飯田耕一郎「邪学者姫野命シリーズ 逢魔」(1985年3月1日初版第一刷発行)

・「メディウム」
「大原という精神科医が岩下家の二階で岩下夫人と息子を猟銃で射殺した事件。
 この事件は不可解な点ばかりであった。
 まず、お手伝いの畝が二階から転落死していたこと。
 また、犯人の大原は理性的な人間で、とても殺人を起こすとは思えない。
 医師たちは彼の記憶を取り戻そうとするも、凄まじい「恐怖」故に、殺人当時のことは全くわからないままであった。
 唯一の証人らしきものは事故現場の部屋の隣にいた沙葵(さき)という少女のみ。
 彼女は一年前に亡くなった岩下氏と女中の間にできた娘であった。
 女中の死後、岩下氏が引き取るが、父親の死後、自閉症が進み、いまや「人形」のようになっている。
 ある日、精神科医の大場は大原の妹の美央と喫茶店で会う。
 美央は大場に沙葵という少女の治療記憶を手渡すが、それには信じられないようなことが書かれていた。
 大原が二階の沙葵の部屋を訪ねた時、沙葵の分身がベッドのそばで耳を塞いでしゃがみこんでいた。
 更に、岩下氏の意識が彼の頭に入り込み、岩下夫人が息子と肉体関係を持っていた光景が見える。
 夫人は息子の伸一が沙葵に手を出そうとしたため、自分の身体を与え、そのことを知った岩下氏はショックにより急逝したのであった。
 とは言え、このレポートだけで大原の動機が全てはわからない。
 その時、姫野命という女性が沙葵のせいだと話しかけてくる。
 姫野命は霊能力者&占星術師で、「憑依」の専門家であった。
 彼女は大場の病院に行き、大原の意識にトランス状態になって潜入する。
 そこで大原と会い、彼から岩下家で見たものについて聞き出す。
 その間、植物人間だった沙葵が病室を脱け出し、行方不明になる。
 姫野は岩下家に戻ったと考え、大場と共に向かうのだが…」

・「ホルマリン」
「ある病院の資料室。
 人体部位の入ったホルマリンの瓶が並ぶ棚。
 一匹のネズミにより心臓標本の入った瓶が落ち、床で割れる。
 その心臓は神経を伸ばし、骨や脳を発育させ、そして…」

・「逢魔」
「姫野命はある会社社長に相談役として呼ばれる。
 この社長がとんだエロオヤジで、帰りの車をむりやり停めて降りるが、そこは霊能者にとっては特に危険な「悪しき場所」であった。
 そこは死霊や悪霊のたまり場で、その集合体である邪悪な化け物が彼女に襲いかかる。
 彼女はここから無事に逃れることができるのであろうか…?」

 飯田耕一郎先生のオカルト漫画の隠れた傑作シリーズ「姫野命シリーズ」。
 この単行本の作品は「漫画ブリッコ」で不定期連載されたものに大幅加筆をしたものです。
 掲載雑誌が雑誌なので、その分、アダルト(エロいと言うより、「大人向け」という意味で)な要素が濃いように思います。
 ちなみに、「メディウム」がタイトルの作品と徳間書店の「メディウム」の関係が「あとがき」に書かれております。

2023年6月21日・11月28日 ページ作成・執筆

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