星野之宣「滅びし獣たちの海」(1996年9月28日第一刷発行)

 収録作品

・「Vol.1 レッドツェッペリン」
「冷戦真只中の1958年8月頃。
 西ドイツ海軍のカール・シュタイナー中佐は合衆国海軍ノーチラス号に航法顧問として乗り込む。
 ノーチラス号は世界で最初の原子力潜水艦で、北極海の氷の下を潜行しながら、北極点を越え太平洋から大西洋への潜行横断に挑む。
 そして、その目的はソ連の大陸間弾道ミサイルに対抗するため、北極海の潜行航路を確保し、いつでもソ連に中距離弾道ミサイルを打ち込めるようにするためであった。
 当然、ソ連がそのようなことを許すわけがなく、「レッド・ツェッペリン」という秘密兵器を北極海に投入する。
 「レッド・ツェッペリン」に関しては詳しいことはわからないが、原子力の砕氷艦らしい。
 ノーチラス号はレッド・ツェッペリンと北極海で対峙することとなるのだが…」

・「Vol.2 鯨鬼伝」
「天保十一年。肥前・叉鬼島(しゃきじま)。
 叉鬼島は捕鯨の盛んな小さな漁村で、島民は隠れキリシタンであった。
 ある日、右足が義足の南蛮人が島に漂着する。
 島民は南蛮人を一目から隠すが、ある夜、島民たちがお祈りをしている場に南蛮人がやって来る。
 彼は十字架を掴むと、聖書の文句を唱え始め、島民たちは彼が宣教師だと感激。
 南蛮人は自由の身となり、島民たちの心を掴んでいく。
 ある日、島の近くに巨大な鯨が現れる。
 十字架を持った南蛮人に率いられ、男たちは海へと出るのだが…」

・「Vol.3 アウトバースト」
「乱開発の進む南米アマゾン。
 上流のクルピラ山脈の麓の密林地帯で古代都市の遺跡が発見される。
 考古学者のメリダ・アルバラード助教授は牧場開発の責任者のロドリゴ・アギーレに調査を依頼され、現地に向かう。
 同行するのは、メリダの友人の生物学教授のレオンとロドリゴの共同経営者であるマツモト。
 しかし、現地に着いても、人夫たちの姿がない。
 更に、コパンという名のインディオが彼らに矢を放ってくる。
 彼らが入り口を探すと、こじ開けたところがあり、その奥には大量の人骨が積み重なっていた。
 その場に人夫頭のマルケスがおり、彼はふらふらと外に歩いて行くと、高台に上り、座り込む。
 彼の周囲には内部から爆発した死体が幾つも横たわっていた。
 レオンは異変を察知し、この遺跡から立ち去るよう警告するのだが…。
 この遺跡で何が起こっているのであろうか…?
 森の神の怒りとは…?」

・「Vol.4 罪の島」
「北太平洋、ベーリング海。
 海洋調査船マラコットはカムチャッカ近海で暗礁に接触し座礁する。
 乗員は近くの島へ泳ぐが、生き残ったのは六人(艦長、ケリー、ロドニー、クランキー、イムナ、スー)だけ。
 彼らが島を調べると、ここはロシア領で、何かの収容所だったらしい。
 そこではソ連崩壊の頃に暴動があったらしく、あちこちに野ざらしの死体があり、建物は大きく破壊されていた。
 収容所の中には研究施設があり、海とつながった巨大な水槽がある。
 また、奥には大型海洋動物用の解剖台や生化学実験装置まで設置されている。
 この収容所で研究されていたものとは…?」

・「Vol.5 滅びし獣たちの海」
「1941年5月。
 ドイツ海軍が誇る五万トンの大戦艦、ビスマルクはノルウェイのベルゲン港からスカパ・フロー軍港を目指す。
 ビスマルクを援護するのは試作潜水艦のベーオウルフ。
 ベーオウルフはワルター・タービン搭載の秘密兵器で、艦長のナイトハルト大尉はこれを機に潜水艦の力を世に見せつけようとしていた。
 しかし、ベーオウルフはスカパ・フローの近くでイギリスの駆逐艦に付きまとわれ、身動きが取れなくなる。
 ナイトハルトは一か八かの命令を出し、駆逐艦を破壊するものの、ベーオウルフも大きな損害を受ける。
 航行不能になったベーオウルフは海流に乗って運ばれていくが…」

 星野之宣先生の作品なので、基本はSFですが、「アウトバースト」「罪の島」はかなりホラー寄りです。
 両作とも、ミステリアスな雰囲気が心地よく、「罪の島」はお得意(?)の「巨大モンスターもの」、「アウトバースト」は豪快な人体破壊描写が炸裂してます。
 「鯨鬼伝」「滅びし獣たちの海」はオチにやられちゃったな。

2025年1月1日 ページ作成・執筆

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