黄島点心「口寄せ蓮治捕物帖」(2012年10月31日発行)
・「口寄せの@」
「少年の名はネンジ。
彼といつも一緒にいるのは鸚鵡の蓮治。
父親は物心がついた頃からおらず、家にあるのは遺影と、形見のウクレレのみ。
母親は水商売の女性で、ダメンズと付き合っては、ふられることを繰り返し。
そして、自分が幸せになれないのは、ネンジがいるせいとDVを振るう。
ネンジが小学生の時、仲の良かったホームレスの老人が急死する。
老人の死を悲しんで、ウクレレで、老人が教えてくれた曲を弾いていると、蓮治に老人の霊がとり憑き、喋り出す。
どうやら、ウクレレのメロディーで死者の口寄せができるらしい。
ただし、一人の幽霊につき、一回しか口寄せはできなかった。
彼が中学生の時、母親はヤクザ者と同棲を始める。
母親はこれを機にやり直そうとしていたが、轢き逃げで死んでしまい…」
・「口寄せのA」
「父親を捜して、一人旅を続けるネンジ。
彼は、中華料理店主から「蟒(うわばみ)トンネル」に注意するよう言われる。
そのトンネルを一人で通ると、「おぶさり幽霊」に襲われるらしい。
大して気にもせず、トンネルを通ると、暗闇の中で何かが彼におぶさる。
慌てて外に出ると、彼の背中には太っちょな子供が乗っていた。
ブクビ(本当の名はむくみ)はわがままないたずら坊やだが、彼の足は異様に細く、自力で歩くことができない。
結局、彼の思うように使われた挙句、彼を家に連れて行くと、ブクビの家は立派なお邸であった。
だが、町に戻ってから、ネンジは金を落としたことに気付く。
金を捜して、彼がブクビの家を訪ねると、ブクビが三階から転落死していた。
とりあえず、ブクビと父親と婚約者(再婚)に金のことを尋ね、ブクビとの出会いについて説明する。
ところが、父親と婚約者の様子がおかしい。
そこで、ネンジは口寄せで、ブクビの霊を呼び出すのだが…」
・「口寄せのB・人魚編」
「ネンジはある港町の金魚屋でバイトをする。
その港町では、蒲田家と黄金丁家が激しく憎しみ、いがみ合っていた。
その家の子供、蒲田美種(よしたね/17歳)と黄金丁名残(16歳)は閉塞感に絶望していた。
夏祭りが終わった後、浜辺に、美種と名残の死体が打ち上げられる。
心中と思われたが、蓮治の口寄せによって、意外な事実が明らかとなる…」
・「口寄せのB・金魚編」
「ネンジがバイトをした金魚店は異様な長寿一家であった。
151歳の祖父、118歳の父親に114歳の母親、そして、91歳のお玉さん。
お玉さんは病気で臥せっており、祖父達が彼女の介護をする。
その家に、役場から刈亀(かるき)という四角四面な職員が年金問題の調査でやって来る。
彼は、家族の確認をして、あまりの長命に驚愕する。
だが、祖父、父親、母親の三人は、実は同一人物が仮面をかぶっていることがバレてしまう。
その人物は何故、このようなことをしているか説明をする。
しかし、刈亀は納得せず、年金の不正受給だと厳しく指摘する。
ネンジは蓮治に口寄せしようとするが、これには深い深い事情が隠されていた…」
・「エピローグ」
「車で一休み中のネンジ。
そこに、小学生の女の子が逃げ込んできて…」
奇才、黄島点心先生の隠れた傑作です。
奇想に溢れたストーリーを、ちゃんと伏線を貼って、きっちりとした構成で仕上げているところが好感度大です。
また、妙チクリンなユーモアも唯一無二で、世知辛さ満載の世界観に温かい彩を添えております。
個人的なベストは「口寄せのB・金魚編」。
この作品のテーマは「家族」と考えておりますが、家族を守ることに徹する姿勢にちょっと感動しました。
ちなみに、「口寄せ蓮治捕物帳」は、残念ながら、「全20巻」まで行かず、一巻で終わってしまったようです。
惜しい!!惜し過ぎる!!
もしも、機会があれば、黄島先生に続編を描いていただきたいものです。
2021年11月25日 ページ作成・執筆