神田森莉「本当にあった恐ろしい話」(1996年10月10日第1刷発行)

 収録作品

・「怪奇へび少女」
「子連れの再婚により、かれんと愛子は血のつながらない姉妹。
 二人は仲良さげに見えるが、姉のかれんは陰湿ないじめっ子で、両親の見ていないところで愛子をいじめていた。
 ある時、両親よりも一日早く、二人は別荘に行く。
 散歩をしていると、近所の老人夫婦と出会い、この近くにある沼には行かないよう警告を受ける。
 老婆が言うには、沼には主がいるらしい。
 かれんは警告を無視して行くと、沼は花が咲き乱れ、非常に美しい場所であった。
 そこで、愛子は、蛇の夫婦が卵を守っているのを見つける。
 愛子はかれんに脅され、蛇の片割れを殺し、卵を壊す。
 更に、蛇の卵までを食べさせる。
 翌日、別荘に両親がやって来る。
 かれんはいじめを告げ口しないよう愛子に言うが、愛子には異変が起こりつつあった…」

・「血を流すピアノ」
「陽子と繭実は親友同士。
 二人共ピアノを習っていたが、才能のある繭実とは対照的に、陽子はちっとも進歩しなかった。
 また、繭実が合唱コンクールでのピアノ伴奏に選ばれ、陽子は彼女をちょっとやっかむ。
 下校途中、繭実が鳥アレルギーと知り、陽子はいたずらで、鳥の羽を彼女の目の前で降る。
 繭実は半狂乱となり、線路に転落したところに、電車が現れ、彼女の両手を轢断。
 錯乱した繭実はピアノを弾く格好をしながら、「ピアノがひけない」と叫びながら、息絶える。
 その後、繭実の両親から、繭実が重度の鳥アレルギーであったことを知らされる。
 罪の意識から、陽子はピアノの音や鍵盤に似た模様までも恐怖を覚える。
 だが、あることをきっかけに、自分がピアノが好きだと確認し、再びピアノに向かうのだが…」

・「呪いの溶解女」
「ある高校の林間学校。
 班長の英里子は、引率が天智先生なので大張り切り。
 ロッジに向かう途中、廃坑と精錬工場があるが、英里子は理由がないのに、その場所をとても怖く感じる。
 その日の夜、英里子が風呂に入っていると、どうも熱くてたまらない。
 水の蛇口をひねっても、熱湯が出て、浴室から出ようとするが、ドアが開かない。
 そこに、ドロドロに溶けた手が現れ、彼女の背中に貼り付く。
 英里子の悲鳴に友人が駆けつけるが、火傷をしたはずの背中はどうにもなっていない。
 翌日、風邪でフラフラになった英里子は、天智先生と共に、ロッジに残ることとなる。
 昨日のことが気になり、英里子は風呂場に行くと、全身が火傷でドロドロになった女が現れる。
 女に襲われ、英里子は天智先生のもとへと逃げ込むが…。
 溶解女の正体は…?」

・「エクトプラズムの謎」
「博子、真白、和恵の三人はオカルト同好会。
 交通事故にあった博子が退院したので、三人は旧校舎で降霊会を行うこととなる。
 今回も失敗かと思っていたら、博子の口からエクトプラズムが出る。
 交通事故で超能力者になったと、博子は毎日練習し、遂には自分そっくりなものを全身出すことに成功する。
 だが、そのエクトプラズムは妙な態度を取り、博子は初めて不安を覚える。
 家では不都合で、旧校舎で練習するが、そこに変質者が現れ…」

・「絶滅動物を見た!!」
「くるみは、自称ナチュラリスト兼オカルティスト。
 変人なくせに、気位だけは高く、クラスメートからも担任からも総好かんを食っていた。
 彼女は自分をいじめた奴らに復讐するため、魔術により絶滅動物を呼び出す。
 そして、ドードー(1780年頃絶滅)やステラーカイギュウ(1768年頃絶滅)に変化して、いじめっ子や担任を血祭りにあげていく。
 くるみの隣人で幼馴染の悦司はそれに気付くのだが…」

・「ミステリーサークルの秘密」
「農業科の実習用の麦畑に突如、現れたミステリーサークル。
 超自然現象研の面々は早速調査に乗り出すが、急に異変が起こり、一行は慌ててその場から逃げる。
 その際、朝祈は足を挫き、部長の未明に助けられるが、それを見て、未明に惚れている薬子は怒り心頭。
 夜、薬子は朝祈を襲い、縛り上げた彼女をミステリーサークルに放置する。
 超常現象が起きた後、古代人の霊が現れ、彼女に語りかける。
 ここは古代人にとって「神聖な土地」であり、麦畑に作った模様は古代語で「憎い!!」という意味だという。
 霊は、過去に日本人が古代人にした残虐行為を朝祈に見せるのだが…」

・蕪木彩子(蕪木ばく)「〈神田森莉〉とは? 時代を担う特異な才能」

 個人的に「エロ・グロ・ナンセンス」を極めたと考えている神田森莉先生。
 どの単行本も恐るべきアクの強さですが、「本当にあった恐ろしい話」はその中でも若干おとなしめで、初心者向け…かな?
 最初の四話は何故か実話をうたっていて、内容はメチャクチャなのに、ラストは意外とフツ〜になり、逆に、違和感ありまくり。
 「絶滅動物を見た!!」「ミステリーサークルの秘密」は本来のアナーキーな神田森莉・節で、「絶滅動物を見た!!」は単行本でのベストだと思います。
 巻末には、蕪木彩子先生の解説がありまして、同業者故か(グロに関しては、タメを張ります)、実に的確に神田森莉先生の作品を評しており、作品の理解の助けになります。

2021年11月5日 ページ作成・執筆

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