渡辺千紘
「ピグマリオン@」(2016年4月29日初版・2017年4月10日2刷発行)
「ピグマリオンA」(2016年10月29日初版発行)
「ピグマリオンB」(2017年8月27日初版発行)
単行本@
・「第1話 ピグマリオン神話」(「月刊コミックガーデン」2015年11月号)
綾原ケイゴ(高校生)は、弟のマコト(小学生)と共に、大阪で開催される「全国ご当地マスコット祭り」に参加する。
ことのきっかけは、隣家の瀬島アコ(高校生)の父親が運営役員に選ばれ、誘われたのであった。
マコトはマスコット・キャラが大好きで、大はしゃぎ。
だが、ケイゴがトイレに行っている間、マコトは小さなマスコットに興味を惹かれ、ついて行ってしまう。
その時、耳をつんざくハウリングが響き渡り、園内放送が流れる。
放送では、人間は「嘘」でできており、その最も美しい形が「マスコット・キャラ」で、それを「現実」にする方法を見つけたと語られる。
そして、サプライズイベントの開始を宣言。
すると、マスコット・キャラが来園者を次々と殺し始める…。
・「第2話 葛藤と決意」(「WebコミックBeat's」2015年10月配信分)
竹沢リュウジという刑事に助けられ、ケイゴ、アコ、アコの父親は、怪物化したマスコットからどうにか逃れる。
建物内に避難するものの、ケイゴはマコトのことが心配でたまらない。
そのうちに、建物内にマスコットが侵入し、ケイゴ達は再び窮地に陥る。
竹沢は車を持ち込み、乗るようケイゴ達を促すのだが…。
・「第3話 決死」(「WebコミックBeat's」2015年11月配信分)
ケイゴはマコトを捜すため、園に残る。
唯一の手掛かりは、あるマスコットが血で描いたマコトの絵。
そのマスコットは、奇妙な叫び声を聞くと、その声のする方向へと向かう。
ケイゴはその後をつけていくと、建物の前に、マスコット達が集まり、咆哮していた。
そして、その近くにマコトの姿が…。
・「第4話 ピグマリオン計画」(「MAGCOMI」2016年1月配信分)
マスコットによる被害は日本全土で起こり、警視庁で緊急の会議が開かれる。
警視総監の名城は春名チグサという科学者に協力を要請。
彼は生命科学を専門としていた。
彼は「ピグマリオン計画」というものが、この事件の根幹に関わっていると推測する…。
一方、T−TV本社に立てこもっている、マスコットテロの首謀者を機動隊が取り囲んでいた。
彼は隊長の相模指揮官に、「ガラテア」(マスコット達)は「ピグマリオン計画」によって生み出されたと話す…。
・「第5話 パフォス」(「MAGCOMI」2016年2月配信分)
上半身を吹き飛ばされても、再生するガラテア達。
マコトの死に絶望したケイゴはガラテア達の前にその身を投げ出す。
ガラテア達が彼に襲いかかろうとした時、マコトに身に異変が起こりつつあった…。
単行本A
・「第6話 一夜の顛末」(「MAGCOMI」2016年4月配信分)
生き返ったものの、半身が怪物と化したマコト。
ケイゴが気絶した後、マコトはどこかに去る。
名城サヨという若い女性警察官(名城警視総監の娘)は上からの命令で、綾原兄弟をずっと監視していた。
彼女はケイゴを助けるが、その理由とは…?
一方、テレビ局では、マスコットテロの首謀者がどこかに行こうとする。
彼は「パフォス(ガラテアと人間のハーフ)」が生まれたと話す。
相模指揮官は警視総監から二つの任務を託されていたのだが…。
・「第7話 責任と重圧」(「MAGCOMI」2016年5月配信分)
機動隊だけでなく、自衛隊、米軍基地もほとんど壊滅。
また、総理大臣をはじめ、主だった大臣が片端からガラテアに殺されていく。
最後の砦となった警視庁に、相模指揮官とその部下が命からがら到着する。
相模は名城に頼まれたものを渡した後、ある疑問を口にするのだが…。
・「第8話 犠牲」(「MAGCOMI」2016年6月配信分)
マコトを取り戻すため、ケイゴは名城サヨと行動を共にする。
だが、バイクで道路を走っている時、竹沢の車が事故を起こして、乗り捨てられているのを発見する。
その頃、竹沢、瀬島アコ、アコの父親は、ブタウサギのマスコットから執拗な追跡を受けていた。
ブタウサギは若い娘を犯しては食い殺すエロ狂いで、特に、アコを狙う。
竹沢達は消耗し、限界に近づいて行く。
ケイゴは、アコ達を犠牲にして、弟を救うのかどうか、選択に迫られるが…。
・「第9話 半分の兄」(「MAGCOMI」2016年7月配信分)
森の中の小川。
マコトが川の水を飲んでいると、マスコットテロの首謀者が姿を現す。
彼はマコトに、自分は「キミのおにーちゃん」だと言う。
それが意味するところとは…?
・「第10話 馬鹿野郎」(「MAGCOMI」2016年8月配信分)
アコのため、竹沢は単身でブタウサギのマスコットに戦いを挑む。
彼が力尽きようとした時、逃がしたはずのアコが戻ってくる。
ブタウサギは彼女に襲いかかるが…。
一方、拘束されたマコトは、連れて行かれた場所で意外なものを見せられていた…。
・「第11話 対峙」(「MAGCOMI」2016年9月配信分)
警視庁で、春名チグサは名城総監にガラテアについての分析結果を報告する。
チグサによると、それは「限りなく生物に近い人形」とのことらしく…。
一方、ケイゴ、アコ、竹沢、名城サヨの四人は、大阪府冨林市にある廃病院の前にいた。
そこに、ピグマリオン計画の主任であった綾原優吾(ケイゴ、マコトの父)がいるらしい。
ケイゴはこの病院を目にして、何かを思い出しそうなのだが…。
単行本B
・「第12話 キプロスの王」(「MAGCOMI」2016年10月配信分)
マスコットテロの首謀者がケイゴ達の前に姿を現す。
彼の名はシンゴで、ケイゴと同じ顔をしていた。
彼は「ピグマリオン神話」の虚飾を暴き、「ガラテア」が「ピグマリオン計画」にとってどのような存在だったのか明らかにする。
そして、この日本をガラテア達の王国にしようと計画していた。
ケイゴ達は、命が惜しければ、この場から逃げるよう警告を受けるのだが…。
・「第13話 開戦」(「MAGCOMI」2016年12月配信分)
戦うことを選んだケイゴ達。
竹沢とアコがマスコット達を引き付けている間に、ケイゴと名城サヨは病院へと侵入する。
その病院の奥では、シンゴが、瀕死のマコトにある装置を取り付け、機械を起動させる。
その目的とは…?
一方、警視庁にマスコット達の群れが迫りつつあった。
マスコット達を引き連れる女性、野間マリーは「ピグマリオン計画」に関わっていた科学者だったのだが…。
・「第14話 再会」(「MAGCOMI」2017年1月配信分)
マコトを「器」とすることで、シンゴは遂に、彼の父親であるユウゴと再会を果たす。
そして、シンゴは彼に、これまでの経緯を説明する。
その頃、ケイゴとサヨに、最強のガラテア「ビッチ」が襲いかかっていた…。
・「第15話 全てを呑み込む者」(「MAGCOMI」2017年2月配信分)
ケイゴはビッチに左腕を食われ、ピンチとなる。
シンゴは彼に諦めるよう進言し、マコトはもういないと告げる。
ユウゴもそれは本当だと言うが、次に放った言葉とは…。
一方、警視庁では警視総監室にまで、ガラテアと野間マリーがやって来る。
名城総監は、ある切り札があり、相模をある場所に向かわせるが間に合うのだろうか…。
・「第16話 中にあるもの」(「MAGCOMI」2017年3月配信分)
何故かビッチが融解し、また、日本中のガラテアが制止する。
研究室で、ユウゴは「ピグマリオン計画」の全てを語る…。
また、警視庁では名城警視総監が野間マリーに自分の切り札について明かす。
それは、ピグマリオン計画に関わる女性科学者が孤独な戦いをして作りあげたものであった。
その女性とは…?
・「第17話 嘘つき」(「MAGCOMI」2017年4月配信分)
シンゴの計画は失敗に終わった。
ユウゴはシンゴを説得しようとするが、シンゴは彼は「嘘つき」と呼ぶ。
そして、諦めるにしても、ケイゴ達を道連れにしようと、マコトを破壊し、「意識が回復するまでの自己防衛的暴走状態」にする。
再生状態のマコトはケイゴに襲いかかるが…。
・「第18話 家族」(「MAGCOMI」2017年5月配信分)
マコトを元に戻す方法とは…?
そして、崩壊する病院の一室で、ケイゴはシンゴと対峙する。
ケイゴにとってシンゴとは…?
・「第19話 最終話」(「MAGCOMI」2017年6月配信分)
マスコットテロから十年後。
綾原家の墓の前で、アコはケイゴ・マコト兄弟と再会する。
彼らの現在は…?
そして、ケイゴの夢とは…?
マスコットキャラが怪物化して人間を襲うという、変わり種のモンスター・パニック・ホラーです。
奇抜過ぎる設定と凄まじい残酷描写故、キワモノっぽいですが、ストーリーはしっかりしております。
ただ、駆け足な展開で、ストーリーに若干、説明不足な点と、キャラの奥行きが乏しい点があるのは否めません。
それでも、隠れた良作と評価できるのではないでしょうか。
個人的には、マスコットキャラをそれぞれ性格付けして描いたら、もっと面白くなったのでは?と思います。(いろんな権利に引っかかって、無理だったかも…。)
2022年2月27〜3月1日 ページ作成・執筆