、あきらめがついた頃、彼に小包が届く。
 小包の中には、手紙と、奇妙な果実、そして、地図。
 手紙には、彼に会いたいという、サラの想いが無造作に書き殴られていた。
 また、果実の蜜を嘗めた時、直也はサラの匂いやキスの味を思い出し、彼女への情熱が再び燃え上がる。
 彼は地図を頼りに、アマゾン川の支流をひたすら遡り、奥深い密林にある、サラの父親(ドク・タザワ)の屋敷に辿り着く。
 しかし、サラは重い病にかかっており、すぐには会うことはできないらしい。
 仕方なく、直也は屋敷に滞在することとなり、ドク・タザワから彼の研究の成果を披露される。
 彼の研究とは、植物の変種を作りだすことであった。
 彼の最大の成果は、巨大なワクワクの樹で、その蜜玉は、直也に送られてきた、奇妙な果実であった。
 直也は、その蜜を飲む度に、陶酔を得るが、渇きはますばかり。
 ある夜、蜜玉を取りに行った彼は、ワクワクの樹の根本で、サラと再会を果たすのだが…」

・「忘却の雫」
「中津瀬直美が11歳の頃、家の離れに、姉と篝の夫婦が住んでおり、よく遊びに行っていた。
 薬学者の篝は、病弱な姉のために毎日、薬を調合していて、直美はその薬が気になって仕方がない。
 ある日、直美は、甘美な香りの漂う、その不思議な薬を味見しようとして、全部飲んでしまう。
 姉はその日のうちに亡くなり、罪悪感のため、直美は家から離れた学校に通い、二年前に父親が死んだ時にも家には帰らなかった。
 だが、風邪の見舞いに篝が彼女の部屋を訪れたことと、長兄の急死を受け、彼女は数年ぶりに実家に帰る。
 そこで、彼女は次兄から篝の花嫁になるよう頼まれるのだが…。
 篝の正体とは…?」

・「海に還る島」
「奈緒が気が付くと、南の孤島にある療養所にいた。
 記憶は、婚約者の貴行に重要な話があると呼び出され、ジュースを飲んだところで途切れていたが、あれからもう二か月も経っている。
 医者によると、彼女は「特殊な病い」で、この島で治療を受けていたのだと言う。
 とりあえず、経過は順調ということで、彼女は南のバンガローで、貴行が迎えに来るのを待つ。
 だが、彼女の身体はウロコのようなものに覆われていく。
 また、海の中が快適で、いくら過ごしても苦でない。
 彼女の「特殊な病い」とは…?
 そして、医師の目的は…?」

 異郷ファンタジーとサスペンスものが多い高階良子先生ですが、この単行本はホラー寄りの作品が収録されております。
 「妖かしの庭園」は「妖花」もの。
 「忘却の雫」は「邪神もの」。
 「海に還る島」は、ズバリ「半魚人」ものであります。
 どれも佳作だと思いますが、個人的には、「海に還る島」が好みです。

2020年2月5日 ページ作成・執筆

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