荒吐巌「侍 VS ゾンビ」(2022年8月12日第1刷発行)

・「其の一 侍という名の異形」(上巻)
「寛永元年(1624年)、深河藩。
 数年前から山奥の農村に田蕗十造という侍が暮らしていた。
 彼は農民たちと対等に接し、畑仕事をして、侍らしいところは全くない。
 村祭りの翌日、弥助の家で何やら異変が起こる。
 家人は弥助が菜売りに行ったまま、帰って来ないと心配していたのだが…」

・「其の二 怪異現る」(上巻)
「弥助の家では弥助が両親を喰い殺し、弟の弥七に傷を負わせる。
 十造は弥助を拘束するも、彼の身体はボロボロで、腐臭が漂い、どう見ても生きていられる身体ではない。
 一方の弥七は大した噛み傷でないのに、ひどい熱を出して苦しんでいた。
 十造と三郎太(村の若い衆)は弥七を医者に診せるために森を抜け、谷下の川のほとりを目指す…」

・「其の三 薬師の申し出」(上巻)
「薬師(稲川淳二似)に会えたものの、薬剤は夜盗に奪われていた。
 十造は薬剤を取り戻すべく、夜盗の逗留する廃寺へと向かう。
 彼がそこで見たものは…?」

・「其の四 十造の実力」(上巻)
「ゾンビ化した夜盗を相手に十造はその実力を発揮する。
 彼は片岡雷蔵の弟子で、有爪流(ゆうそうりゅう)の免許皆伝を受けていた。
 薬剤を手に彼は薬師のもとに戻るが…」

・「其の五 氾出満苦(パンデミック)」(上巻)
「山から立ち上る煙を見てし、十造と三郎太は村へと戻る。
 村ではあちこちで火の手が上がり、村人たちは片端からゾンビと化していた…」

・「其の六 拔劍」(上巻)
「混乱の中、十造は助けを求める声を聞く。
 それは十造に想いを寄せる村娘、小夜であった。
 十造は彼女と共に、村からの脱出を図る。
 しかし、彼はゾンビ化した村人たちを斬ることができない。
 そのため、彼は窮地に陥るが…」

・「其の七 哀哭」(上巻)
「十造は小夜を薬師のもとへ連れて行こうとする。
 途中、彼女は彼と初めて会った時のことを話し、何かが変わることを願ったことが村の破滅につながったと罪悪感に苛まされる。
 十造は彼女を励まし、薬師のもとに急ぐが…」

・「其の八 Lost days,lost memeries」(上巻)
「十造は一人、ささら村へと向かうことを決意する。
 ささら村がどうやら今回のパニックの発生源らしい。
 薬師は彼に林海寺に寄るよう頼むが、そこにもゾンビの群れが押し寄せていた…」

・「其の九 怪異の核心」(上巻)
「十造は尼寺の責任者、寛厳院と面会する。
 彼女は今回の件は「ささら村の呪い」だと考えており、ささら村の領主、門野良明が関わっているだろうと話す。
 門野家は代々呪いを鎮める役割を持つ一族であるが、その呪いとは…?」

・「其の十 伊吹兄弟」(上巻)
「十造は、山の民であるイノコヅチの案内で、ささら村を目指すこととなる。
 更に、寛厳院はイノコヅチに家の宝刀を渡す。
 一方、ささら村には伊吹兄弟(譲悟・凌駕)が率いる侍たちもまた向かいつつあった…」

・「其の十一 魔劍・ゾン陰流」(下巻)
「伊吹譲悟は深河藩家老の嫡子で、侍の中の侍と謳われていた。
 彼らの一団はゾンビに襲われ、兄弟の他に生き残ったのは柳生三厳(やぎゅうみつよし/柳生但馬守宗矩の長男)のみ。
 面白半分にゾンビを斬る譲悟の前に、半身を食われた侍のゾンビが現れる。
 この侍は燕飛之太刀新陰流の使い手で、ゾンビと化した今、魔剣が生まれていた…」

・「其の十二 黄泉への誘い」(下巻)
「田蕗十造は伊吹譲悟たちと出会い、共にささら村へ向かうこととなる。
 譲悟たちの目的は郡奉行の相馬右近の捜索であった。
 相馬右近は数日前、年貢を出し渋っていた村に行って以来、行方不明になる。
 何故か城ではこの件を問題視せず、相馬右近に恩のある伊吹家は独自の調査を開始したのであった。
 イノコヅチの案内で、彼らはささら村への抜け道の前まで来る。
 十造はイノコヅチを帰そうとするが、譲悟は村の中まで案内するよう命令し…」

・「其の十三 呉越同舟」(下巻)
「ささら村で一行は早速、ゾンビの群れに襲われる。
 十造たちはゾンビを次々と斬るが、譲悟は面白半分で死者に対して敬意を払わない。
 これに苦言を呈した十造に譲悟は自慢の怪力を披露するが…」

・「其の十四 思惑」(下巻)
「十造は名主である門野良明の屋敷を訪れる。
 庭先にはゾンビがうず高く積まれていた。
 屋敷には相馬左近の部下の生き残りが隠れていて、村から連れ出してくれるよう頼む。
 譲悟はことの経緯にほくそ笑むが、その時、彼らは侍の一団に取り囲まれる…」

・「其の十五 乱戰」(下巻)
「十造たちは侍たちと斬り合いとなり、十造の活躍により相手を圧倒する。
 そこへ古閑獅子吼(こが・ししく)と京弥(古閑の弟子)という侍が現れる。
 古閑獅子吼は想像を絶するほどの腕前であった…」

・「其の十六 古閑獅子吼」(下巻)
「古閑獅子吼は十造の兄弟子であった。
 しかし、その本性は「魔の者」で、「人の世に仇なす鬼の如き存在」。
 古閑は十造の太刀筋を見て、彼が数年間、剣から離れていたことを見抜く。
 古閑は十造を斬り殺そうとするが…」
・「其の十七 遁走」(下巻)
「十造は柳生三厳に助けられ、古閑から逃げる。
 途中で、伊吹凌駕と合流し、逃げ場を探していたところ、一人の女性に声をかけられ…」

・「其の十八 昔日の追憶」(下巻)
「十造たちを匿ったのは、門野家の侍女、あせびであった。
 あせびは彼らに門野齊明(せいめい)を討ってくれるよう頼む。
 門野齊明は名主の良明の息子で、この村の神主であった。
 今回の惨事は彼が「鬼具魂(きぐたま)」の封印を解いたことにあるのだが、その理由とは…?
 そして、原因を遡れば、新しい領主、半波家持が藩政を牛耳るようになった頃からであった…」

・「其の十九 覚醒」(下巻)
「十造は意識を取り戻すも、重傷であった。
 柳生三厳は撤退するよう言うも、あせびは反対する。
 何故なら、二日後の新月には村の結界の効力が失われ、村の外にゾンビが溢れ出てしまうからであった。
 城の援軍を頼るわけにもいかず、門野齊明を倒す以外にこの村から出る方法はない。
 二進も三進もいかない状況で、十造は古閑獅子吼に借りを返し、次に門野齊明を討つ決意をする…」

・「其の二十 心を碎く戰い」(下巻)
「浪人たちとの戦いの後、侍の一団がやって来る。
 この侍たちこそが村民に一揆を持ちかけ、半波家持への謀叛を企てていた。
 そして、その首領は柄木象山で、藩随一の忠義者と呼ばれる人物であった。
 彼は十造に共闘を持ちかけるが…」

・「其の二十一 怪しき和平」(下巻)
「柄木象山と十造の話し合いに伊吹凌駕が割り込む。
 彼は自分の身柄を明かし、演説で浪人たちの心を掴む。
 だが、柄木象山の裏切りを知った門野齊明はゾンビたちをその場に送り込む。
 象山たちがゾンビを引き付けている間、十造は門野齊明のもとに急ぐ。
 だが、彼の前に京弥が立ちはだかる…」

・「其の二十二 激突」(下巻)
「十造が向かったのは村の神社。
 そこで、十造と古閑獅子吼の真剣勝負が遂に行わる。
 古閑の人間離れしたスピードに十造は圧倒され、隙を見せてしまうが…」

・「其の二十三 決着」(下巻)
「秘伝の技を発動するも、十造の傷や疲労は深く、片手片足を切断される。
 彼が自分の無力さを噛みしめていると、「力ガ欲シイカ?」という声が頭の中で聞こえる。
 彼の憎悪が高まるにつれ、十造は異形へと変わっていく。
 その彼を怪物が襲うのだが、怪物の正体は…?」

・「其の二十四 終幕」(下巻)
「怪物を倒し、屍たちももう動かない。
 だが、失われたものはあまりに大きい。
 同じ悲劇を繰り返さない為にも、紀藤たちは立ち上がる…」

 「LINEマンガ」にて掲載されたゾンビ漫画です。
 江戸時代が舞台で、安直な内容かと思いきや、登場人物たちの様々な思惑が入り乱れる設定はなかなか凝ってます。
 ただし、まとまりが悪く、特に下巻は展開が急ぎ足で、ストーリーを把握しにくいです。
 また、「其の二十二 激突」の真剣勝負の描写は素人目から見ても「がんばりましょう」といった感じでした。
 そして、極めつけはラストがすっきりしません。
 まあ、最後の方はかなり力尽きていたようですので、仕方はありませんが、古閑獅子吼との決着はつけた方が良かったのでは?
 と、欠点や粗がいろいろと目につきますが、作品としては力作であり、それなりに楽しめる出来であると思います。
 最後に、セクシーかつムチムチな尼僧兵、恵慶さんがあまり出番がなかったのが残念でした。

2024年3月13・15日/4月15〜17日 ページ作成・執筆

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