日野日出志「鱗少女」(1996年12月23日第1刷発行)
収録作品
・「鱗少女」
「日の浜水産高等学校。
鳴海洋平はそこの教師で、海洋汚染について研究していた。
研究室には日々採集された畸形魚が持ち込まれるが、ある日、この世のものとは思えない魚が発見される。
夜遅くまで調べるも、どういう種の魚か皆目わからない。
恐らくは新種、もしくは、突然変異らしかった。
その夜、鳴海の助手を務めるとも子は、その畸形魚が彼女を襲い、体内に潜り込むという夢を見る。
翌朝、鏡を見ると、首に鱗のようなできものができていた。
学校の研究室に行くと、あの畸形魚は姿をくらまし、しかも、彼女の首のできものは大きくなる。
鳴海は彼女から助けを求められ、自分の秘密の研究室へと連れて行くのだが…」
・「餓鬼髑髏」
「ミキはおデブな女子学生。
彼女はダイエットを決心するが、その夜、自分の身体が太っていき、爆発する夢を見る。
翌日から食事を控えるも、食事をしているクラスメート達が餓鬼に見え、その姿が目に焼き付いて離れない。
以来、ミキは何でもかんでも手当たり次第に貪り食うようになる。
しかし、彼女はどんどんやせ細っていき…」
・「呪いの黒髪」
「黒上は長い黒髪のステキな娘さん。
彼女が転校した学校には「髪切り魔」と綽名されるオールドミスの教師がいた。
黒上は注意されるも、髪型の規則などバカバカしいと髪を切らずに翌日も登校する。
だが、彼女の抗議も虚しく、彼女は「髪切り魔」に散切り頭にされてしまう。
下校中、ショックで放心状態だった彼女は交通事故にあう。
彼女は事故により首を切断し、現場は実に凄惨なものであった。
警察は事故として処理するも、「髪切り魔」は自殺ではないかと気に病み、黒上の亡霊を目にする。
彼女は校長命令で休養するのだが…」
・「闇の底より愛をこめて」
「浜夏子は天文部の高校一年生。
彼女の誕生日の6月13日、彼女の机にプレゼントが入っていた。
中身はハート形のアクセサリーで、天文部の冬美先輩からのものと思ったが、否定され、送り主はわからずじまい。
それでも、男の子からと思うと、悪い気はせず、翌日からそれを付けて登校する。
数日後、彼女の机にまたプレゼントが入っていた。
中身は目玉のおもちゃで、「闇の底より愛をこめて」というメッセージが添付されていた。
その翌日、またプレゼントがあるが、今度は切断された小指であった。
天文部の女子達に相談すると、ホラー・マニアの山田海紀ではないかと指摘されるのだが…。
プレゼントの送り主は…?
そして、その目的とは…?」
・「ゴーストスクール」
「小中学生が連続して行方不明になる事件。
被害者は十人に及ぶが、全国にまたがっているため、捜査は難航する。
ある冬の夕方、一人の女子学生が友人達と別れ、一人、寂しい道を行く。
すると、前に見知らぬ男がおり、彼の目をみて、彼女は昏倒。
目を覚ますと、荒れ果てた木造の校舎の中であった。
先ほどの男は先生らしく、彼女を「新しいクラス」に連れて行く。
教室の中は子供の死体だらけで、生きているのは先日誘拐されたと報道された小学六年生の少女一人だけであった。
少女は、あの男は人間でなく「ばけもの」で、ここから逃げることはできないと話す。
休憩時間、女子学生は少女を連れて、ここから逃げ出そうとするのだが」
・「ヤマネくん」
「森山小学校。
山根はあまりに大人しくて、誰の目にもとまらない少年。
ある日、彼はペットショップでアフリカ産のヤマネを目にして、それを購入する。
彼はヤマネに夢中になり、夜行性のヤマネが活動するのを脅かさないよう、息をひそめて、一晩中見入る。
学校では彼が居眠りしていても誰も気にせず、彼は家では夜通し、ヤマネの観察を続ける。
昼夜逆転の生活を続けるうちに、ヤマネは彼に慣れ、部屋で放し飼いをするまでになる。
そんなある日、彼が学校から部屋に戻ってくると…」
・犬木加奈子・解説「我が師〈日野日出志〉とは? 時代を超えて生き続ける日野作品の魅力」
2023年7月18日 ページ作成・執筆