外薗昌也・原作/高港基資・作画「白異本 参」(2020年5月20日初版発行)

 あるパソコン店に持ち込まれたノートパソコン。
 これは変死したホラー作家、外園の持ち物であった。
 外園の集めた怪談話を読んだ編集者も発狂し失踪したこともあり、遺族が、中のデータを全て消去して、完全に廃棄するよう依頼してくる。
 社員の山内裕介は処分する前にパソコン内の取材データを読んでみるのだが…。

・「その15 ラブホの怪」
「県内の『いわくつきの物件』の依頼がよく来る改装会社。
 ある日、そこの責任者はラブホテルの経営者に頼まれ、改装工事の下見に来る。
 このラブホテルは外観は五階なのに、中は四階しか使っていなかった。
 ここはもとは精神病院で、火事で焼けた後に、ラブホテルに改装される。
 ただし、二階が問題で、ここは重度の精神病者を収容していた隔離エリアで、救助が遅れたため、患者が11人亡くなっていた。
 改装会社の社長と経営者は奥まで見て回り、さて戻ろうとした時…」

・「その16 クロイカゲ」
「住宅設備の会社で働く男性。
 彼は喫煙者であったが、妻が煙草を嫌うため、マンションのベランダでいつもタバコを吸っていた。
 ある夜、深夜の三時に目が覚めてしまい、彼は一服するためにベランダに出る。
 何となく夜の町を眺めていると、屋根に人影らしきものがある。
 泥棒か変質者かと思い、よくよく見ると、その人影は三メートル以上あり、どうやら人間でない。
 しかも、そいつらは一匹だけでなく、何匹もいた。
 ベランダにタバコを置いて見ていると、何者かが煙草を奪い取る。
 この黒い人影の正体は…?」

・「その17 鉄の歯」
「ある夫婦が奥秩父に小旅行する。
 旅館の予約をしなくても大丈夫と思っていたら、実はシーズン中で旅館はどこもいっぱい。
 観光案内所で唯一手配してくれたのは、観光地から離れた山の中にある寂れた民宿であった。
 愛想のない女主人に時代錯誤なセンス、景観も食事も大したことなく、しかも、夫婦の他に泊まっている人はいない。
 ともあれ、部屋で一息ついた時、夫は部屋に妙なものを見つける。
 それは古い木の棒で、両端に「鉄の歯」のようなものがはめてあった。
 旅館探しの疲れもあり、入浴後、夫婦は早々に床に就く。
 その夜、妻は足が冷たくて目を覚ます。
 彼女は金縛りにかかっていて、視界の外に何者かの気配を感じる。
 それは髷を結った、全裸の男で、彼は彼女の左足を口に含むと、どんどん飲み込んでいき…」

・「その18 隠れ鬼」
「20年前の東京H市。
 子供たちはある廃寺の境内を遊び場にしていた。
 彼らがよく遊んでいたのは「隠れ鬼」で、ルールは「かくれんぼ」と一緒だが、見つかっても鬼にタッチされなければOKであった。
 ある日、彼らが遊ぶのを見知らぬ姉弟が見つめていた。
 彼らは姉弟を仲間に入れる代わりに、姉弟が最初の鬼になる。
 しかし、彼らはあっさり見つかってしまい、今度は姉弟が隠れる番になるのだが…」

・「その19 仰向け女」
「Sという娘は幼い頃より幾度かバラの柄のワンピースを着た少女を目にする。
 その少女は見る度に、彼女と同じ年頃の大きさになっていた。
 高校二年のある日、彼女は学校からの帰りが遅くなる。
 歩道橋の階段を降りている時、ふと道路の向こうを見ると、路地から仰向けになった女性がふわふわと浮いて、歩道橋の階段を登っていく。
 振り返ると、その女は彼女の背後にまで来ていた。
 彼女は慌ててその場から逃げ出すのだが…」

・「その20 赤い車」
「ある青年とタクヤはSNSで知り合った心霊マニア同士。
 ある夜、タクヤの案内で、二人はある峠を訪れる。
 ここには『赤い車の話』という怪談があった。
 これは飲料自販機のあるカーブでドライバーが休憩していると、崖の前にきれいに揃えた女性用の靴がある。
 慌てて崖下を覗き込むと、赤い車が転落しており、女性が下敷きになって、助けを求めている。
 だが、ガードレールはどこも壊れておらず、靴がここにあるのも変だ。
 人間ではないと気づき、逃げようとすると、全身の骨が折れて、ぐにゃぐにゃになった女が目の前にいて、「助けてくれないの」と言う話であった。
 その休憩所に寄った後、二人は目的地に向かうが、途中、何度も赤い車とすれ違い…」

・「その21 おいらん堂」
「(「赤い車」の続き)
 二人の目的地は「おいらん堂」であった。
 タクヤによると、ここは「本当の日本最悪心霊スポット」で、「おいらん淵」で殺された遊女たちの死体が流れ着いた場所に慰霊のために建てられたものであった。
 二人がおいらん堂の前にいると、周囲から足音が聞こえてくる。
 そして、彼らの目の前に…」

 今回もなかなか快調で、予想もつかない怪異譚を繰り出してきます。
 個人的に面白かったのは、「ラブホの怪」。
 地縛霊のいる物件を改装する手段がなかなか強引で、感心しました。
 また、「隠れ鬼」はしみじみと不気味、かつ、もの悲しく、名編だと思います。
 んで、一番怖いのは、作画の高港先生のあとがき。
 「京アニ放火殺人事件」のことがありますので、冗談抜きでリアルです。(wikipediaによると、高港先生は京都在住とのことで、ヤバさ二倍、二倍〜。)

2024年2月12・14日 ページ作成・執筆

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