高階良子「魔境の浮舟」(1996年1月10日初版発行)
収録作品
・「密林の彼方 永久の谷」
「ルカは極度に日光過敏症の娘。
彼女は、自称冒険家の叔父、浩からもらった宝石の中に、不思議な光景を見る。
それは、とても懐かしい場所で、中に映った青年の「セラ・ルー」という名までも思い出す。
この宝石をきっかけに、彼女は、浩と共に、アマゾンの奥地への探検に参加する。
探検の目的は、「白い谷」で、アマゾン上流の密林の奥に、高度で特殊な文明を持った、白い肌の部族の集落だという。
主要なメンバーは、浩、ルカ、案内役のウーバ、そして、スポンサーの娘である奥田麻紀。
だが、彼らの目的が「白い谷」であることを知り、船のクルー達は四人を置き去りにして逃げてしまう。
ウーバによると、聖地である「白い谷」から、生きて帰った者は一人もいないらしい。
仕方なく、四人は徒歩やボートを使い「白い谷」に向かうと、徐々に深い霧に立ち込め、静寂に包まれる。
聖地に近づくにつれ、ルカは身も心も安らぎ、不思議な力がみなぎっていき、遂に、セラ・ルーとの再会を果たすのだが…。
「白い谷」の、そして、ルカの出生の秘密とは…?」
・「魔境の浮舟」
「エレナ・ボリバールはボリバール家の最後の一人。
彼女は、間違い電話で知り合った、マリオという青年と結婚しようと、邸を逃げ出す。
しかし、教会に向かう途中、謎の男達に襲われ、テーブルマウンテン(ベネズエラ)の頂上に置き去りにされてしまう。
普通なら人間が生き延びれる環境ではないのだが、彼女は、レオン・ウールビアという青年に命を救われる。
彼は、自作のグライダーで、この山の頂上を目指すものの、グライダーが壊れ、ここに取り残されてしまったのであった。
テーブルマウンテンの頂上では、動植物は独自の進化を遂げ、衣類も食物も不自由することはない。
ただし、脱出だけは絶対に不可能と、レオンは断言し、エレナがここに来たことを運命と考える。
だが、エレナは婚約者のマリオを忘れられない。
エレナはここから脱出することはできるのであろうか…?」
・「真夜中にベルが鳴る」
「東五条美雪は、零落した華族の最後の血筋。
彼女は、若くしてミヤジマグループの会長職についた宮島憲一に結婚せざるを得なくなる。
と言っても、愛があるわけでなく、単に、家柄に箔をつけたいだけの理由であった。
美雪は、宮島健一を蛇蝎の如く、忌み嫌うが、一方で、彼の腹違い(妾腹)の弟、亜樹と運命的な出会いをする。
恋は一目で燃え上がり、亜樹が夜に彼女に電話をかけては、二人で逢引をする。
遂に結ばれた夜、二人は駆け落ちをしようとするのだが、憲一に捕まり、二人の仲は引き裂かれる。
数日後、亜樹の自殺が新聞で報じられる。
彼女は亜樹の仇をとるため、憲一に多量の睡眠薬を飲ませ、交通事故を起こさせるのだが…」
「魔境の浮舟」は、ベネズエラのテーブル・マウンテンの頂上を舞台にしたファンタジーで、なかなかの異色作だと思います。
「真夜中にベルが鳴る」は、ホラーっぽいタイトルとは裏腹に、「ハーレクイン」のようなノリです。
いい塩梅にドロドロしていて、ラストを心霊ホラーでまとめるあたりが、高階良子先生らしいですね。
2020年2月7日 ページ作成・執筆