団しんじ「モルグ街の殺人」(1969年12月20日第1刷発行)
エドガー・アラン・ポーの名作、「モルグ街の殺人」と「盗まれた手紙」を漫画化したものです。
両作品とも、名探偵オーギュスト・デュパンが主人公で、本格的なミステリーの先駆となった、非常に重要な作品です。
ただ、このコミカライズは、原作の魅力を再現しているとは、残念ながら、言えません。
作者によって、若干のアレンジが施されているのですが(例、主人公がデュパンの友人でなく、弟子になっている)、デュパンが「数学的分析法」と言っている時点で何かが違います。(注1)
更に、「モルグ街の殺人」では冒頭で限りなくネタばれに近い描写があったり、また、「盗まれた手紙」では、デュパンが手紙を盗んだ相手を襲って、身体検査をするという「原作レイプ」をやっております。
正直なところ、ポーの作品は作者の手には余ったように思いました。
多少、眠くはあっても、原作を読んだ方が遥かに有意義です。(注2)
ちなみに、表紙に描かれた老人は、アーノルド・ニューマン(アメリカの写真家/1918〜2006)の「アルフレッド・クルップ像」の模写であります。
・注1
「盗まれた手紙」では「たんなる数学者なら、推論なんかできっこない…」(深町眞理子・訳)と述べられております。
・注2
この文章を書くに際して、「モルグ街の殺人」と「盗まれた手紙」を読み返しました。
名作ではあるんでしょうが、小難しいことを、うじゃうじゃうじゃうじゃ書き連ねるのは勘弁して欲しかったです。
「盗まれた手紙」に出て来る「媒辞不拡充」って、一体何なの…?
・備考
貸本上がりで、ビニールカバー貼り付け。読み癖がひどく、シミや汚れ多し。pp7・8の上部に裂け。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2020年4月26日 ページ作成・執筆