日野日出志「老婆少女」(1996年10月10日第1刷発行)
収録作品
・「赤い眼をしたお人形」
「ある日、少女は学校帰りにいつもとは違う道を通る。
すると、ドール・ハウスがあり、ショーウィンドーの人形に目が釘付けになる。
その人形は赤い眼をした、女の子の西洋人形であった。
ドール・ハウスの店主はこの人形は何でも願いを叶えてくれる「魔法の人形」だと話し、少女にプレゼントする。
その日の夜から彼女は人形と寝起きを共にするようになる。
翌朝、母親をいびる祖母が、少女の願い通りに死亡。
少女はこれが魔力なのかどうか尋ねようと、ドール・ハウスに出かけるが、そこに店はなく、「人形塚」があった。
近所の老人によると、ここは「古い人形を供養する霊域」で、下手に関わると祟りがあるらしい。
不審に思いながらも、少女は憎い相手を次々と死に追いやっていく。
だが、これにはある謀略が巡らされていた…」
・「ぶたぶんた」
「武田文太はある小学校の五年のクラスを受け持つ教師。
彼は物凄いデブで、子供達からは「ぶたぶんた」と呼ばれていた。
彼は何をされても決して怒らず、子供達は彼をストレスのはけ口として、毎日、ひどくいじめる。
また、彼は他の教師達やPTAからも非難を浴びていた。
しかし、彼は真の愛情を注ぐことこそが真の教育だという持論を持っており、子供達のすることは全て、彼に対する愛情だと信じていた。
ある日、三人の六年生男子が帰宅する文太の後をつけ、彼の家に忍び込む。
彼の家は豪邸で、ここに母親と共に住んでいるらしい。
彼は母親に教育され、小中学校には通わず、重度のマザコンとの噂があった。
武田文太の秘密とは…?」
・「雪の伝説」
「ある町の小学校。
この町で初めての雪が降り、子供たちは大興奮。
同日、この学校に転校生がやって来る。
それは白井雪子という、「雪の精」のように色の白くきれいな少女であった。
翌日、町に雪が積もり、町中の子供達は雪遊びに明け暮れる。
彼らは明日も降るよう祈り、次の日、町は大雪となるのだが…」
・「あの子はだァれ!?」
「木枯らしが吹きすさぶ朝、ある小学校の4年2組の窓際の一番後ろの席に見知らぬ子供が座っていた。
転校生らしいが、誰とも口をきこうとしない。
担任の女教師がやって来て、出席を取るが、その時には転校生の姿は消えていた。
だが、転校生は幾度とその姿を現し、その度に、クラスの子供達は不安や恐怖に襲われる。
翌日もその転校生はクラスにいるのだが、その正体とは…?」
・「デッド・ミラー」
「青華女子高等学校。
ある女子トイレの鏡に首を吊った女の幽霊が出るという噂が広がる。
学校はトイレを使用中止にするが、三人の不良生徒がそのトイレで煙草を吸う。
すると、ライターが爆発して、うち一人が焼死。
その際に、鏡の中で首吊り女の幽霊が笑っていた。
校長は不良生徒達に七年前の事件について話す。
首吊り女の幽霊は美川という女教師なのだが…」
・「老婆少女」
「春。私立若葉学園の文化祭。
学園のミスを選ぶコンテストで、花岡蘭は「ミス・ヤングリーフ」に選ばれる。
しかし、夏の頃から彼女はひどく疲れやすくなり、夏休みの間、急速に老化する。
病院に行っても原因はわからず、老化は進行する一方。
秋のある日、彼女が目を覚ますと、家はひどく荒れ果てていた。
家族を求めてさまよっている時、ふと鏡を見ると、若い頃の自分が映っている。
彼女は今日が文化祭だと思い出し、学校に行く。
そして、迎える冬…。
彼女の身に起きたこととは…?」
・谷間夢路・解説「〈日野日出志〉とは? ヒューマンな作家魂」
岩越國雄先生のアシスタントの入った「デッド・ミラー」と「老婆少女」が味わい深くありました。
「デッド・ミラー」は喫煙学生に対する殺意に満ち満ちており、何もそこまでしなくても…という感じです。
「老婆少女」は老化の恐怖を描いた作品ですが、ラストに意外なオチをつけ、しんみりとした読後感です。
2023年7月13日 ページ作成・執筆