つづき佳子「ドリアン・グレイの肖像」(1970年6月30日第1刷発行)

 オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」は「絵画怪談」の傑作として知られておりますが、つづき佳子先生のコミカライズは原作をほぼ忠実になぞっております。(注1)
 恐らく、読みやすくはなかったであろう原作にちゃんとあたってからコミカライズに取り組んでおりますので、なかなかの気合の入りようです。
 文芸作品のコミカライズ作品としては良質な部類ではないでしょうか?

 ちなみに、コミカライズを読む前に、私も原作に挑戦してみました。(怪奇・幻想文学にとって基本中の基本の作品なのに、今までほったらかしで、忸怩たる思いです。)
 やけに文庫が分厚いな〜と思っていたら、本編とは関係ないところで主人公の親友のヘンリー・ウォットン卿(モデルは作者自身?)による機知と皮肉の効いた警句(アフォリズム)が溢れかえっていて、拍子抜け。
 序文で「本にはよく書けているか、よく書けていないかのどちらしかない」という有名な文章がありますが、今読んだら、この作品を冗漫に感じる人が多いのではないでしょうか?
 また、オスカー・ワイルドらしく「美」にこだわりまくった第11章は非常にしんどい…。(ここで挫折した人も多いかも。)
 でも、主人公が若さを保つ代わりに、絵が年老い、汚辱にまみれていく…というストーリーはいまだ魅惑的ですし、日高真帆氏が解説で触れているように、スティーブンソン「ジキル博士とハイド氏」からの影響も興味深いです。
 「ジキル博士とハイド氏」は当時のベストセラーなので、オスカー・ワイルドは読んでいたはずですが、ポー「ウィリアム・ウィルソン」はどうなんでしょうか?
 アメリカ講演旅行の際にポーの作品にも触れていたんですかね?
 あと、オスカー・ワイルドは同性愛者だったことでも有名で、「ドリアン・グレイの肖像」にもその傾向が反映されているとのことです。
 「やおい」の好きな人たちがコミカライズしたら、どんな感じに仕上がるのか気になります。

・注1
 ただ一つ、ドリアン・グレイがヘンリー・ウォットン卿から贈られる本、ユイスマンス「さかしま」がコミカライズでは「犯罪専科」になっております。
 作中でははっきりと本の名前は出てこないので、つづき佳子先生はドリアンを悪に走らせた本としてわかりやすく「犯罪専科」にしたのかもしれません。
 ちなみに、つづき佳子先生は「ドリアン・グレイの肖像」の前にはウェブスター「足ながおじさん」、ツルゲーネフ「初恋」をコミカライズしております。
 前袖の写真を見ても、どこか文学少女の面影があり、初々しさが新鮮でした。

・備考
 経年の痛みや汚れがあるが、スリップ付き。

2026年2月28日 ページ作成・執筆

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