「パウラA ナニモミエナイ」(2022年10月28日初版発行)
収録作品
・御茶漬海苔「私の花」
「創子は植物が大好きな少女。
彼女は家にも学校にも居場所がなかったが、彼女の部屋は鉢植えでいっぱいで、ここでなら安らぎを得ることができた。
そして、彼女の唯一の望みは花になることで、毎日、花の種を飲む。
ある日、彼女は学校でいじめっ子たちに絡まれ、学校を早退する。
高校の教師である父親は怒り心頭で、彼女を張り倒し、鉢植えを全て破壊する。
彼女は花たちに謝りながら、朝を迎えるが、突如、彼女の腹部に巨大な花が咲く。
その花の中から、彼女の頭を持った植物が生み出されるのだが…」
・空路「あい子」
「飯島あい子はクラスぐるみのいじめにあっていた。
先生もいじめを放置するが、転校生の中井という少女だけはあい子をかばい、友達になろうとする。
だが、いじめの矛先は中井にも向けられ、それをあい子は止めることができなかった。
その怒りが彼女をペンダントへの「儀式」に駆り立てる。
このペンダントは骨董品屋で見つけたもので、「儀式」を行えば何でも願い事が叶うというのだが…」
・千之ナイフ「身代わりの鏡」
「高校二年生の彩香は森川先輩に捨てられたショックで、悪友たちと付き合い始める。
だが、本当はそういうことはしたくなく、自己嫌悪に苛まされていた。
ある日、彼女に一年生の頃の友人の雪乃が話しかけてくる。
彩香は自分の気持ちを素直に打ち明けると、雪乃は「身代わりの鏡」について話す。
満月の夜、午前0時に4階の北側階段にある踊り場にある鏡の前に立ち、身代わりをお願いし、もし成功すると、鏡の中の自分が代わりに用事を済ませてくれるのだという。
今夜は満月で、彩香は雪乃に勧められ、夜中にその鏡の前を訪れる。
身代わりの呼び出しは失敗かと思われたが、翌日、彼女の悪友がカラオケボックスで惨殺され…」
・日野日出志「老婆少女」
「春。私立若葉学園の文化祭。
学園のミスを選ぶコンテストで、花岡蘭は「ミス・ヤングリーフ」に選ばれる。
しかし、夏の頃から彼女はひどく疲れやすくなり、夏休みの間、急速に老化する。
病院に行っても原因はわからず、老化は進行する一方。
秋のある日、彼女が目を覚ますと、家はひどく荒れ果てていた。
家族を求めてさまよっている時、ふと鏡を見ると、若い頃の自分が映っている。
彼女は今日が文化祭だと思い出し、学校に行く。
そして、迎える冬…。
彼女の身に起きたこととは…?」
・橘美羽「闇に誘う迷路」
「圭一とちずるは山にドライブに出かける。
途中、足の悪い老婆を轢きそうになり、彼女の家まで送ることになる。
老婆は孫がどうとかブツブツ言っており、ちょっと様子がおかしい。
老婆の家は山腹にあり、ちずるは強引に家に寄ることとなる。
彼女は家の前で待たされるが、いつまで経っても老婆が出て来ない。
彼女が様子を見に家の裏に回ると、ある部屋で老婆は鏡に向かって話をしていたのだが…」
・稲垣みさお「父親作り」
「千秋は天涯孤独の身であった。
父親は彼女が生まれる前に亡くなり、母親もすぐに失踪。
ある日、彼女は古本屋で「人間の作り方」という本を見つける。
作り方は、大量の粘土で人間の形を作り、中に作りたい人の写真を入れ、人間の血で固め、一晩置けばできあがり…という簡単なものであった。
ただし、三日経つと、血が固まり、動かなくなるという。
とりあえず、本に従って、自分の父親を作ってみると、あっさり成功。
作り方が粗かったため、多少のボロはあるものの、憧れの父親との生活を彼女は満喫する。
三日後の晩、彼女は奇妙な夢を見る。
就寝中の彼女に父親が話しかけ、彼女の首にカッターを突き刺すというものであった。
翌朝、三日過ぎているのに、父親は動いている。
数日後も父親に変わりがなかったが、彼女の友人が下校中に首を切られて殺されるという事件が起き…」
・呪みちる「狼よ目覚めよ」
「OLの青木は極端な『暴力恐怖症』であった。
ある日、そんな自分を変えようと、空手道場の見学に行ってみたものの、殺気に満ちた雰囲気にさえ耐えられない。
帰ろうとした時、大神月子という女性が話しかけてくる。
彼女はその道場の元・師範代で、新しく「I・U・Nメソッド」というプログラムを新しく始めていた。
それは格闘技ではなく、「人間にとって最強最古の攻撃手段」の「かみつき」だというのだが…」
そのスジでのベテラン作家の(ちょっとマイナーな)作品を収録したアンソロジーです。
日野日出志御大をはじめ、御茶漬海苔先生(以下敬称略)、空路、千之ナイフ…といったホラー・アンソロジーの常連作家の作品はもちろん素晴らしいのですが、個性派の稲垣みさお先生と呪みちる先生の作品が読めるのはデカい!!
お二人の作品はやはり頭一つ突き抜けている感じで、ホラー漫画・ファン以外の方にも十分アピールできる出来です。
巻末には第三巻の予告があり、この調子で内容を充実させていくのかと思われましたが、残念ながら、「パウラ」の第三巻は刊行されなかった模様です。(やはり、税抜き1800円という値段がネックだったのでしょうか?)
2024年9月2・3日 ページ作成・執筆