美内すずえ「美内すずえ傑作選F 魔女メディア」(1997年6月18日初版発行)

 収録作品

「魔女メディア」

・「人形の墓」(「週刊マーガレット」1973年37号掲載)
「孤児院で育ったアナベルはローズ・リー夫人の屋敷に送られる。
 アナベルは母親ができると思ったのも束の間、ローズ・リー夫人はセーラという名の人形を本物の子供のように接していた。
 十二年前、ローズ・リー夫人は夫を亡くし、その後、一人娘のセーラが小児マヒとなり、両足が不自由となる。
 それでも、甲斐甲斐しく世話をしていたが、セーラも三年前に亡くなり、セーラの遺言により、彼女の大切にした人形をセーラの代わりとして可愛がっていたのであった。
 ローズ・リー夫人の不幸な過去を知ったアナベルは、積極的に明るく振る舞い、夫人の凍り付いた心を徐々に溶かしていく。
 だが、アナベルの身辺でおかしなことが次々と起こるようになる。
 その陰には常にセーラの人形の姿があった…」

・「ビクトリアの遺書」
「ある家族(夫のトマス、妻のデボラ、長女のバーブラ、弟のアーサー、飛行機事故で両親を亡くしたいとこのナナ)が邸に引っ越してくる。
 その邸はビクトリア・デ・プランタジネット伯爵夫人の住居で、一家は彼女の遠縁にあたっていた。
 ビクトリアは250年前にいた女性で、16歳で結婚、20歳で夫と死別、その後、王を毒殺しようとした罪で27歳で火刑に処せられる。
 遺言により、彼女の部屋は生前通りのままに残され、ビクトリアの乳母クロリンダの子孫が代々管理してきた。
 ナナは居候の身ゆえ、屋根裏部屋をあてがわれるが、この屋敷で度々既視感に襲われる。
 ある夜 ナナはアーサーの化学実験を手伝わされ、事故を起こして火事になる。
 そのショックが引き金となり、ナナの中のビクトリアの記憶が甦る。
 ナナはビクトリアの生まれ変わりであった。
 バーブラの友人、オスカー・ヤングは彼女に興味を示し、現代の物事についていろいろと教える。
 二人がウィンダム城博物館を訪れた際、ナナは、ビクトリアが悪女扱いされていることに激怒。
 彼女はビクトリアは王を愛していて、冤罪を着せられたと主張する。
 オスカーは彼女の無実を証明しようとするだが…」

・石子順・解説「美内さんは理論家です」

 この中で最も興味深かったのは「ビクトリアの遺書」でした。
 「魔女メディア」と似たような設定で共に「リインカーナーション」を扱っておりますが、「ビクトリアの遺書」の方がストーリーのまとまりが良く、出来は上だと思います。
 隠れた名編ではないでしょうか?
 あと、「人形の墓」は「人形もの」の傑作ですので、ホラー好き必読です。

2023年8月9日 ページ作成・執筆

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