保松侘助「ソコナシイチズ」(2022年4月10日初版発行)

・「第一話」
「八坂勇(31歳)は最近、リモート勤務が増えたサラリーマン。
 それを利用し、彼は趣味の「妻を軽くストーキングすること」に励む。
 妻の真奈とは結婚三年目。
 二人は中学校の時、彼女から告白されてからの付き合いで、お互いに愛し合っていると彼は信じていた。
 しかし、ストーキングしているうちに、妻が浮気しているという疑惑が芽生え、伏見という探偵に調査を頼むと見事「真っ黒」。
 相手は妻の勤務先病院の副医院長、木村光司で、派手な生活をしているらしい。
 いつも利用しているカフェで彼が妻の浮気に彼が混乱していると、花園雛子が声をかけてくる。
 彼女とは以前、彼女がコーヒーを彼のパソコンに零したことで知り合っていた。
 彼女は彼の話を聞くと話し、彼を彼女の家に招く。
 彼女の家はもともとは祖父のもので、立派な造りであった。
 彼は彼女を抱こうとするが、やはり妻を裏切ることができない。
 その姿を見て、雛子は大感激をする。
 勇は「彼女の初恋の人にそっくり」で、しかも、愛を貫くところがとても「かっこいい」。
 勇はあきれて帰ろうとするが、彼女から彼にビッグ・サプライズがあった…」

・「第二話」
「雛子からのビッグ・サプライズは木村光司の死体。
 彼を殺したのは雛子であった。
 彼女は勇の嫉妬を巧みに煽り、死体処理の手伝いを承諾させる。
 二人は死体を埋めに山へと向かうのだが…。
 一方、真奈は勇から会社に泊まるという連絡を受けていたが、そこに浮気の匂いを嗅ぎつけていた…」

・「第三話」
「朝、勇は雛子と別れる。
 その際、今までもこれからもお互い何の関係はないと彼は宣言する。
 その後、マンションに帰るが、玄関には真奈が彼を待ち受けていた。
 彼女は彼の浮気を責め、彼はそれを否定するものの、まさか本当のことを言うわけにもいかない。
 切羽詰まった彼は真奈に彼女の浮気の証拠を叩きつけるのだが…」

・「第四話」
「勇はお守りである妻のパンツをなくしたことに気付く。
 もしかすると、死体を埋めた山に落としたのかもしれず、彼は雛子に連絡を取る。
 夜、二人は再会し、彼女の別荘に車で向かう。
 その車を探偵の伏見は尾行する。
 彼は独自に木村光司を調べているようなのだが…」

・「第5話」
「パンツ捜しは朝方にするとして、その夜は雛子の祖父の別荘に泊まる。
 勇は雛子に愚痴を言っている間に、何かいい雰囲気になるのだが…。
 そして、雛子は勇に彼が本当に愛しているものは何か指摘する。
 それを永遠のものにする方法とは…?」

・「第6話」
「朝、勇が別荘で目覚めると、雛子の姿はなかった。
 彼女は昼前頃、着物姿にサングラスの姿で戻ってくる。
 車の助手席には薬で眠らされた真奈の姿があり…。
 一方、探偵の伏見は今は亡き大物政治家、山下太平の邸宅を訪れる。
 これは雛子の車のナンバーから割り出したのであった。
 伏見が中に入ってみると…」

・「第7話」
「雛子の甘言に惑わされながらも、勇は自分を取り戻し、「大人の愛」を雛子に突き付ける。
 彼女は相変わらず感激しまくり、別れる際に別荘に放火する。
 最後に彼女は意味深なことを言うのだが…」

・「第8話」
「全ては終わった。
 あまりに異常な事件で、謎は多く残されたまま。
 真奈は一時は勇と別れようとするものの、彼のもとに帰ってくる。
 そんな彼女に彼は…」

 「週刊漫画ゴラク」に2021年11月〜12月に掲載された異色作です。
 現代的なテーマだからでしょうか、「異常愛」をテーマにした作品は数多くあります。
 「ソコナシイチズ」もそんな作品の一つですが、この作品ではブラック・ユーモアを前面に打ち出して、独特な雰囲気を醸し出しております。
 精神安定のために妻のパンツを吸う主人公、天然そうに見えてクールで腹黒いヒロイン、この二人が出会ったことで奇妙な死体遺棄事件に発展していくストーリーはバカバカしくも、綱渡りのような危うさに満ちております。
 絵は癖はあるものの、決して下手ではなく、手作業感に溢れ、個性的な内容に合っているのではないでしょうか?
 個人的には隠れた佳作だと思っております。

2024年7月22日/8月2日 ページ作成・執筆

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