日野日出志「腐乱少女」(1997年3月3日第1刷発行)

 収録作品

・「腐乱少女」
「所田市福祉母子寮に住む谷川親子。
 母子は非常に仲が良く、娘のゆき子は母親に早く楽をさせたいと勉強に励んでいた。
 一学期の期末試験が終わり、夏休みに入る直前、ゆき子の身体は突然、動かなくなる。
 関節が痛んで仕方がなく、母親は会社を休んで看病する。
 しばらく経って、痛みは引いたものの、今度は力が入らない。
 そのうちに、今度は顔の皮膚を破って、蛆虫が這い出てくる。
 母親の看病の甲斐もなく、ゆき子の身体はどんどん腐っていき…」

・「黒マント」
「子供たちの間に広がる『黒マント』の噂。
 黒マントは強い風の吹く日に風に乗ってやって来て、鍵っ子の命を狙うと言われ、東町ではもう何人もの子供が殺されたらしい。
 西町小学校の子供たちは皆、戦々恐々としていたが、その中で一人、黒川という男児は噂をバカにする。
 しかし、その彼が風の強い日に惨殺され、子供たちは身を守るために集団行動をすることに決める。
 ある日、女児四人が勉強の居残りで帰りが遅くなる。
 彼女たちが帰ろうと思って、教室の窓から外を見ると、そこに『黒マント』の姿が…」

・「セーラー服の華」
「私立華園女子学院。
 一年で美術部の花井みゆきは美人でセレブな松田先輩にドキドキ。
 ある日の帰り道、彼女は松田先輩に声をかけられる。
 松田先輩はみゆきの自画像を見て感動したと話し、自分の肖像画を描いてくれるよう頼む。
 そのまま、みゆきが松田先輩の家に立ち寄ると、目を瞠る豪邸で、母親、じいや、ばあやが出迎えてくれる。
 先輩の部屋に通されると、これまたお姫様のような部屋で、みゆきは感激。
 更に、先輩はセーラー服のコレクションを見せ、「セーラー服は少女時代の華」と話す。
 彼女は絵に描いてもらうために、みゆきの目の前で着替え始めるのだが…」

・「糞虫」
「中学二年生の浅虫真美は非常に醜く、また、貧乏で、「糞虫」という綽名で忌み嫌われていた。
 生徒会長の山川は彼女をいじめから助けるも、浅虫に付きまとわれるようになる。
 更に、山川は浅虫からプレゼントをもらうが、その中身はハツカネズミであった。
 その日の下校途中、浅川は山川を待っており、彼女を驚かしたことを謝る。
 そして、プレゼントのハツカネズミを罰するために握り潰し、これで彼女と友達になれたと喜ぶ。
 さすがに山川も浅川が異常だと思い、翌日、二度と近づかないよう言う。
 傷心の浅虫は祖母の待つ家に帰るが…」

・「風の伝説」
「昔、世の中は貧しかったが、子供たちは皆、元気で、目は光輝いていた。
 その子供たちの中でも「風小僧」と呼ばれる健太郎は一際元気で、いつも風のように町中を飛び回る。
 彼は風になってあの空の果てに飛んでいけば、赤ん坊の頃に死んだ母親に会えると考えていた。
 風になりたいという思いは募る一方で、彼は自転車を父親にせがみ、遂に中古の自転車を買ってもらう。
 以来、彼は町中を自転車で走り回るが、ある日、坂道を下る途中、老婆を避けようとして、崖から転落。
 だが、彼が死んだ後、町に不思議な噂が流れる…」

・「蛇の眼」
「春。
 満開の桜の木の下で今井美加は陰気な青年からラブレターを貰う。
 この青年は山田正というオタクで、性格が暗く、クラスの嫌われ者であった。
 美加は彼にはっきり断りの返事をするが、三日後、彼女の家に荷物が届く。
 その中には彼女にそっくりな人形がバラバラになって入っていた。
 文句を言うために彼のクラスに行くと、彼は彼女に振られた日から欠席しており、長期療養のために山奥の病院に行ったらしい。
 その日の放課後、美加は怪しい男に後をつけられる。
 ある建物の玄関から出てきた女性に助けを求め、彼女の部屋に匿ってもらうのだが、これは山田正の両親の仕掛けた罠であった。
 美加は山田正と会うのだが…」

・神田森莉「〈日野日出志〉とは? 『日野式生き方』こそ、我が憧れ!」

 二番煎じな「腐乱少女」が表題作になっているので、あまり期待しない人が多そうですが、意外な拾い物な作品が多い単行本です。
 個人的には、ジェットコースター・ホラーの「黒マント」、ゾンビものの「蛇の眼」がお気に入りです。
 「風の伝説」には不覚にも感動してしまいました。
 また、最低なタイトルの「糞虫」は復讐ものかと思いきや、後半、「白い世界」(「地獄の子守唄」収録)になるという反則技な作品です。
 ちなみに、神田森莉先生の解説はかなりヤケクソで、楽しめました。

2024年4月30日 ページ作成・執筆

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