外薗昌也・原作/高港基資・作画「白異本」(2017年8月1日初版発行)
精神病院の一室で、ホラー作家の外園が医師に「怖い話」を語る。
彼は「怖い話」を求めて、日本全国どこにでも出かけ、膨大な数の「怖い話」を蒐集していた。
話を聞く度に、外園の身体には変化が現われ…。
・「その1 黒い数珠」
「ユウは自動車やバイクが好きで、自動車整備士になった娘さん。
彼女は同窓生のQに良い中古車を頼まれる。
このQはお金持ちのお嬢さんだが、メンヘラで、学校時代のあだ名は「人でなし子」であった。
Qは中古車を言い値で買い、ユウに前に乗っていた車を「潰す」よう依頼する。
この車は横に擦り傷があったものの、新車同様で、ユウはこの車を修理して売りに出す。
すぐに買い手はついたものの、数日後、車が戻ってくる。
ブレーキを見て欲しいと言われ、ユウがリフトアップした車の底を点検すると…」
・「その2 うらがえし」
「内装業者のKはビルの内装仕事で人出が足らず、中井という職人を助っ人に呼ぶ。
久しぶりにあった中井はひどくやつれていた。
Kには霊視能力があり、中井に自分の家を視てくれるよう頼まれる。
仕事の後、kは中井の運転する車の後をついて、郊外の新興住宅地へ向かう。
Kは一年前、結婚し家を建てるが、二か月後に奥さんが倒れ、彼自身も体調不良に悩まされていた。
陰気な風景が続き、目玉がびっしりと描かれた鳥居を抜けた後、おしゃれな住宅地に入る。
しかし、ここには人気が全くない。
中井の家の前で車を停め、Kが車から降りたその時…」
・「その3 ヒダリウデ」
「若いお巡りさんが管轄区域の住民調査のため、各戸を回る。
ある団地のD棟4階を訪れるが、そこは一軒だけで、住人は別木宏美(41歳)、中年女性の一人暮らし。
そこはドアから異様で、幼稚な字で書かれた、宅配便業者に向けた貼り紙が貼ってあり、ドアの至る所に引っかき傷がついていた。
チャイムを押して呼びかけるも、「ゴ苦労様デス〜」と返事があるだけで、さっぱり要領を得ない。
時間の無駄と帰ろうとした時、ドアが開く音がする。
見ると、ドアの隙間から片腕が出て、ドアの表面を引っ掻いている。
その手は貼り紙を剥がそうとしているようなのだが…」
・「その4 伝言」
「小学四年生のリョージは体育委員の用事で帰りが遅くなる。
校門までの近道を通っていると、彼の先に一人の少年の後姿が見える。
曲がり角を曲がったところで少年の姿は消え、リョージが訝っていると、木造のトイレ小屋の方からガラスの割れる音がする。
トイレの中では先程の少年が倒れており、リョージが声をかけると、「もう…いい…よぉ」と言うが、その言葉の後、口をパクパクさせて、再び「もういいよぉ」と繰り返す。
すると、突然、少年の身体が浮き上がり、リョージは彼の両足を抱きしめて止めようとするも、少年の身体は上に引っ張られ、頭部がちぎれてしまう。
翌日、リョージがこの幽霊体験をクラスメートに話しまくっていると、担任から校長室に呼ばれる。
怒られるとおっかなびっくりしつつ、彼が校長室を訪れると…」
・「その5 不浄」
「夜間病院に一人の男がやって来る。
彼は背中一面に大火傷を負い、しかも、左手の甲に鋏が突き刺さっていた。
医者は大急ぎで治療するも、男は身体のいろんな所に傷痕があり、日常的に虐待を受けているようであった。
更に、男の身体からは「ドブ水みたいな臭い」がして、臭くてたまらない。
治療後、帰ろうとする男を医者は引き止め、彼から話を聞く。
男は製薬会社で外回りの営業をしており、契約会社を回って検体を回収し、自社の研究ラボへ運ぶのが仕事であった。
数年前、配置換えで、担当する病院が変わるが、仕事内容は同じなのに、給料は倍以上になる。
彼は結婚し、二十代で家を建て、二人の娘に恵まれるが…」
・「その6 スナッフビデオ・前編」
「高校生の康隆には恭一という友人がいた。
恭一の家は大金持ちであったが、二人はホラー映画好きという共通点があり、それで仲良くなる。
だが、恭一には一つだけ康隆がついていけない趣味があった。
それは「スナッフビデオ」で、こんなものを高い金を出して買い集める神経がどうしても理解できない。
ある日、恭一の祖父が飼っている大型犬が行方不明になる。
その犬は近くの雑木林で惨殺体となって発見されるが、康隆は恭一の仕業ではないかと疑いを持つ。
それから一か月後の夜、康隆に恭一から電話がかかる。
恭一は「正真正銘本物の―しかも鮮明なスナッフビデオ」を手に入れたので、康隆に観に来るよう誘うのだが…」
・「その7 スナッフビデオ・後編」
「恭一の家は火事になり、彼は惨死する。
葬式は身内だけで行われ、康隆は参列しなかったが、一年後、一周忌の法要に招かれる。
法要の後、康隆は父親から恭一に起こったことを聞かされる。
彼の身に起こったこととは…?」
高港基資先生&外薗昌也先生のタッグも三作目(のはず…)を迎えて、ますます快調!!(怪調?)
どの作品も素晴らしいですが、個人的には、禍々しさ満点の「黒い数珠」「うらがえし」、そして、もの悲しい「伝言」に心惹かれます。
あと、「スナッフビデオ・前編」に出てくるビデオの背表紙が懐かしいなあ…。(ティーンエージャーだった頃、ビデオ・レンタル店でずらりと並んだホラービデオの背表紙を眺めながら、どれを借りるか、それはそれは真剣に考えたものです。当時のビデオレンタル店の匂いまで覚えてます。)
2024年1月31日・2月1日 ページ作成・執筆