本田真吾
「終園地・上」(2021年7月10日初版発行)
「終園地・下」(2021年7月10日初版発行)

・「第1話 HAPPY LAND」
「小宮一家は平凡だが、幸せな一家。
 小宮健二(39歳)〜平凡なサラリーマン。40歳を前にマイホームを購入。
 小宮美沙(39歳)〜その妻。パートで働く。
 小宮律(16歳)〜長男。賢く、名門校でも上位の成績。
 小宮凛(13歳)〜その妹。今時の女の子。
 休日、彼らは旅行に出かける。
 健二は行き先については秘密にして、「見たこともない景色」を見せてやると意気込む。
 ところが、一家を乗せた車は山の中で迷ってしまう。
 途方に暮れていると、向こうに遊園地が見えてくる。
 遊園地の名は「HAPPY LAND」。
 廃墟かと思いきや、人が大勢いて、今日は一日、ここで過ごすことに決める。
 入園は無料らしいが、乗り物代をどこで買うのかわからない。
 すると、ウサギの仮面をつけた男がアトラクションは全て無料と教えてくれる。
 ウサギ面の男はこの遊園地の支配人、「Mr.バニー」。
 彼は、この遊園地の目的は「『嘘偽りのない』幸せ」を手にする事だと話すのだが…」

・「第2話 真実の叫び」
 遊園地に閉じ込められた人々。
 そして、凛は、首を切断するジェットコースターに強制的に乗らされる。
 Mr.バニーは『ありのまま』で心ゆくまで楽しむよう告げる。
 健二はその言葉からヒントを見出し、凛に指示を出すのだが…」

・「第3話 秘密」
 ジェットコースターの乗客に迫る、巨大な丸ノコ。
 身体はバーで固定されて、このままでは、首を飛ばされてしまう。
 助かりたければ『ありのまま』の自分をさらけだし、『真実の叫び』を上げるしかないというのだが…」

・「第4話 凛」
 次のアトラクションは「コーヒーカップ」。
 だが、小宮家は律が乗るかどうかで母娘が言い争いとなり、健二が止めようとしても功を奏さない。
 だが、これ以降のアトラクションはより難易度が上がるという。
 律は意を決して挑戦する…」

・「第5話 律」
 スピードを増していくコーヒーカップ。
 ハンドル部分には酸がたたえられ、ハンドル操作で揺れを軽減しないと、酸を身体中に浴びることとなる。
 助かるにはジェットコースターと同じく、『真実の叫び』を上げるしかない。
 だが、律はそれを選ばず、的確なハンドル操作で耐える。
 残りあと30秒…。

・「第6話 食事」
 次々と明らかになる家族の「真実」。
 健二は自分が如何に子供達を理解していなかったのか思い知らされる。
 次のアトラクションに移る前に、休憩として料理が供される。
 料理は豪華で、特に、肉料理は抜群の美味しさなのだが…」

・「第7話 偽りの家族」
 Mr.バニーによると、ここに皆が集まったのは「必然」らしい。
 この言葉により、美沙は夫に対する鬱憤を噴出させる。
 だが、次のアトラクションに参加するのは美沙であった。
 アトラクションはゴーカートによるレース。
 三位以内に入らないと…」

・「第8話 ごめんなさい」
 自動車免許を持っていない美沙。
 それでも、どうにかこうにか上位を爆走する。
 しかし、彼女に目を付けたドキュン男が様々な武器を装備したカートで追ってくる。
 美沙は男を振り切ることができるのか…?」

・「第9話 遺伝子」
 美沙の背後から迫り来る殺人カート。
 彼女の脳裏を過去の思い出がよぎる。
 彼女の告白とは…」

・「第10話 柊」
 小宮一家の前に現れた藤ヶ谷柊。
 彼は健二の子供の頃からの友人で、大学時代には美沙とも付き合いがあった。
 彼のそばには婚約者の影山京子がおり、国会議員である彼女の父親の推薦で柊は今度、衆院選に立候補する予定だという。
 柊と京子もまた記憶が失われ、自分達が何故ここにいるのか全くわからない。
 柊は健二たちにここから脱出しようと提案する。
 この遊園地には高い塀が張り巡らされていて、正面以外からは脱出は無理そうに思えたが、裏口があった。
 柊夫婦と小宮一家はここに入り、外への出口を探すのだが…」

・「第11話 本当の父親」
 外への出口を探すうちに、気が付くと、健二と柊だけになっていた。
 しかも、ここは病院で、看護婦や医師のゾンビが襲いかかる。
 彼らが迷い込んだのは、お化け屋敷「戦々病棟」であった。
 ルールは「60分間生き抜く」こと。
 健二は柊に京子を助けたいと頼まれ、二人は協力することとなる…」

・「第12話 知ってたよ」
 ゾンビ達に堂々と立ち向かう柊。
 健二や彼の家族は柊に「本当の父親」の姿を見出す。
 だが、柊の背後から、看護婦ゾンビに群れが…」

・「第13話 親友」
 健二と柊はお互いに自分の秘密を明かし合う。
 残り時間はあと10分。
 Mr.バニーは「総回診」の始まりを告げる。
 すると、廊下を埋め尽くすゾンビの大群が現れる。
 二人は全力疾走で逃げるが、目の前の壁を突き破り、巨大な医師ゾンビが現れる…」

・「第14話 最愛の人」
 柊は健二に心のうちの全てを暴露する。
 その後、彼は京子と再会するのだが…。
 そして、彼は記憶を取り戻す…」

・「第15話 俺のせい」
 生き残った僅かな人々。
 ファイナル・アトラクションは観覧車で、一つのゴンドラに一家族ずつ。
 ルールは「家族の中で一番いらない人間」を話し合いで決め、全員が納得した上でその人物が死ぬことであった。
 そして、その早さを競わねばならない。
 生き残れるのは一家族のみ…」

・「最終話 終園地」
 次々と落下していくゴンドラ。
 家族を救うため、健二は最後の「真実」を明かす。
 小宮家は「本当の幸せ」を掴むことができるのであろうか…?」

 才人、本田真吾先生による「ジェットコースター・ホラー」の逸品です。(上巻に1〜8話、下巻に9話〜最終話)
 遊園地に閉じ込められた人々が命を賭けてアトラクションに挑むという内容で、基本の柱は「サバイバル・ホラー」ですが、それだけでなく、「家族の再生ドラマ」をもう一本の柱にして、お互いを巧みに絡め合わせて、ラストまで一気に読ませます。
 ラストはフツーに感動しちゃいました。
 でも、冷静に考えたら、主人公、かなり「踏んだり蹴ったり」なのですが…。
 ともあれ、出来に関しては「素晴らしい」の一言ですので、怪奇マンガ好きは読んで損は決してしないと断言いたします。

2023年3月24・26・29日 ページ作成・執筆

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